第14話 赤茶の髪の青年
蕾は青年の手のひらに乗り、案内されたのは一人用の丸テーブルの上だった。
蕾がそこにちょこんと座ると、青年はポロッコが積み重なった皿と蕾でも飲みやすいよう牛乳が注がれた平皿を蕾の目の前に出した。
『かわええわー!俺、本物の妖精さんなんか初めて見たわぁ~!どっかの家に棲んでる家付き妖精とかやろか?』
椅子に座り、青年は一緒にミルクを飲みながらニコニコと笑みをこぼす。
机の上で肘をつき、手を顔に当てながら自分の作った菓子を美味しそうに食べる蕾を幸せそうに眺めていた。
もぐもぐと必死な様子で食べる蕾の口のまわりには、ポロッコの食べカスなどがついている。
「しまリスみたいでかわええわー……」
「??」
ぼそっと呟いた青年の言葉をよく聞き取れなかった蕾は、不思議そうに両方の頬っぺたをお菓子で膨らませながら、首を傾げた。
「妖精さんは何処から来たん?」
日が反射して、淡い光を放つ橄欖石色の瞳で見てくる青年。
蕾はゴクンッ!と、牛乳で口の中一杯のお菓子を流し込む。
「えっーと……日本って国から来ました!」
「ニホン?なんや聞いたことあらへん国やなー……どっかの小さな島国かなんかかぁ?」
「一応、島国には島国になんですけど~……」
上手くそれ以上、説明出来ない蕾は言葉に困った。
『あれ~?可笑しいな、日本って結構ポピュラーな国だと思ってたんだけど……』
まだよく現場を把握しきれていない蕾は、男の言葉に違和感を覚えながらもポロッコを食べる。
「妖精さんは名前とかあるの?」
「蕾です!」
「ツボミちゃんかー!見た目にぴったりな可愛い名前やなー!」
そう言って、陽気な笑顔を蕾に向け続ける青年。
「お兄さんは?」
「俺?俺はアラン・クリスチアーノ。一応これでも、この国の王国騎士団で三番隊長を任せらてるんやで!」
「王国騎士団?」
聞いたことのない言葉に首を傾げる蕾。
「妖精のツボミちゃんにも分かりやすいよう、簡単に説明すると王国騎士団って言うのはな、この国に忠誠を誓い、王や民を守ったりする立派なお仕事なんやでぇ!一から十までの色んな部隊があって、序列があるんやけど……数字が上である程に王にその実力が認められてて、位も高くて偉いや!」
「へぇ~……!じゃあ、その三番隊長さんってことは、アランさんもすっごく偉い人ってことですよね?凄いな~!」
「いやぁ~!それほどでもあらへんよ~!」
謙虚な態度をとるアランだったが、照れたように頭を掻いた。気さくで頼りがいがあるお兄ちゃんのようなアランにどんどんと心を打ち解ける蕾。
ついついアランとのお喋りが楽しくて盛り上がって、時の流れを忘れてしまっていた。
『あっ、そろそろ隊長さんの部屋に戻らないと……!』
ルアには黙ってこっちの部屋に来てしまったので、蕾は部屋に戻ることにした。
折ってた膝をゆっくりと伸ばし、立ち上がる。
「ごめんなさい、アランさん。私、そろそろ戻らなきゃ」
「えぇー!もう行っちゃうんかぁ~?」
蕾が帰ると聞いて、あからさまに残念そうな顔を見せたアラン。
蕾はがっくしと肩を落として落ち込むアランを励ますよう笑顔で声をかける。
「また来ますから~!」
「ホンマか?!じゃ、またぎょうさんポロッコ作って待ってるわ~」
「ありがとう、アランさん!」
アランに机の上から降ろして貰った蕾は、来た時に通ったあの小さな穴の前に立つ。
「それじゃまた~!」
「あぁ!ほなな、ツボミちゃん」
バイバイとお互いに手を振り、アランと別れを済ませると蕾はまたあの狭い細道を通った。
『よかった、まだ隊長さんは帰ってきてないみたい……』
周囲を見渡すが、ルアの姿は見えなかった。取り合えず蕾は、ホッと安心して胸を撫で下ろす。
ルアの部屋に帰ってきた蕾はベットの裾の布を掴み、器用にベットの上にとよじ登った。
「ふわぁ~……!」
『なんだがお腹一杯になったから、少し眠たくなって来ちゃった……』
ベットの上に戻った蕾は大きな欠伸をし、背すじを伸ばす。
蕾はルアが帰ってくるまで一眠りしようと、広いベットの上で体を丸めるとそのまま目を閉じた。




