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病んだ私が悪役令嬢に転生したので、クラスメートに復讐します  作者: がお


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【6話】地下室のライブ

今回も沙織の復習劇は過激になります

――ある日。

沙織は執事を連れて、町へ買い物に来ていた。

貴族の屋敷が並ぶ通りを抜けると、商人たちの声や人々の話し声が聞こえてくる。

そんな中――

♪~~♪

どこからか、美しい歌声が聞こえてきた。

沙織が足を止める。

「……何かしら?」

透き通るような声だった。

町の喧騒の中でも、その歌声だけは不思議なくらい耳に入ってくる。

「お嬢様?」

執事が振り返る。

「あの歌……」

沙織は声のする方へ歩き始めた。

そして、人だかりの向こうに、一人の吟遊詩人の姿を見つける。

ギターにも似た弦楽器を手に、目を閉じて歌っている。

沙織はその歌声を聞きながら、なぜか妙な違和感を覚えていた。

「……この曲、どこかで……」

でも、思い出せない。

そして吟遊詩人が、ふと目を開ける。

その視線が――沙織と重なった。

そして――

小さく頭を下げる。

「……」

沙織も、軽く会釈を返した。

「綺麗な歌声ね」

吟遊詩人は微笑むだけで、何も答えない。

再び弦楽器を手にすると、次の曲を弾き始めた。

沙織はその場を離れた。


――その日の夕方。

屋敷に戻った沙織は、自室の椅子に腰を下ろしていた。

紅茶を一口飲む。

けれど、なぜか落ち着かない。

「……あの吟遊詩人」

町で聞いた歌声が、頭から離れなかった。

綺麗な声だった。

それだけなら、別に珍しいことではない。

それなのに――

沙織はカップを置いた。

「何か……おかしかった」

吟遊詩人の態度は普通だった。

歌を聞いていた沙織に気づけば会釈をする。

そして、何事もなかったように歌い続けていた。

「でも……」

沙織は目を閉じる。

あの歌声。

そして、ハッとする、あの曲。

「……あれは、この世界の人間が使う言葉じゃない」


――翌日。

沙織は、昨日と同じ場所へ足を運んでいた。

「お嬢様、昨日の吟遊詩人を探しておられるのですか?」

「ええ」

昨日と同じ通りを曲がる。

すると――

聞き覚えのある歌声が聞こえてきた。

♪~~♪

「……いたわ」

昨日と同じ場所。

吟遊詩人は、昨日と同じように弦楽器を奏でながら歌っていた。

周囲には、昨日と同じように町の人々が集まっている。

沙織は少し離れたところで立ち止まり、吟遊詩人を見つめた。

やはり、この曲だ。

昨日感じた違和感は、間違いではない。

曲が終わる。

吟遊詩人が顔を上げる。

そして、沙織の姿に気づくと――

昨日と同じように、小さく会釈をした。

沙織も会釈を返す。

「……今日は、少しお話を聞かせてもらえるかしら?」

吟遊詩人は、沙織の言葉に小さく頷いた。

「もちろんです。」

「先ほどの歌、とても綺麗だったわ」

沙織は吟遊詩人の持つ弦楽器に目を向ける。

「あの曲は、あなたが作ったの?」

「ええ。旅の途中で思いついた歌です」

「そう……」

沙織は少し考える。

「歌詞も、あなたが?」

「はい」

吟遊詩人は微笑んだ。

沙織は、その顔をじっと見つめる。

やはり。

「もっと、あなたの歌を聞いてみたいわ」

「ありがとうございます」

沙織は少しだけ微笑んだ。

「だったら……私の屋敷に来ない?」

吟遊詩人が目を丸くする。

「屋敷、ですか?」

「ええ。そこでゆっくり歌を聞かせてほしいの」

「私のような吟遊詩人を、ですか?」

「何か問題でも?」

吟遊詩人は少し考え――

やがて、小さく笑った。

「……分かりました。お招きいただけるのでしたら」

「決まりね」

沙織は執事に目を向ける。

「馬車を用意してちょうだい」

「かしこまりました」

沙織はもう一度、吟遊詩人を見る。

そして心の中で呟いた。

(あなたが誰なのか……屋敷でゆっくり聞かせてもらうわ)


