第21話 お薬を作りましょう
「もしかして私の――」
「あ、いや!僕も少しずつ使っていたから元々量も少なかったんだ!」
アルバの為に妹さんが用意してくれた薬を使わせてしまったと責任を感じ、落ち込む蕾に慌ててアルバは説明する。
「仕方ないから自室にでも帰ったら大人しく寝て治そうとしたんだけど……」
「ダメだよ!そんなことしたらもっと酷くなっちゃう」
軽くアルバを叱りつける蕾。
「アルバ君、包帯と薬棚って何処にあるの?」
「えっと、こっちにあるけど……」
アルバは痛む脇腹を押さえながらも、蕾を手の平に乗せ包帯と薬が並んでいる薬棚に案内する。
「回復薬は使ったことないけど……でも、怪我はしょっちゅうするから包帯の巻くのとかなら誰にも負けないよ!」
「いや、それそんなドヤ顔で言うことじゃないからね!?」
小さな体で引き出しを開け、一つ一つ漁っていくと包帯を見つけた。
「う~ん……!やっぱり、どれもこれも見たことない薬ばっかりだな~……」
棚の中にある瓶には乾燥された薬草や何かの動物のような(?)爪に干された皮膚が詰められており、ラベルには蕾が見たことのない文字で書かれた。
打ち身に効きそうな塗薬はないかと薬棚の引き出しを一人で物色していると、棚に並んでいる瓶が淡い光を放つ。
『お嬢ちゃん、打ち身に効く薬なら私とそことその薬草を混ぜて使うといいわよ』
「えっ……?」
薬棚に並び、不思議な光を放つ小瓶たちの一つがそう蕾に語りかける。
『私たちの声が“貴女”には聞こえるんでしょ?』
「え、あっ、はい……」
『なら素直に耳を傾けなさい。そうすれば自ずと真実は貴女の前に訪れるわ――……』
「真実……?」
蕾は自分の背より高くある小瓶に顔を上げて話しかけるが、それ以上光る小瓶が蕾に話しかけてくれることはなかった。
「誰と話してるの?ツボミちゃん」
「!」
いつの間にか光は見えなくなり、あの不思議と暖かな気持ちになれる気配たちは消えていた。
「大丈夫?なんか一人でブツブツ呟いてたけど……」
「う、ううん!な、なんでもない……!」
『耳を傾ける、か……』
蕾は声の言う通りに瞳を閉じ、そっと胸に手を当て耳を澄ませる。
意識を薬棚の方に集中させると、またあの小さい声たちが聞こえる。微かな音なので話している会話の内容までは流石に聞き取れなかったが、小瓶たちは愉しげに会話をしていた。
ゆっくり蕾は黒い目を開くと、またあの不思議な光が見えた。
「アルバ君!あれ!!」
「えっ?」
蕾は上にある茶色の瓶を指差す。
今度は聞こえた声のアドバイス通り、素直に蕾は自分の直感を信じてみることにした。
「あの、左から四番目の小瓶、取ってくれない?」
「これのこと?」
「そう、それ!」
アルバが瓶を取ると、大きく首を縦に振り首肯く蕾。
「後は右の3番目にある黄緑っぽい小瓶に……!そのすぐ横上にある水色の小瓶もお願い!」
自分の背丈じゃ届かないので、変わりにアルバにお願いして次々と指定した瓶を取ってもらう。
瑞龍の爪、幻想草、花椿の朝露――……。
知らない材料のはずなのに、蕾の頭の中は不思議と材料の名前が思い浮かぶ。
どんどんと泉のように色んな知識が溢れ出し、情報が駆け巡る。
蕾は小瓶の中にある材料をかき集めると、陶器の小鉢に順々と放り込み、擦る……。
「出来た!」
小鉢の中には深緑のような色をした、よく細かく薬草を擂り潰したかのような塗薬が出来上がっていた。
匂いの方は決していい匂いとは言いがたいが、効き目は有りそうだった。
「アルバ君、薬塗るから服捲って!」
「あ、うーん……」
『なんか調合書も見ず、勝手にそこら辺の薬草混ぜて作ってたけど大丈夫かなー?』
恐る恐るアルバは上着を胸ぐらいまでの辺りまで捲り上げる。
たっぷりと右手に深緑の薬をつけた蕾は、アルバの心配と不安も知らずに痣にたっぷりと薬を塗っていく。それが終わったら今度は、慣れた手つきで包帯をズレないようしっかりと慎重に巻いていった。




