木靴の親方、胸キュンする
木靴の中身を掘り掘り。
そう何回も、底に穴を空けて失敗するわけにもいかないので、慎重にやっていたらコツを掴んじゃった。
薄すぎて割れないように。
割れたら底抜け逆シークレット木靴になってしまうので、笑い事ではない。
「ふむ、やはりタロタロは見込みがあるな」
作業中に帰宅してきた一郎から、そう声を掛けられる。
見ると、中掘りを終えて並べていた木靴の一つを掴んで、マジマジと見つめていた。
口元には笑み。
「ふ、まあね。私もやる時は、やる女なのよ」
(なんてたって、肉がかかってるんだから)
フッ!
余裕な笑みを作って、中身の削りカスを飛ばすように、一息に木靴に吹きかけた。
「ブッ!ぺっ!ぺっ!ぺっ!」
出口のない削りカスが逆流し、全部顔にかかった。
「なにをしているのだ。⋯⋯タロタロ、目蓋を開けてはいけない。削りカスが入ってしまう」
そっ、と一郎の指で私の顎が持ち上げられる。
「⋯⋯え?」
(こ、これって⋯⋯)
金髪碧眼、超絶美形兄、まさかまさか――
(ここに来て、胸キュン展開か――――!?)
ぺしっ!ぱしっ!ぺしっ!
「いた!あた!⋯⋯ちょっ、」
なにかで顔を叩かれてる!?
「なにす⋯⋯っ」
「口を開けてはいけない⋯⋯もう少しか」
顎を持ち上げる手が離れたと思ったら――
パサッ。――――バサッ!バサッ!
(いや、顔が)
顔を逸らそうとすると、多分、一郎の指で顎を固定された。
顔になんかあたってるんですが!!!なんなの!?
バシッ、バシッ、と顔を布のようなもので叩かれて、
「こんなところか」
と、最後は指の腹でぺぺっ、と顔を払われた。
「よし。タロタロ、目蓋を開けても問題ない」
苛立ちながらまぶたを持ち上げると、外したフリルエプロンを肩にかけた一郎が、微笑みながら私を見ていた。
「君、もしや、私の顔それで叩いた?」
「うむ、いかにも?叩かなければ、削りカスが目に入り、最悪、一生使い物にならなくなるからな。目は大事にせねば」
何言われても文句言おうとかまえていたら、怖いことを言われて、寸でで止めた。
「なにやってんだよ、二人とも」
二郎も帰宅したのか、一郎を半眼で睨んでいたら声がかかった。
一郎が振り向くと、
「タロタロの顔に、削りカスの粉がかかったのでな。叩き落としていたところだ」
「ふぅん」
二郎は、兄の答えに返事をしながら私の顎を持ち上げると、顔を寄せた。
金髪翠眼の超絶美形。しかし、私は騙されない。
(今度はそのシャツから覗くレースブラで、私の顔を叩くんじゃないでしょうねぇ)
いつ外すんだよ、と警戒でシャツ越しのレースブラを注視していたら、親指の腹で、私の頬や目元をそっ、と撫でると
「うん、ざらついてねぇな」
と、言われて至近距離で、ニコリと微笑まれた。
(――――ちょ、)
超絶美形の笑顔の破壊力。
二郎の不意打ちに、頬が熱くなるのを感じた。
思いもよらなかった少女漫画的な展開、止めてくれません!?




