第13話 見つかっちゃった
一人に広い部屋に残された蕾。特にやれることもなくベットに倒れた。
「……。暇だな~……」
キングサイズぐらいある大きなベットの上で寝転がり、一人ぽつりと蕾は呟く。
大人しく天井を眺めていると、何処からいい香りが漂ってきた。
「クンクン……なんか甘くていい匂いが……」
蕾の鼻もその、甘くて美味しそうな匂いをとらえた。辺りをキョロキョロと見渡し、蕾は鼻先をスンスンと鳴らしながらこのいい香りがする出所を探してみた。
「ここから匂いが漏れてきてる……」
蕾は匂いの出所を調べみると、ベットの下辺りの石壁が僅かに崩れた穴からであった。
穴といってもなんとか蕾の体が入れる位の小さな穴だった。
「うんしょうんしょ……!」
匂いの正体が気になった蕾は穴に体を入れる。一生懸命うつ伏せの状態で腕の力だけを使い、暗くて狭い細道を通り抜けた。
「ここは……」
大体、ルアの部屋の間取りと同じなのだが、置いてある家具や雰囲気が違い、蕾はすぐここが隣の部屋だということに気付いた。
『このいい匂いは“あれから”かな?』
窓枠に置いてある丸い菓子と平皿に注がれた牛乳が目に止まった。
「あれ、なんや可愛いのがおるんやけどー!」
「!!」
急に現れた蕾を見て、嬉々している赤茶色の髪をした青年。
『ひ、人がいた!』
人の気配をまったく感じていなかった蕾は、突然鉢合せてしまった見知らぬ男性にびっくりする。
一瞬体を固まらすが、蕾は慌ててベットの下の隙間にある物影の奥に逃げ隠れる。
「あぁ……!そんな怯えんといて!別になんもしないから」
「ほ、本当ですか……?」
「勿論や!あ、ポロッコ食べるか?」
そう優しい声をかけながら、ベットの隙間を覗きこんできた青年の柔らかい光を放つ橄欖石色の瞳。
蕾は青年の言葉を信じ、ベットの奥からひょっこりと体を出す。
「ほら、食べてやー!」
赤茶色の髪の毛をした青年が差し出してきたのは、小さく丸め、そのまわりに粉砂糖のようなものをつけた揚げ菓子であった。
「ふわぁぁ~……!!こ、これ!本当に食べていいんですか!」
「いいで!そもそも妖精さんにお供えする用に作ったポロッコやしな。沢山食べてってや、妖精さん」
「そ、それじゃあ頂きます……!」
蕾は目を輝かせ、陶器のお皿の上に乗った“ポロッコ”と呼ばれた菓子を一つ手に取ると、口に運ぶ。
「~~!!美味しい~ッ!!」
外はカリっと中はもちっりとしており、砂糖の微かな甘味が口いっぱいに広がる。まるで揚げドーナツみたいな味だった。
昨日からまともな食事を食べてない蕾にとってはとてもありがたい食べ物であった。
「それ、俺の親父の故郷で良く作られてる定番のお菓子なんやって。俺も昔、よく食べたもんやわー」
青年はそう言いながら木製で出来たコップに新鮮な牛乳を注ぐ。
「妖精さんもミルク飲むか~?」
「はい、頂きます~♪」
蕾の頭からはすっかりと元の部屋に戻るという言葉は抜け落ちており、何故かその青年とそのまま部屋で、お茶をすることになってしまった。




