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スレンダーなのに色々でっかい地味で気弱な中田さんをクズ彼から救った俺は、全力で彼女を可愛くしてあげたい。  作者: ファッション捜査課のスカリー


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第23話 美女降臨!

「はいっ、これで完成!」


髪を切り始めてから約40分ほど経った頃、サロンに母さんの軽快な声が響いた——


栞からケープを外し首元に残った細かな髪を柔らかな筆で丁寧に払い落とすと、母さんはどこか満足げな表情を浮かべながらくるりとカット台を回転させ、俺の方へと栞を向けてきた。


「…………えっ………………!?」


眼前の光景に俺は言葉を失ってしまった。


確かに目の前にいるのは栞だ……けれど、それはまるで別人のようだった。


長かった黒髪はボブほどに切り揃えられ、艶やかに輝く髪は枝毛ひとつない。

片側を軽く編み込み耳にかけたそのスタイルは、神秘的でありながらもどこか清純な雰囲気を漂わせている。


そしてなにより、分厚かった前髪は程よく透けるように漉かれ、遠目からでも彼女の整った美しい顔立ちがはっきりとわかるようになっていた。


圧倒的な爆美女感に俺はただただ見惚れてしまっていた。


可愛い……いや、可愛すぎる。天使かよ……


開いた口を閉じる間もなく、ただ無言で彼女を見つめ続けている俺の意識を現実に引き戻したのはほかでもない母さんの声だった。


「どう薫?……栞ちゃん、アイドルみたいに可愛くなったでしょ?」

「…………ああ………めっっっちゃくちゃ可愛い………可愛すぎる………マジで……」


心の声のつもりだった。

けれど、それはそのまま喉を通って口から滑り出てしまっていた。

それほどまでに今の栞は眩しいほどに可愛かった。


そんな俺のうっかりした言葉を耳にした栞は、みるみるうちに顔を沸騰させていく。


「かかかっ薫くん!?ちょっと………そんなことじっと見つめながら言わないでよぉ……私、恥ずかしいよぉ………///」


「ごめん……でも、栞マジで可愛いんだよ……ちゃんと自分で鏡見たか?」


「ちょっ!?薫くん!?だからっ……そんなに褒めないで……私恥ずかしくて死んじゃうよぉ……」


互いに呆けていると、母さんがニヤニヤと笑いながらそっと間に割って入ってくる。

そして、その手に持った鏡を静かに栞の前へと差し出し、彼女の姿を映し出してみせた。


「栞ちゃん、自分でしっかり見てごらんなさい?薫は間違ってないわよ?」

「…………えっ!?これ……私ですか!?」


鏡越しに自分と目が合った瞬間、栞は小さく声を上げ、驚いたように何度も瞬きをしながら自分の姿を食い入るように見つめ始めた。


「他に誰がいるのよ?本当にあなたはすっごく可愛い女の子なの。メイクも殆どしていないのにこれなんて……凄いことなのよ?元モデルの私が言うんだから自信持ちなさい?」


「ええっ!?ゆかりさんって元モデルさんなんですかっ!?」


「まあ……少しは名の知れたモデルだったわ。でもあなたには、そんな私なんかよりもっと上を目指せる素質がある。だから胸を張ってミスコンに挑戦しなさい!文化祭当日、楽しみにしてるわね。薫と一緒に頑張って、もっと可愛くなったあなたが見れることを」


