【5話】逆転
今回も沙織の狂気は止まりません。
――ある日。
「お嬢様、最近、騎士団で噂になっている騎士がいるそうです」
食事を終えた沙織に、執事がそう告げた。
「噂?」
「はい。最近、騎士団に入ったばかりだというのに、かなりの腕前だとか」
沙織は紅茶のカップを置いた。
「新人なのに、そんなに強いの?」
「ええ。訓練では、先輩の騎士たちを相手にしても負け知らずだそうでございます」
「……へえ」
沙織は少し興味を持った。
「その騎士、名前は?」
「確か……レオンという名前だったかと」
「レオン……」
沙織は、その名前を口の中で繰り返した。
そして、ふと微笑む。
「その人、一度見てみたいわ」
「お嬢様が騎士団へ参られるのですか?」
「ええ」
沙織は立ち上がった。
「ちょっと、確かめたいことがあるの」
「練習場まで案内してちょうだい」
――しばらくして。
沙織は騎士団の練習場を訪れていた。
広い訓練場では、何人もの騎士たちが木剣を手にしている。
あちこちから、木剣がぶつかり合う音が聞こえてくる。
カンッ!
カンッ!
「お嬢様、あちらをご覧ください」
執事が指差した先では、二人の騎士が向かい合っていた。
周囲には、他の騎士たちが集まっている。
「練習試合のようですね」
「そうみたいね」
沙織は足を止めた。
一人は、体格のいい騎士。
もう一人は、それよりも若く、細身の騎士だった。
「始め!」
合図と同時に、二人が動いた。
ガンッ!
木剣が激しくぶつかる。
体格のいい騎士が、力任せに剣を振り下ろす。
しかし――
若い騎士は、それを横へ受け流した。
「速い……」
沙織が呟く。
次の瞬間、若い騎士が一歩踏み込んだ。
木剣が相手の胸元へ伸びる。
「そこまで!」
審判の声が響いた。
周囲から、ざわめきが起こる。
「また負けたぞ……」
「あいつ、今日何人目だ?」
「新人だろ? どうなってるんだ……」
沙織は黙って若い騎士を見つめていた。
その動きには、無駄がない。
剣を振るうというより、相手の動きを先に読んでいるようだった。
「……なるほど」
沙織は黙って若い騎士を見つめていた。
その太刀筋は、この時代の騎士たちとは明らかに違っていた。
剣のことなど何も知らない素人でも、それくらいは分かる。
力任せに振り下ろすわけでもない。
大きく構えることもない。
必要最小限の動きだけで、相手の攻撃をかわし、次の一撃を繰り出している。
沙織は小さく呟いた。
若い騎士が、また別の騎士と向かい合う。
「始め!」
今度は、先ほどよりも体格のいい騎士だった。
周囲の騎士たちが固唾を飲んで見守る。
そして――
二人の木剣が、激しくぶつかった。
カンッ!
若い騎士は一歩だけ後ろへ下がる。
その瞬間、沙織の目が細くなった。
「……この動き」
そして沙織は執事を呼び
「……ねえ」
執事へ顔を近づけると、小さな声で耳打ちした。
「あの騎士に、うちの使用人たちの指南に来てもらえないか頼んでちょうだい」
「使用人たちの、でございますか?」
「ええ」
沙織は微笑んだ。
「あれだけの腕前なら、きっと役に立つでしょう」
執事は若い騎士へ視線を向ける。
「かしこまりました。すぐに話をつけてまいります」
「お願いね」
執事がその場を離れていく。
――しばらくして。
「お嬢様」
執事が戻ってきた。
「どうだった?」
沙織が尋ねると、執事は静かに頭を下げる。
「お受けいただけるそうでございます」
「そう」
沙織は練習場へ視線を戻した。
「それなら、明日からお願いしましょう」
「かしこまりました」
沙織は、まだ練習を続けている若い騎士を見つめる。
「……楽しみね」
その口元には、いつもの微笑みが浮かんでいた。
――翌日。
屋敷の庭に、数人の使用人が集まっていた。
その中央には、昨日の若い騎士が立っている。
手には木剣。
「では、始めましょう」
騎士がそう言うと、使用人の一人が木剣を構えた。
「お願いします!」
「まずは、構えからです」
騎士は使用人の足の位置を確認し、木剣の握り方を直していく。
「力を入れすぎないでください。相手の動きを見てから動くのでは遅い」
「はい!」
少し離れた場所から、沙織がその様子を眺めていた。
一人目の使用人が騎士に向かって踏み込む。
カンッ!
