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スレンダーなのに色々でっかい地味で気弱な中田さんをクズ彼から救った俺は、全力で彼女を可愛くしてあげたい。  作者: ファッション捜査課のスカリー


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第25話 お昼休みのサプライズ

4限終わりのチャイムが昼休みを告げた——


視線の先では、まるでスポットライトでも浴びているかのように栞がキラキラと輝いている。


俺の席は教室の一番後ろ、出入口のすぐ隣。栞はその三つ前の席だ。

自然と目に入る距離ではあるのだが……今日は特に違和感がある。


栞の周囲にぽつぽつと男子が話しかけに行ったり、女子のグループがちょこちょこと様子を伺いに来たりと、明らかに彼女を取り巻く空気が変わっていた。


その一方で、俺のまわりはというと……相変わらずのボッチ状態。

最初はまわりの席の数人から髪型の変化に驚かれたが、それもすぐに終わった。


「…………はぁぁ……」


これは彼女にとっては良い変化なんだ。

もっと注目されて、もっと自信を持てるようになって……

それを望んだのは俺自信のはずなのに、どうしてこんなに心がモヤモヤするんだろう?


そんなことを考えながら昼飯もそっちのけで、見知らぬ男子と笑い合う栞をぼんやりと見つめていると、不意に栞がこちらに目線を向けてきて俺たちの視線が重なった。


……ん?


ふわりと優しく微笑んだ栞は目の前の男子に何かひと言だけ告げて席を立つと、そのまま迷いなく俺の方へと歩み寄ってきて、ためらいもなく俺に声を掛けてくる。


「ねぇ、薫くんっ……今日、お昼ご飯とかどうするの……?」

「ん?昼……まあ適当にさっき買った購買のパンとかで済ませるけど……?」


「そっ、そっか……あのさっ、よかったら私も薫くんと一緒にご飯食べてもいい?」

「ああ、全然いいけど……?」


まさかの栞からの誘いに完全に不意を突かれた俺は、思わずそっけない返事をしてしまった。


でも栞はそんな俺を気にすることなく、にっこりと微笑んだままグイッと顔を近づけてくると耳元で囁くように話し始めた。

その瞬間、ふわっと漂った甘い香りにおもわず心臓が跳ねあがる。


栞っ!?……ちっ!?近いって!?


「……なんか今日すごく色んな人に話しかけられてすごく疲れちゃったんだ……だから薫くんとまったりお喋りしたいなって思って……」


急激な変化に戸惑う気持ち、きっと本人が一番感じてるんだろう。

だからこそ俺は少しでも彼女が安心できるように気遣ってあげる必要がある。


「大丈夫か?俺もちょこちょこ見てたけど……変な事とか言われてないか?」

「うんっ大丈夫!みんな凄く優しいよっ……だけど、ちょっと露骨な感じが怖いって思ったりもするかな……」


「そうだよな……でも、それだけ栞の魅力が皆に伝わり始めたってことだし、悪いことばかりじゃないだろ?」

「うんっ……そうだねっ……」


明るく返事をしてニコッと笑った栞は、周囲をキョロっと見回したあと前の席の椅子をくるんと回して俺の真正面にちょこんと腰かけ、机の上に小さめのポーチをそっと置いた。


「じゃあ一緒にご飯食べよっ!…………それでさ、薫くん……これっ、食べてくれたりするかな?」

「ん……?これは……?」


栞は机に置かれたポーチからふんわり包まれた2つの小包を取り出して、その片方を少し恥ずかしそうに俺に向かってそっと差し出してくる。


「薫くんの分のお弁当……私が作ってきたんだけど……」

「えっ!?マジで!?いいのか!?」


まさかの愛妻弁当イベント!?いいの?こんなの付き合ってもいないただのボッチの俺が貰って!?