「…………………はいっ……私、薫君と一緒に精一杯頑張りますっ!」


どこか諭すような母さんの声色に、栞は真剣な眼差しでコクリと頷いた。

やはり、こういう会話は女性同士の方が響くものなのだろうか。

でも、栞が自分の変化に気付いたこと……それ自体が何より大切な一歩だ。


母さんも言っていたが、栞はもっと輝ける。

だから俺は彼女をその場所まで連れて行ってあげて、心から彼女に幸せになってほしいんだ。


そんな感傷的な空気が流れる中、母さんの視線がふと俺に向けられた。


「で………次は薫の番ね……」

「へっ……俺?」


「あなたもミスターコンに出るんでしょ?そんなプリンみたいな髪色にダサい髪型じゃ絶対ダメよぉ?……ね?栞ちゃん?」


「えっ!?えっと……その……はい……」


なぜか栞に同意を求めたかと思うと、いきなり矛先を俺に向けてきた母さんは不敵な笑みを浮かべていた。

急に押し寄せる焦り。母さんは一度こうなったら止まらない……


別に今の髪色や髪型に強いこだわりがあるわけじゃない。

でも、あまりにも突然の提案に心がついていけてなかった。


「ちょっと待って母さん!?……時間も時間だし、とりあえず栞を家まで送ってきてもいい?」


「………そうやって逃げても無駄よぉ?」


「えっと、大丈夫っ……ちゃんと戻ってくるから……」


「分かったわ……確かにもう夕方だものね?じゃあ、ちゃんと紳士的に栞ちゃんを送ってきなさいね?母さんゆっっっっくり待ってるから……ちょっと何かあって遅くなっても大丈夫よ?フフッ♡」


「あ………ああ………」


明らかに別の期待を含んだ視線を送ってくる母さんに、引き気味の声でそう返すと、俺は早々に栞に声を掛ける。


「じゃ……じゃあ栞……ちょっとドタバタしちゃったけど、家まで送って行くよ」

「うんっ、ありがとう薫くんっ!…………ゆかりさんっ、今日は本当にお世話になりましたっ!」


ぴょんとカット台から降りた栞は俺の母さんに深々と頭を下げると、上機嫌な様子で俺のもとへと歩み寄ってくる。


そんな彼女に『どういたしまして♡また遊びに来てね♡』と満面の笑みで返した母さんを横目に、俺たちはサロンの玄関をくぐった。


ふと背中に視線を感じ後ろを振り返ると、人差し指と中指の間に親指を挟みグッと拳を握ったポーズをした母さんが、ウインクしながら熱い視線を送ってきていた——



————



家を出てからほんの数分——


栞の住むマンションに到着するまで、俺はずっと彼女の横顔に見とれていた。

本当に可愛すぎて、どうしても視線が彼女の顔に吸い寄せられてしまう。


その視線に気づいていないのか、栞は相変わらず上機嫌でくるりと振り返ったかと思えば、今までで一番とも言えるほどの笑顔を俺に向けてくれた。


「薫くんっ、今日は本当にありがとね!なんか……私すごく変われた気がするよっ」

「そうか、それならよかった」


「それでさっ……もし薫くんがよければ……まだこの髪型に馴れてなくてひとりで外歩くの恥ずかしいから……月曜日から一緒に学校に登校してくれないかな?家も近いし……私が薫くんを迎えにいくから……」


「えっ!?一緒に当校!?」


なにそのリア充みたいなイベント!?しかも可愛くなった栞一緒に!?

俺は急な栞の提案に思わず変な声を上げてしまった。


「うん……ダメ?」


おねだりモード全開で迫ってくる栞。

一新された髪型と相まったその暴力的な可愛さの前に、俺は抗う術もなくあっさりと了承してしまう。


「いや……ダメじゃないけど……」


「じゃあ決まりっ!……私が朝お迎えにいくからそれまで待っててね!絶対だよっ!」


「あっ……ああ……」


「それじゃまたメッセージするからっ!じゃあねっ!……あっあと、薫くんの新しい髪型見るのも楽しみにしてるねっ!」


そう言い残して元気に駆け出していく栞の背中を俺は手を振りながら見送った。

彼女の姿が見えなくなると、全身の力が抜けそうになりその場にへたり込みそうになるも何とか堪えて身を翻す。


そして、なし崩し的に決まってしまった一緒に当校イベントへのどこか複雑な気持ちを抱えながら俺は家路についた——



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