木剣が弾かれた。
「今のは力を入れすぎです」
騎士は淡々と告げる。
「剣を振るのではなく、相手の動きを利用してください」
「はい!」
二人目、三人目と交代していく。
騎士は一人一人に合わせて指導していた。
沙織はその様子を黙って見ている。
「少し休憩にしましょう」
騎士がそう告げると、使用人たちは木剣を置き、それぞれ水を飲み始めた。
若い騎士も木剣を置き、額の汗を拭う。
そこへ、沙織がゆっくりと近づいていった。
「素晴らしい腕前ね」
突然声をかけられ、騎士が振り返る。
「……お嬢様」
「昨日も見せてもらったけれど、今日も見事だわ」
沙織は微笑みながら、騎士の手にある木剣へ視線を向けた。
「あれほど無駄のない剣は、初めて見たわ」
騎士は少し驚いたような顔をした。
「ありがとうございます」
「あなた、かなり剣の心得があるのね」
「それなりには」
沙織は微笑んだまま、木剣を見つめた。
「あなたの、剣道の腕前は大したものだわ」
その瞬間――
騎士の表情が、ほんのわずかに固まった。
沙織は見逃さなかった。
「……」
騎士はすぐに平静を取り戻す。
「剣道……ですか?」
「ええ」
沙織は何でもないことのように答えた。
「違ったかしら?」
騎士は黙って沙織を見る。
その頭上に――
【動揺】
の文字が浮かんだ。
沙織は心の中で笑った。
(やっぱり)
わざと、かまをかけたのだ。
――その直後だった。
「……あれ?」
騎士が、ふらついた。
沙織は黙って、その様子を見つめている。
「どうしたの?」
「いえ……少し、目眩が……」
騎士は額に手を当てる。
視界が、徐々にぼやけていく。
「身体に……力が……」
そして――
その場に膝をついた。
沙織は静かに近づく。
「大丈夫?」
そう言いながら、沙織は先ほど騎士が休憩中に飲んでいたお茶へ視線を向けた。
そこには、まだ少しだけお茶が残っている。
もちろん――
そのお茶には、沙織があらかじめ薬を混ぜていた。
騎士の意識が、次第に遠のいていく。
「……あなた……まさか……」
沙織は微笑んだ。
「おやすみなさい」
騎士の身体から力が抜けた。
そして――
意識を失った。
――しばらくして。
「……う……」
騎士はゆっくりと目を開けた。
視界に入ったのは、見覚えのない薄暗い天井だった。
「……ここは?」
身体を起こそうとした瞬間――
ガチャッ。
手首に違和感を覚える。
「……っ!」
両手が縛られている。
足も同じように固定され、身動きが取れない。
騎士は周囲を見回した。
窓はない。
薄暗い部屋。
そして――
地下室。
「なぜ……俺が……」
そのとき、地下室の扉がゆっくりと開いた。
ギィ……。
「目が覚めたのね」
沙織が姿を現した。
騎士は目を見開く。
「……お前……」
沙織は騎士の前まで歩いてくる。
そして、にっこりと微笑んだ。
「少し聞きたいことがあるの」
「何を!」
騎士が声を荒らげる。
沙織は、そんな騎士を静かに見つめていた。
そして――
「あなた……加藤くんね」
騎士の表情が、一瞬だけ強張った。
「違う!」
即座に否定する。
しかし――
沙織は騎士の頭上に浮かんだ文字を見ていた。
【何故】
沙織の口元が、ゆっくりと上がる。
「ふふ……」
「何がおかしい!」
「別に?」
沙織は首を傾げた。
「ただ、あなたがどうしてそんなに慌てているのかしらと思って」
騎士は黙り込む。
沙織は一歩、騎士へ近づいた。
「私のクラスの加藤くんはね……」
騎士は黙って沙織を見る。
「剣道で国体まで行っているの」
その言葉に、騎士の表情がわずかに変わった。
沙織はさらに続ける。
「それに、女子にも人気があってね」
