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第19話 気付いた時には

「はぁー……今日も訓練、相変わらず厳しいかったな~……。おかげで体のあちこちバキバキだよ」


 今日の訓練の愚痴をこぼしながら重い足取りで、とぼとぼ歩く茶髪の少年がいた。


「そもそもルア隊長は只の剣術の訓練なのに厳しくなりすぎだよ」


 頭の中には今日も鬼のような形相で剣術の指導をする上司の顔が思い浮かぶ。

 歩きながら少年はボサボサに荒れた茶髪を手で整えていると、ガサガサと目の前の茂みが不自然に揺れ動いた。


「ん?なんだろう……」


 不審な音がした茂みを確認するべく少年は茂みを覗く。すると、そこには綺麗な長い黒髪の人形が落ちていた。


「人形……?いや、でもなんでこんな男しかいないはずの騎士団寮に?」


 騎士団の寮は、金銭的に困っている者や家にいると家族に負担をかけてしまうと気にする者などで事情は様々だが、色んな者が肩身を寄せ合って住んでいる。


 食事も出てきて、住む場所も安く手に入り人気ではあるものの規則は厳しく、守らないとペナルティーが発生する。自由時間や入浴、食事の時間などが決められていることは勿論。基本、騎士団寮内では女人の立ち入りは禁止されていた。


 これは男尊女卑という意味ではなく、寧ろ女性を守る為の規則であった。

 『女性レディーは宝石を取り扱うように愛でろ』っと、口癖のように呟く新しい王は、女性などがうっかり寮に連れ込まれ強姦などされないようにと、それを未然に防ぐ為に作り出された物であった。


 おかげで王の目論み通りに、よく寮内で勃発していた女性問題はぐっと減り、新しい国王は国民からも好印象。

特に若い女性などからは元々、その見目麗しい姿でも高い支持を受けており、更に人気に拍車をかけることになった。


『それにしてもよく出来てるな~』


 一本一本丁寧につけられた長い黒髪と精密に出来た手足。そして見たこともない民族衣装をきた人形の服には、繊細な刺繍が施されておりあまりのその出来栄えに男である少年も見つめてしまう。


 面白半分で少年は綺麗な黒髪をした少女の人形を拾い、手の平の上に乗せてみる。少年は良くできた人形の頬をプニプニと人差指でつついてみた。すると……。


「ん、んー……」

「うわぁ!し、喋った……!?」


 小さい声で呻いた人形に悲鳴をあげる少年。

 思わず人形を投げ捨ててしまいそうになるが必死に押え、なんとか思いとどまることができた。


「な、何これ!?い、生き物……ッ?」


 手の平に乗る不思議な黒髪の少女。どうやら気を失っているだけらしく、ほんのりと暖かな温もりを感じた。


「どうやら生きてるみたいだけど……ん?」


 少年は少女が倒れていた鬱蒼としている茂みの隙間に、光る何かに気づく。草木の間に手を突っ込み、ついでにと拾い上げてみる。


「これって確かルア隊長がいつも首にかけてる……」


 少年は掴み上げた手の中身を見てると、見覚えのある銀のロケットペンダントに驚く。


『でもなんでこの子が、ルア隊長のペンダントなんか持っていたんだろう?』


 手の平の上で気絶する少女を少年は一瞬訝しそうに眺めてみたが、少女の頬や手は草木で切ったのか、細かいすり傷が目立つ。


 服にも微かに血が滲んでいて、とてもじゃないが痛々しそうで見ていられなかった。


「取り合えず怪我してるみたいだし、医務室連れて行ってあげなきゃ……!」


 蕾を隠すように手の平で覆い、辺りの人目を確認すると少年はなるべく人に気付かれぬようにと人を避け、人通りが少ない道を選び進む。そして兵士用にと別に用意されている医務室へと向かっていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「俺としたことが……」


 直ぐにペンダントを自室の机に置き忘れたことに気付いたルアはドアノブに手を掛ける。


「?」


 息を少し切らしたルア。シーンと部屋は静まり帰っている。


「……ツボミ?」


 いつもは部屋に帰ってくるなり、『おかえりなさい!』っと喜んだ様子で声を掛けてくる蕾。だが、いつまで経ってもあの明るい声が聞こえない。

 部屋は異様な静けさに包まれていた。


「ツボミ……!ツボミッ!?」


 すぐさま部屋の違和感に気付いたルアは家具やベットのありとあらゆる小さな隙間を覗く。もしかして寝ているだけなのかもしれないと、シーツの上も探してみるがツボミの姿は見えなかった。


 更に机に上に置いていたペンダントも無くなっていた。


 「い、一体何処に……!」


 慌てた様子で蕾を探すルアの体を何処から吹き抜けてきた風が当たる。


「なんで窓が開いて……」


 今朝ちゃんと空気の換気を終えて窓の扉は閉めたはずだったのに、半開きになっている。


「もしかして……!」


 ルアは窓の側に駆け寄り下を覗く。


 外窓には侵入者防止為にと鉄の格子が設けられていたが、ギリギリで蕾の体なら通り抜けられる隙間であった。


 ルアの頭の中に最悪の想像が浮かんだ。


「……ッ!―――ツボミッ!!」


 真っ青な顔でいつもなら必ず、外に出る時はきちんと閉めていく扉も閉めるを忘れ、ルアは自室を飛び出した。

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 本日はこの小説をお読み頂きありがとうございました (*´ω`*) 『評価』『感想』『レビュー』等、頂けると定期的に執筆をする際、大変モチベーションが上がり、作者は踊り狂って喜びます。お時間があればお願いいたします(笑)。
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