表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この万年筆で、私の人生を取り戻す ―父が見捨てた工房から始まる領地再建記―  作者: しぃ太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/11

第1話 元領地管理官、ノア

 

 私の家は、特出したものもない、男爵家だ。

 小規模な鉄鉱山がある。


 そして、父はその鉱山を放置していた。


 だが、一度うちに出入りしている商人が話していたことがある。

『宝の持ち腐れだと』


 父は、平和なこの時代において、鉄を軽視していた。


 華やかな王都の貴族に合わせて見栄を張り、それに合わせて領地の収入源は減っていく。


 昔、祖父が言っていた言葉を思い出す。

 ――人に勝る財産はないと。


 ならば、私が手に入れてみせる。

 父が不要だと切り捨てた、その財産を活かし、この領地を豊かにしてみせる。


 他人の金を当てにするような状態ならば、先は既に見えているだろう。

 ただの没落だ。


 ◇◇◇


「今の男爵家を立て直したいの。鉄鉱山。これを活用した方法を思いつける?……ノア元領地管理官」


 私が問うと、彼はいきなり立ち上がり、上から見下ろしてきた。

 威圧感が凄い。

 足が無意識に下がろうとするのを叱咤して力を込める。


「今の私は、ただの無職の平民ですよ」


「それは父の愚かさの表れね。祖父に重用されていた、優秀なあなたに聞いているのよ」


 祖父の時代から働いていた人物で、信用出来る。

 しかし、実直で融通が利かない性格が、父とは壊滅的に合わなかったのだろう。


「……面白い問いですね。ですが、期待はしない方がいい。男爵は、鉄を流通させる気はないようですよ」


 彼を説得できなければ、

 私の決意は、まだ現実に届いていない。


「ええ。だから、父に気づかれないように。領地には、祖父の代からの優秀な職人がいるでしょう?」


「引退した者も多い。今は細々と日用品を作っているだけでしょう」


「会いたいの。女の私では、出来ないことも多い。……でも、それはあなたも一緒でしょう?ノア。優秀なのに、平民というだけで軽んじられる」


「現場を見るなら、五日は欲しい。――そして、あなたを見極める時間も」


「ええ。勿論。簡単にいくなんて思ってないわ。でも……やらなければ始まらない」


「現場は甘くありません。彼らは、誇りを裏切られたと思っている。それは、生き様を否定されたということです。

 ……それでも、行きますか」


「あなたも祖父の口癖を覚えているでしょう?『人に勝る財産はない』。まずは、職人たちと話し合わなければ」


「いいでしょう」


 そう答えた彼は、すでに私に背中を向けていた。

 数分の後、部屋の中から鞄を持ってきた。


「では、無価値だと判断するなら早いほうがいい。それこそ時間の無駄です」

「さすがね。じゃあ、行きましょうか」

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

もし物語を楽しんでいただけましたら、

評価やブックマークで応援していただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