「……」
「二股、三股は当たり前」
沙織は微笑んだ。
「女性が好きみたいね」
騎士の頭上に――
【動揺】
の文字が浮かんだ。
沙織はそれを見て、くすりと笑う。
「ふふ……」
「……何がおかしい」
「別に」
沙織は、騎士の顔をじっと見つめた。
「……あと、もうひとつ」
騎士の眉が動く。
「あなた、よく『沙織という生徒はブスだ』って、周りに言っていたわよね?」
「……!」
騎士の表情が固まった。
沙織は微笑んだまま、さらに一歩近づく。
「クラスの女の子たちにも、よく話していたそうじゃない」
「……知らない」
「そう?」
沙織は騎士の頭上を見る。
そこには――
【動揺】
の文字が浮かんでいた。
沙織は小さく笑った。
「まあ、いいわ」
そして、静かに告げる。
「そんなに女性が好きなら……」
加藤が怪訝そうな顔をする。
「女性になってみたら?」
「……は?」
沙織は立ち上がると、部屋の隅に置かれていた化粧道具を手に取った。
「せっかくだもの。あなたを綺麗にしてあげるわ」
「何をする気だ!」
「決まっているでしょう?」
沙織は楽しそうに笑った。
「お化粧よ」
そして――
沙織は加藤の顔に化粧を施していく。
さらに長い髪のカツラを取り出し、頭にかぶせる。
「……ふふ」
沙織は少し離れて、加藤の姿を眺めた。
「あら。意外と似合っているじゃない」
加藤は顔を真っ赤にして睨みつける。
「こんなことをして、何になる!」
沙織は微笑んだ。
「あなた、女性が好きなんでしょう?」
そして、鏡を加藤の前に置いた。
「だったら、自分が女性になってみるのも悪くないんじゃないかしら?」
沙織は加藤の姿を眺め、満足そうに微笑んだ。
そして、地下室の扉へ視線を向ける。
「さあ、入ってらっしゃい」
沙織がそう言うと――
ギィ……。
地下室の扉が開いた。
そこから、屈強な男たちが数人、入ってくる。
加藤は目を見開いた。
「な、なんだ……こいつらは!」
男たちは加藤の姿を見ると、一瞬きょとんとした。
そして、一人が沙織へ向かって言う。
「お嬢様……意外と可愛いですね」
「そうでしょう?」
沙織は楽しそうに笑った。
加藤は顔を真っ赤にする。
「ふざけるな!」
沙織はそんな加藤を見て、くすりと笑った。
沙織は男たちを見回した。
「あなたたち、この娘を好きにしていいわよ」
その言葉を聞いた瞬間、男たちは一斉に加藤へ近づいた。
「な、何をする!」
加藤は必死に身体を動かそうとする。
しかし、手足は縛られたままだ。
男たちに囲まれ、逃げ場を失う。
「待て……やめろ!」
加藤の頭上に、文字が浮かんだ。
【恐怖】
沙織はその文字を見つめ、静かに微笑んだ。
「……あら、嬉しそう」
地下室に、加藤の叫び声が響いた。
――その後、その行為は三日三晩続いた。
四日目の朝。
地下室には、疲れ果てた加藤がいた。
沙織はその姿を一瞥すると、静かに微笑んだ。
「……ずいぶん大人しくなったわね、加藤くん」
加藤は顔を上げることもできず、床にうずくまっていた。
そして、か細い声で呟く。
「……助けて……」
沙織は、その言葉を聞いて立ち止まった。
「助けて、ですって?」
しばらく加藤を見つめていた。
そして、静かに口を開く。
「私が『助けて』と言って、誰が助けてくれたの?」
加藤は何も答えられなかった。
沙織は微笑む。
「……そういうことよ」
それから一週間後――。
加藤は、心臓発作を起こし、そのまま息を引き取った。
「抱くのはお好きだったようですけど……抱かれるのには、慣れていなかったみたいですわね」
沙織はそう呟いて、静かに微笑んだ。
流石に今回のはAI的に忠告出ました