――しばらくして。

吟遊詩人は沙織の屋敷へと案内された。

「こちらへどうぞ」

執事に案内され、応接室へ通される。

そこには大きなテーブルと、向かい合わせに置かれた椅子があった。

沙織が先に腰を下ろす。

「どうぞ、座って」

「ありがとうございます」

吟遊詩人も向かいの席に座った。

ほどなくして、紅茶と菓子がテーブルに並べられる。

「町を旅しているの?」

「はい。いろいろな町を巡りながら、歌を聞いてもらっています」

「それは大変ね」

「慣れていますから」

吟遊詩人は笑う。

沙織も紅茶を口にしながら、穏やかに笑った。

「吟遊詩人って、普段はどんなところで歌うの?」

「市場だったり、酒場だったり。人の集まるところなら、どこでも」

「じゃあ、昨日のように町の広場で歌うのが一番多いのね」

「そうですね。人が多い場所のほうが、歌を聞いてもらえますから」

二人はしばらく、そんな他愛のない話を続けた。

旅の話。

町の話。

吟遊詩人がこれまで訪れた場所の話。

沙織は楽しそうに話を聞いていた。

しかし――

その目だけは、吟遊詩人の一挙一動をじっと観察していた。

(やっぱり……)

沙織は紅茶のカップをテーブルに置いた。

そして、吟遊詩人を見つめる。

「そういえば……」

「はい?」

「あなたの歌、とても素晴らしかったわ」

吟遊詩人は微笑む。

「ありがとうございます」

「特に――」

沙織は少し間を置いた。

「サビの『町のネオン』というところ」

その瞬間。

吟遊詩人の手が止まった。

ほんの一瞬だった。

けれど、沙織は見逃さなかった。

「……ネオン?」

吟遊詩人が聞き返す。

「ええ」

沙織は笑顔のまま答える。

「素敵な表現ね。この世界には、まだそんなものはないのに」

「……」

吟遊詩人は黙り込んだ。

沙織は、その顔をじっと見つめる。

そして――

頭上に文字が浮かんだ。

【動揺】

沙織の口元が、ほんの少しだけ上がった。

(やっぱり……)

