表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
365個の物語  作者: ひなた
睦月 寒さを楽しむ余裕
PR
29/365

睦月二十九日

  庭に並ぶ なんと奇妙な ツーショット

     照れる梅やと  目なし雪達磨


 だれですか。私の家の庭に、雪達磨など作って行って……。

 そのようなことをする人は、一人しか思い当たりませんが。

 庭で遊んでいくのなら、せめて一言、私に何かを言って下さらなければ困ります。

 梅の花を見にいらっしゃいと、手紙に書きましたけれど、それは会いたいという意味ですのに、気付いているはずですのに。

 私に会わずに、梅の花にだけ会って去ってしまうだなんて、意地の悪い方です。

 雪達磨を作って行ったのは、庭に訪れたことを私に伝えるためでしょうか?

 そんな面倒なことをしてまで、私を避ける必要があるとでもいうのでしょうか?

 気に入りませんから、雪達磨を壊しに行ってやるとしましょうかね。

「……汚いなぁ……」

 家の中から見ていても、不細工な雪達磨だとは思っておりましたが、目の前で見るとますます不細工ですね。

 いつも私に文句を言いますけれど、あの人だって相当な不器用です。センスだって、私のことを言えないくらいに、皆無とだって言えるレベルだと思います。

 更に不気味さを増しているのは、この顔でしょうね。

 上に行くにつれて小さくならなければいけないのに、たまに大きくなるという不思議構造も気になります。どうして雪達磨なのに、二段で済ませなかったのかも気になります。

 しかし何よりも気になるのは、どうして目が外れているかということです。

 口らしきものは残っているのですから、一番上のものに、顔を付けようと思ったのは確かなことなのでしょう。

 そして指で線を引いた程度のものではありますが、眉らしきものまであるのです。

 それなのに目がないというのは、あまりに不自然なことでしょう。

 そう思いますと、雪達磨の足元に二つの石が落ちているのですね。一度は目を付けようとして、どうしてか外していってしまったのでしょうか。

 外したわけでなく、外れてしまったのでしょうか。

 どちらにしても、不細工で不気味な雪達磨です。

 次に会ったなら、今度はこちらが、センスのない奴だと笑ってやりましょうか。

 そのためにも、雪達磨が溶けてなくなってしまう前に、私のところを訪れてもらわなければ困りますね。

 にしても、なんともシュールな光景ですね。

 うちの可愛らしい梅が、恥ずかしそうに照れているというのに、その前で不細工な雪達磨が堂々としているのです。お前こそ、照れるべきだと思いますのに、よくもまあ堂々と梅の花の前にいられるものですね。

 これはこれで面白いので構いませんが。

 どうして苦手なのをわかっていましょうに、こういうことをするのでしょうね。

 私だって苦手な絵を描いて送っているのですから、同じことかもしれませんが。

 結局、私たちは似たもの同士なのですよ。傍にいるせいで、似てしまったのかもしれませんね。

 そう考えると、私は彼に会うまで、センスが良かったのかもしれません! なんて。

 一人でこんなことを思っていても、何も面白くない。

 口に出してみても、全く面白くない、楽しくない。

 やっぱり私には貴方が必要なのです。貴方がいてくれないと、つまらないのです。だから意地悪ばかりしていないで、私に会いに来て下さいよ。梅の花が散る前に。雪達磨が溶ける前に。

 おかしな光景ではありますが、貴方の隣でなければ、笑うこともできませんよ。

 たくさんお話したいことはあるのです。貴方だって、私のことが嫌いなわけではないでしょうに。

 だからこそ、私には会って下さらなかったにしろ、私の家に、私の庭に来て下さったのでしょう?

「待っていますよ」

 呟くと、不細工な雪達磨を作り、首を傾げる貴方の姿が思い浮かぶようで、私は庭をあとにしました。

 待ってはいますけれど、待ち焦がれているわけではないのです。

 一人は寂しいものですが、私ばかりが貴方に会いたいと思っているようでは、私が貴方を求めているようで嫌ですから。そもそも、こちらばかりが寂しいというのは、不平等な気がします。

 これも私が選んだ道ですから、貴方に文句を言うのは筋違いというものでしょうが。

 八つ当たりくらい、させて下さいよ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