第12話 疼く胸の動悸
「……誰か来たな」
「えっ」
『悪いが少しの間、ここで隠れていといてくれ』
突然に鳴ったノックに舌打ちをつきながらも、ここで答えなかったら不審に思われるかもしれないので、ルアは蕾に薄手の布で出来た布団をかぶせ、やって来た男に対応する。
蕾の姿をきっちりと布団で隠したのを確認したら、男は扉の前に向かって歩く。
「……入れ」
「失礼します」
ルアは普段外で見せている、すました顔に戻る。
それには蕾に見せてきたような感情は一切なく、まるで機械のような冷たい声のトーンであった。
「なんだ」
「それが……」
ルアはこれ以上やって来た男を部屋の奥に入って来れないよう、扉の前にわざと立っていた。ルアの所にやってきた男性もそれを特に気にした様子もなくそのまま要件を喋り始めた。
「~~……!」
『なんか難しそうな話をしてるなぁ~……』
何やら真剣そうな話をしているのは分かるが、16歳の少女である蕾にとっては難しい言葉ばかりで、よく聞き取れなかった。
「分かった……。すぐに向かうと伝えてくれ」
立話をすること暫く、ようやく話が終わったのか扉を閉め、蕾のいるベットの前に戻ってきたルア。
「すまない。少し上の奴等の所に、顔を出しに行かなければならなくなった」
「そ、そんなんですか……」
ルアはマントを外し、急いで外に出掛ける準備をする。
「なるべく早く部屋に戻る。それまで大人しくここで待ってろ」
「はい、了解です!“隊長”さん!!」
そう言うと蕾は、『ビシッ!』と左手を上げ、ルアに向かって敬礼を決めた。
「なんだそのポーズは……?それに“隊長”さん?」
「あっ、さっきの人が『隊長』と呼んでいたので……嫌でしたか?」
怪訝そうに眉を寄せたルアを見て、心配になった蕾。その蕾の顔を見て、ルアは「うっ……!」っと言葉を詰まらせる。
「べ、別に嫌だとは言っていない……」
「!よかった~ッ!」
嫌がられてなかったことを知り、胸を撫で下ろして安心する蕾。思わず花のような笑みが零れる。
「!」
キュン……!
またあの謎の動悸がルアを襲ってきた。
「い、いってくる……!」
「は~い!行ってらっしゃいです~!!」
元気に手を振って送り出す蕾に対して、ルアはさっさと準備を済ませると部屋の外に出ていってしまった。
「まただ……!」
『なんなんだこの、昨日から高鳴る胸の鼓動は……ッ!』
部屋を出た瞬間、扉にもたれかかり頭を抱えたルア。
『寝不足か……?いや、それとも昨日食べたパンが原因なのか……?』
色々と思い付つく原因を探して見るが、どれもこの謎の動悸の原因に当てはまらなかった。
「帰りに、医務室でも寄るか……」
不安で頭を抱えながらも上に呼び出されているため、ルアは足を進めた。