この人は知っている。

――「ネオン」という言葉を。

沙織は、さらに言葉を続けた。

「それと……もう一つ」

吟遊詩人が顔を上げる。

「あなた、曲調はかなり変えているけれど……あの歌、デスベイビーの曲をアレンジしているわね?」

その瞬間――

吟遊詩人の表情が止まった。

「……!」

沙織は静かに微笑む。

「やっぱり」

吟遊詩人の頭上に、文字が浮かんだ。

【驚愕】

沙織は紅茶を一口飲む。

「この世界で、その曲を知っている人間なんていないもの」

吟遊詩人は、しばらく黙っていた。

そして――

小さく息を吐いた。

「……あなたも、知っているんですね」

沙織の目が細くなる。

「ええ」

二人の間に、静かな沈黙が流れた。

沙織は確信した。

――目の前にいるのは、ただの吟遊詩人ではない。

自分と同じ――

転生者だ。

沙織は紅茶のカップを置くと、にっこりと笑った。

「さて……」

吟遊詩人を見る。

「そろそろ、あなたの歌をもう一度聞かせてもらえるかしら?」

「もちろんです」

吟遊詩人が椅子から立ち上がろうとした、その瞬間――

「お嬢様」

背後から、使用人たちが静かに現れた。

「こちらの方を」

沙織は笑顔のまま答えた。

「地下室へ」

「承知しました」

「えっ?」

吟遊詩人が驚いて振り返る。

次の瞬間、使用人たちが吟遊詩人の両腕を掴んだ。

「ちょっと、何をするんですか!」

「暴れないほうがいいわ」

沙織は椅子に座ったまま、穏やかに告げる。

「あなたには、まだ聞きたいことがたくさんあるもの」

「……!」

吟遊詩人は沙織を見つめる。

そして――

頭上に文字が浮かんだ。

【警戒】

沙織は、それを見て微笑んだ。

「さあ……歌の続きを聞かせてもらいましょうか」

使用人たちは吟遊詩人を連れて、応接室を出ていく。

やがて――

地下室へ続く階段を下りていった。

重い扉が閉じる。

沙織はにんまりし

「……さあ、ライブ開演ですわ」

――地下室。

沙織が階段を下りていくと、薄暗い部屋の中央に吟遊詩人がいた。

両手には鎖が繋がれている。

吟遊詩人は沙織の姿を見ると、静かに顔を上げた。

沙織は、その前まで歩いていく。

「あなたの名前は?」

吟遊詩人は少し黙ってから答えた。

「……アトレシアです」

沙織は、その名前を聞いて微笑んだ。

「アトレシア……ね」

そして、沙織は吟遊詩人の頭上を見る。

そこには――

【田辺】

と表示されていた。

「……」

沙織の口元が、ゆっくりと上がる。

「ふふ……」

「……何がおかしいんですか?」

「いいえ」

沙織は首を横に振る。

「素敵な名前だと思って」

そう言いながら、沙織は頭上の文字をもう一度確認する。

【田辺】

(やっぱり……)

沙織は確信した。

目の前にいるのは、アトレシアという吟遊詩人ではない。

――田辺。

かつて同じ教室にいた、クラスメートだった。

その名前を見た瞬間、前世の記憶が鮮明によみがえってくる。

田辺。

軽音楽部だった女生徒。

授業中、沙織の机に落書きをしたり――

机の中に、丸めた紙くずやゴミを入れたりしていた。

何度注意しても、面白がって繰り返していた。

「……そう」

沙織は静かに呟いた。

「あなた……田辺さんだったのね」

「……何を言っているんです?」

田辺――いや、アトレシアは怪訝そうに沙織を見る。

沙織は微笑んだ。

「……懐かしいわね」

「何がです?」

「あなたの歌を聞いて、思い出したの」

沙織は一歩、田辺へ近づいた。

「昔のことをね」


「さあ……そろそろ歌ってもらいましょうか」

沙織はそう言うと、懐から一本のナイフを取り出した。

「……っ」

アトレシア――田辺の顔から、さっと血の気が引く。

頭上には、はっきりと文字が浮かんだ。

【恐怖】

沙織はナイフを眺めながら、静かに笑った。

「さあ、まずは歌い出しね」

沙織はそう言って、ナイフを手にした。

そして田辺の腹部を、ナイフの先で浅く切りつける。

「痛っ!」

田辺の頭上に、すぐに文字が浮かんだ。

【激痛】 【恐怖】

沙織はその文字を確認すると、静かに微笑んだ。

「いい声だわ」

「次は……腕ね」

沙織はそう言って、ナイフを持ち上げた。

そして田辺の腕を切りつける。

「うああああああああっ!!」

田辺は長い絶叫を上げ、身体を激しく震わせた。

頭上には、次々と文字が浮かぶ。

【激痛】

【恐怖】

【助けて】

沙織はそれを冷静に見つめる。

「……流石、ビブラートが、きいてるわ」

そして、淡々と続けた。

沙織はナイフを手に、田辺の前に立った。

長く――短く。

そのたびに、地下室には田辺の悲鳴が響き渡る。

「ああああっ!」

「やめて……!」

沙織は表情を変えない。

まるで指揮者が楽団を操るように、田辺の悲鳴さえも自分の思い通りに奏でているかのようだった。

頭上に浮かぶ文字が、次々と変わっていく。

【恐怖】

【苦痛】

【絶望】

そして沙織は、静かに告げた。

「……さあ、ラストですわ」

沙織は静かにそう告げた。

次の瞬間、地下室に田辺の最後の叫び声が響き渡る。

それは、これまでで一番高い声だった。

そして――静かになった。

田辺の頭上に浮かんでいた文字も、ゆっくりと消えていく。

沙織はしばらく田辺を見つめたあと、ナイフを下ろした。

沙織はしばらく黙って田辺を見つめた。

そして、ふっと微笑む。

「あら……これではアンコールはできませんわね」

地下室には、もう返事はなかった。

沙織はそう呟くと、静かにその場を後にした。

Aiってこういう残酷描写もNG なんですね。

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