「うんっ!1人分も2人分も変わらないし、薫くんには色々してもらってるし……私もなにかお返ししたいなって思って……」


不意打ちのサプライズにテンションが一気に跳ね上がった俺は、思わず顔がほころぶのを感じながらその包みを丁寧に受け取る。


そんな俺たちのやりとりを羨ましそうに見つめる周囲の視線を感じたが、今はその視線すら嬉しさでかき消されてしまうほどだった。


「さんきゅ!栞の料理めちゃくちゃ美味しいからすげー嬉しいよ!」

「えへへっ♡そうかな?……じゃあこれからも私、頑張ってお弁当作ってくるから一緒にご飯食べてくれる?」


「それはいいけど……栞はそれでいいのか?せっかく色々友達とか出来そうなのに……ってかそんな毎日とか申し訳ないし……」


「いいの、いいのっ!気にしないでっ!私は雪村くんとお話したいんだもんっ……それに、お弁当もいつも食材が余っちゃって傷んだりするから、食べてくれると助かるしっ!」


「そっ、そうか?……それならいいんだけど……本当に無理はするなよ?」

「うんっ!ほらっ、早くご飯たべよっ!」


嬉しさと不安、そしてちょっとした優越感。

自分でもよくわからない感情が入り混じったまま、俺は栞に急かされるままに弁当の包みを解いていくと、姿を現したのは新品の黒い弁当箱だった。


そして、『いただきます』の合図と共に、俺たちはそっとその蓋を開けたのだった——



————



栞の料理はやっぱり最高だった——


見た目も味も完璧で、詰め方にまでセンスが光っている。あまりの美味しさに気づいたら空っぽ寸前だった。


栞って……本当にいいお嫁さんになりそうだよなぁ……


そんな、逆に虚しくなるような思考に浸っていたところで、突如、俺たちの間に元気すぎる声が飛び込んできた。


「うぇ〜い!ふたりともどしたん!?雰囲気めっちゃ変わったじゃん!とくに中田さんすっごく可愛くなったね!」

「片桐さんっ!?そっ……そうかな?」


相変わらず神出鬼没でテンション高めな俺の幼馴染み……

麗奈はそんな調子で栞をガン見しながら言葉を続けた。


「うんうん!スゴイ似合ってるよ!あーしの近くの席の男子とかも急に目の色変えて中田さん見ててちょいキモかったしww………で、薫は…………まあ、ふつーになったねwwふつーww」


「麗奈……お前なぁ……」


まあ、別に褒められるとは思ってなかったけど……


そんな俺の気持ちなんて微塵も気にしてなさそうな麗奈は、俺の机の上の弁当箱に目を留め不思議そうに俺に問いかけてきた。


「ってか薫が弁当とかめちゃ珍しくない?どしたん?意識高い系になったん?話しきこか?」


「ああっ……これは栞が作ってきてくれたんだよ。すげー美味しいんだぞ?いいだろ?」

「かっ、薫くんっ!?……褒めすぎだよっ……」


俺が得意げに麗奈へ語ると、栞は顔を真っ赤にして視線を落としてしまう。

だが次の瞬間、麗奈の顔色がみるみるうちに悪くなり、女の子とは思えない低くて驚きの声が飛び出した。


「え゛え゛っ…………!?」


「………麗奈!?……どした?」


「あっ……いやいやいや、何でもない……ちょっと……ちょっとびっくりしただけ……」


あまりにいつもと違う麗奈の様子に俺はつい心配になって声をかけるが、彼女は何かをごまかすように早口で喋り、視線をあちこちに彷徨わせながら苦笑いを浮かべていた。


「あはっ……あははっ……そっかぁ〜手作り弁当かぁ……薫、それはよかったねぇ……」


「麗奈?」


「あっ!そういえばあーしはちょっとお手洗いに行く用事があるんだったぁ……じゃ、これで……じゃね!中田さん!」


「あっ、うん……?」


お手洗いに行く用事……?着替えって事か?


明らかに挙動不審な麗奈に怪訝そうな顔を向けたが、彼女はそんな俺の視線などお構いなしにその場を走り去っていった。


「なんだったんだ……?麗奈のヤツ……」

「……どしたんだろうね?片桐さん……」


呆けたように栞を見つめながら俺は心の中に浮かんだ言葉をそのまま呟いた。

その瞬間、まるで空気を読んだかのようにスピーカーから物悲しい予鈴が鳴り響いた——




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