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美形兄弟、デリカシーが足りない



 さて、そろそろアレが来そう⋯⋯なので、準備を怠ってはいけない。


 アレがなんだって?


 ⋯⋯ふ。女性の月イチ行事さ。


 女の子は否が応でも、毎月この行事に付き合わなくちゃいけないの⋯⋯。

 だからそのための準備が必要なの――ここは、外。屋敷の。


 私は、雑草生い茂る中へと足を踏み入れた。


 まずは、この葉っぱァ!!


 ブチぃ!!と、千切って私は籠に入れた。

 今日、明日始まってもおかしくはないのだ。

 

 まずは、衛生とニオイ対策!

 これは、先日、二郎が目の前で濡らして揉み込んで泡立てたやつ!


 しかし、めちゃくちゃ草の匂い!


 こんだけ草臭いのだ!これで股間を洗えば⋯⋯まぁ、ニオイ問題は解決だろう!


 なんてたって、生理期間中は蒸し風呂に入れない。

 入りたいけど、私が入ると兄弟も入ってくるのだ!

 薪節約のために⋯⋯!!


(うう⋯⋯っ!デリカシー無さすぎるでしょ!あの兄弟!)


 普段は、気にも留めなくなったが、事情が変わると気に留めるのが女心!


 兄弟二人を忌々しく思い浮かべる。


 キラキラの金髪、彫りは深すぎず、浅すぎず。

 左右対称に収まる顔のパーツ。

 瞳はアーモンドアイ。

 兄は、碧眼へきがん

 弟は、翠眼すいがん

 

 縁取ふちど睫毛まつげは金髪。

 顎もゴッツくない。ケツのように割れてない。

 なんというか、日本人好みの形。


 身長も高い。

 百七十後半か、百八十センチ台ではなかろうか?

 主食の豆とクズ野菜でそんなに大きくなるわけは無いはずなので、その身長だけで現実離れしてる。


 兄の一郎(勝手に命名)は、均整のとれた身体つき。

 肩までの金髪はワンレンヘアスタイル。

 しかし、どこに隠れているのかその筋肉は、兄弟二人で木一本を斧一本で切り倒す。

 トレードマークは、帰宅すると料理や台所の掃除に勤しんでいるので、フリルエプロンぐらいだろうか。

 ちなみに、裾はめちゃ短い。なんかパツパツしてるし。


 弟の二郎(勝手に命名)は兄と違って、若干短めの髪型。

 センター分けの前髪に、サイドは耳にかかる程度の長さ。

 兄の言葉ひとつで動く羽目なのか、警らという職務に就いているからなのか、筋肉隆々。

 トレードマークはそんな筋肉を覆うブラジャーである。

 レースはお手製、三段仕様。

 私のブラ作りに兄弟を巻き込んで作らせたら、試作として作った二郎ブラ。

 本人は、お洒落な胸当てだと思っている。


 余談だが、ホットパンツ型の紐パンも一郎が二郎のサイズの試作を作ってしまったため、私とお揃いで所持している。

 

 そんな、パッと見キラキラな(若干、倒錯的な)二人だが。

 しかし、裏腹に全く紳士ではないのだ。


 兄は、ズレた解釈で人のネグリジェ引っ剥がして裸にするし、弟は、たまに大型犬化するが、基本口が悪いし、よく怒鳴られる。


 まぁ、だが、なんだかんだと面倒見は良い二人なのだ。


(うーん、しっかし、生理期間中にお風呂は入れないなんて、しんどい⋯⋯どうにか方法はないかしら?)


「ねぇ、一郎。洗濯用のたらいあったじゃん。あれ貸して」


「⋯⋯良いが。洗濯に行くのか?一人では無理だろう」


「洗濯⋯⋯じゃなくて、沐浴もくよく用に使いたいの」


「もくよく⋯⋯?」


(⋯⋯もしや、沐浴文化もないの??うそでしょ⋯⋯)


「⋯⋯え、と⋯⋯その中に、煮沸しゃふつして貯めてる雨水を使ってね、陽の光で温めるのよ。で、丁度良い水温になったら、それで身体を洗いたいの」


 石鹸⋯⋯が欲しいところだが、あの草むしり後の青臭さ百二十%の草は嫌だ。


「沐浴は分かるが、なぜそんな手間をかける?蒸し風呂では不満なのか?」


 一郎が聞いてきたが、「生理なんで入れません」なんて、言えるわけないでしょ!


 しっかも、もし『セイリ⋯⋯?なんだそれは』なんて聞き返されたら⋯⋯なんて答えたら良いのよ!?


「⋯⋯この先、体調不良になる予定なので、しばらく蒸し風呂には入れません。そのための沐浴が必要なのよ!」


と、言ってみたが


「体調不良になる、とはどういう事だ?分かるなら、なぜなろうとする。防ぐことは出来ないのか?」


と、聞いて来た。あー!!うっとうしい!!


 苛ついてるところに、今度は二郎が台所を覗きに来た。


「なにやってんの?まさか、まぁた、タロタロが奇行に走ろうとしてんのか?」


 失礼なことを聞いてくる二郎をひと睨み。


「だぁれが奇行に⋯⋯」


「そのまさかだ」


「ちょっと!!」


 失礼な一郎へ振り向き、抗議の声を上げようとするも、


「タロタロが、体調不良になるのが分かっているのに、それになろうとしている。意味が分からん」


と、二郎に言うのだった。


「はあ〜?意味分かんね。おい、タロタロ何だお前、死にてぇのか?」


 二郎が怪訝けげんな顔して聞いて来た。


「なんでそうなるのよ!」


(生理だっつーの!言えないけど!)


 祖父が真似する昭和の往年ギャグ『なんで、そぉーなるの!』をかましたいところだが、そんな事をすればますますこの二人から、奇行に走るやべぇ奴、という目で見られかねない。なので、我慢した。


(ああ⋯⋯!“生理”の一言で解決できないかなぁ?言ってみようかなぁ?言ったらどうなるんだろう)


 言ってみた。


「生理が始まるのよ。体調不良になるけど、病気じゃないわ」


「体調不良になるけど病気じゃない、セイリ⋯⋯?」


 二人同時に同じ方向に首をかしげた。


「なんだ、体調不良になるが病気ではないセイリとは⋯⋯。体調不良ならば病気ではないのか?」


 両肩を掴んで、迫ってくる一郎。


(⋯⋯言うんじゃなかった)


「いや、いい、いい。忘れて。とにかく、あるのよ。そういうのが!!!」


 とりあえず、ゴリ押しすることにする。


「だから!わたしは!蒸し風呂じゃなくて、沐浴する!これ以上、しつこく聞いてくるなら!煮沸した雨水!もう一回(たぎ)らすわよ!!」


「⋯⋯」「⋯⋯」


 薪の無駄遣いを盾にしたら、二人は黙った。


 私の体調より、薪が大事なんかい。


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