第三話「恋子さんクラスメイトになる」
1.学校・教室
○ 黒板の前で担任と恋子さんが並んで立っている。生徒たちは全員着席している。
担任「今日から暫く……だと思うが、皆と一緒に学ぶことになった、恋子……」
担任は恋子に耳打ちする。
担任『苗字はなんだっけ?』
ゴニョゴニョと二人で話している。
恋子が一歩、前に出る。
恋子「えーっと、今日からこのクラスでお世話になる『トキメキ恋子です』。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。
担任「それ、本当の名前なのか? 漫画のタイトルみたいだが」
恋子「昔、ある人がつけてくれたんです」
担任「……まぁ、とにかくそう言うわけで、こんな中途半端な時期に編入して来たが、みんな仲良くするように」
担任「それと、言い忘れたが、恋子くんはこう見えて女だから――って、女だったら女子の制服を着たら良いじゃないか。紛らわしくてかなわん」
恋子「そんな……今までずっとこの格好ですよ。今さら女子の制服なんて恥ずかしいです」
2.教室・休み時間
○ 多くの女子たちが恋子さんの周りに集まっている。
女子A「ねぇねぇ、女の子って本当なの?」
恋子「そうですよ」
女子B「でもさ、体を見ると男子なんだけど」
そう言いながら恋子さんの胸を触る。
恋子「本当ですって。ほら」
腕を掴んで股間を触らせる。
女子B「あっ、本当だ!」
キャッキャ、キャッキャと大盛り上がりの女子の群れ。
教室の端。廊下寄りの位置で、腕を組みながら恋子たちを見ている田中。
生徒会長「どう、恋子さんの様子は?」
廊下の窓から、田中のクラスに顔を出す。
田中「結構、溶け込んでいます」
生徒会長「それでね。恋子さんのことなんだけど、校長が身元引受人になって、近くのアパートに住まわせる事が決まったの」
田中「随分と協力的なんですね。もっと手こずるかと思ったんですけど」
生徒会長「校長も自分の赴任中に変な騒動を起こしたくないんじゃない? しょせん公務員だから」
田中「僕は助かりました」
二人は恋子さんを見る。
女生徒A「ねぇ、恋子さんって彼女いるの? あっ、違った。彼氏いるの?」
恋子「いるよ」
そう言って立ち上がり、田中の元に行って肩に手をかける。
恋子「彼が僕の彼氏なんだ」
クラスの一同「おおー」と言う、感嘆の声。
田中「……なんか、変な雰囲気で見られてるんだけど」
生徒会長「うん、そうね」
恋子「僕、昨日彼の家に泊まったんだ」
クラスの一同「おおー」と、更に感嘆の声。
田中「泊まったって、何もないから!」
大慌てで否定する。
その騒動を、廊下からコッソリと覗いている一人の影。
視線に気付き、廊下に視線を向ける恋子さん。
そそくさと隠れる影。
3.職員室
○ サングラスにマスクという出立ちの一人の教師。
「伊藤先生、風邪ですか?」
一人の教師が尋ねる。
伊藤「え、ええ。まぁ」
4.教室
○ サングラスとマスクという出立ちで教壇に立つ伊藤。
伊藤「では、授業を始める」
籠った声でボソボソと話す。
生徒「すいませーん。聞こえないんですけど」
伊藤「す、すまん」
謝りながら恋子さんを見る。恋子さん『?』顔。
5.学校・屋上 (昼休み)
○ 田中、恋子、生徒会長は座り、お弁当を広げている。
恋子「はい、あーんして♪」
ミートボールを可愛いフォークに刺し、田中の前に出す。
田中「い、いいよ」
困った顔。
恋子「ダメだよ。僕たち恋人同士なんだから」
そのイチャイチャぶりに一緒に食べていた会長「私、お邪魔みたいね」と立ち上がる。
田中「ちょっと待って、行かないで」
生徒会長「でも……」
田中「会長がいなくなったら、この変な雰囲気に耐えられない」
田中たちのやり取りを遠くから見ている影。
『はっ!』として振り返る恋子さん。
田中「どうしたの?」
恋子「今朝から、誰かに見られている気がするんだ」
生徒会長「物珍しがられてるんじゃない?」
6.恋子さんのアパート 二階
○ 室内は6畳一間。小綺麗だが何もない。
生徒会長「結構、良いんじゃない?」
恋子「そうですね」
生徒会長「それじゃあ、私たちは帰るから」
田中と会長は階段に向かう。
恋子「あっ、カケル君」
田中、振り向く。
恋子「カケル君は、今日泊まっていかないの?」
田中「えっ?」
会長は田中を見る。田中と目が合う。
田中「い、いいよ」
必死で否定する。
恋子「なんだか冷たいよね。君が彼女欲しくて僕を呼んだのに」
田中「い、いや。ほら、登校初日で疲れてるかなと思って」
田中「落ち着いたら寄らせてもらうよ」
恋子「そう?」「そうだよね。まだ、この部屋何もなくて寂しいもんね」
田中と会長は階段を降りて家路に向かう。
恋子「じゃあ明日、部屋に寄ってね。一緒に登校しよう」
アパートの通路から笑顔で田中たちに手を振る恋子。
帰り道。げっそりとした表情の田中。隣で歩きながらその姿を無言で見ている会長。
7.恋子のアパート(翌日の朝)
『ガチャ!』
田中がドアが開けると『ジージー』電動髭剃りで顎髭を剃りながら恋子が出てくる。
田中「あ、あ、あ……」
指差して固まる。
田中「お、男じゃねぇか!」
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