タロタロ、発見する
相変わらず、木靴を掘り続ける毎日の私。
そして、なーんかお腹というか胃の辺りが痛いような⋯⋯。
(これ、そろそろ来るんじゃね)
⋯⋯アノ日が。
女子の日が。
苔サニタリーを試す日が。
ならば他にも準備せねばいけない事がある。
それは!!!
「一郎⋯⋯怪我して血が布に付いた場合、どうやって落としているの?」
“経血”なんて、言えるわけがない。
とりあえず、一郎に聞いてみた。ママだし。
ママは、台所で木靴用のナイフを研いでいた。⋯⋯その内、刃がなくならない?大丈夫?
「⋯⋯怪我したのか?どこだ?見せてみろ」
研ぐ手を止めて、桶に溜めた水で素早くナイフと手を洗うと、ズイッ、と近づいてきた。
「や、違う⋯⋯!方法だけ聞きたいんだけど!!」
(これ、聞き方間違えたら、生理の血を見られる羽目になるのでは!?)
生理前で良かった⋯⋯!
安堵したのもつかの間、一郎から両肩を抑えられ上から下まで視線が行き交う。
「怪我はしてないの!ただ、布に付いた血液の落とし方を知りたかっただけなの!!」
「⋯⋯怪我をしていない?ああ、なんだ。それならばいつも使っている灰汁でも良いし、少量なら唾でも良いぞ」
「つば!?」
(唾でも血って落ちるの!?)
知らない謎知識を教えられた衝撃。
『怪我しても唾つけてりゃ治る』というのはよく聞くが、
『怪我して汚れたら唾つけりゃ落ちる』という新たな情報が加わった。
(いや、でも、どんだけ唾吐くのよ)
汚れたパンツに唾を吐き続ける自分を想像したら、ヤサグレ感が半端ない。
大人しく灰汁のみで洗ってみることにしようと、心に決めた。
ちなみに、二郎にも聞いてみた。
コイツも警らに勤めているから血を流す日があるかもしれない。
しかもコイツは、胸元にレースブラなんてものも装備している。
もしかすると、誰よりも注意深く洗濯しているかもしれない。
「血が付いた時ぃ〜?」
「そうよ、あんたは何か洗濯方法とか落とす方法知らない?一郎は灰汁と唾って言ってたけど」
「灰汁と水が一番、楽でいいけど。付いてこいよ」
そう言うと、二郎はさっさと歩き出した。
二郎の後をついて行く。
部屋を抜け、廊下を歩き、そのまま外に出た。
「そこで待ってろ」と、一言言うと、草が生い茂る場所へと入っていく。
戻ってきたら、なんか手に持ってた。
葉っぱだった。
そのまま溜めていた雨水のところへと移動し、しゃがみこむと草を濡らして両手で揉み込んでいく⋯⋯⋯⋯出てきたのは、緑の泡!!
「泡!!?」
(⋯⋯って、石鹸!?石鹸になるのこれ!?)
「これでも、落ちるけどよぉ〜。白物には使えねぇんだよなぁ。シミになるからよぉ。使うならコイツの根とかだな。他にもあの辺に生えてるツタなんて煮出した汁なんかも使えるけど、やっぱ楽なのは、灰汁だな」
二郎の言葉が聞こえているような、いないような。
まさかの経血を落とす方法に、石鹸の代わりになる植物があるなんて知らなかった!!
「てか、泡出るやつがあるならそれで身体を洗えばいいじゃない。なんで鎌みたいなのと油で落としてるのよ」
私の言葉に、しゃがんで泡を出していた二郎が顔を上げて、こう言った。
「⋯⋯は?こんなんで洗ったところで、汚れが落ちたか分かんねぇじゃん」
衝撃の二郎からの返し。
(コイツ、目に見える垢しか信じないのかよ)
と、日本でアカスリグッズを買って垢を落としていた事を棚に上げて、私は二郎を睨んだ。
「タロタロ、水かけて〜」という二郎の両手に水をかけてやる。
ぺっぺっ、と水気を払う二郎の両手を掴んで、自分の鼻に近付けるとクンクン、とニオイを嗅いでみた。
「⋯⋯なるほど」
「⋯⋯なにが、なるほどなんだよ。人の手、勝手ににおってんじゃねぇよ」
二郎の抗議を無視して、私は一つの結論を出した。
めちゃくちゃ、草むしりした後の手のニオイだった。
(これなら垢すりの香油のほうが良いかな。うん)




