危険な称号核
マヌルヌヌ達から離れたソラは、走りながらガイアルフを呼んだ。
「慌ててど~したよ?」すぐに現れた。
「とりあえずボクの部屋に!」連れて術移!
――「あれ? 響が居ない……それより!――」
「だから落ち着けって」座った。
「――あ、はい」向かいに座った。
「2つなんです。
人世が騒がしいような気がするので確かめたいのと、ドラグーナ様に会いたいんです」
「人世のは心配しなくていい。
楽しく騒いでいるだけだからな。
だが相棒には会わせてやろう。
ドラグーナへの近道でもあるからな」
「ガイアルフ様はマヌルヌヌ様が作った称号についてご存知でしたか?」
「獣神王か?」
「はい! 昨日、復興作業しながら彩桜に聞いてみたんです。
なんだかマヌルヌヌ様を避けてるような気がしてたから。
そしたら称号が危険だから捕まりたくないとかって……」
「ふむ……確かに俺達も危険な気を感じてたよ。
あの称号を付けられちまったら、玉座と婆様から離れられなくなりそうだとな。
ついでにドラグーナがドラグーナじゃなくなりそうなヤバさも感じてたよ」
「やっぱり……だから彩桜もお兄さん達も近寄らなかったんだ……」
「あの婆様、年甲斐もなくドラグーナに恋い焦がれてそうだな♪」
「それなんですけど……ドラグーナ様より若いみたいです」
「ゲ……つまり若さやらと引き換えの称号か?」
「みたいです」
「そりゃあ俺達が感じた通りになりそうだな。
最悪、変貌したドラグーナが次の魔になる。
危険極まりないヤバ称号だな」
「それを神力に戻してマヌルヌヌ様に込めるってバステト様が。
あっ、バステト様がマヌルヌヌ様達の母神様なんです」
「マジか!?」
「はい。さっき、それでマヌルヌヌ様を叱って。
だから称号が消えるのをドラグーナ様にも彩桜達にも見せたくて」
「そうか。ならば急ごう」
「ありがとうございます!」
――【あ♪ ソラ兄、空マーズねっ♪ 乗って~♪】
【うん……】姿を消していたが空マーズに。
ガイアルフはソラの中に入って大笑い中。
【で、何してるの?】
【ヘンゲ龍に乗りたいて大騒ぎ♪
だから飛んでるの~♪
俺、ガイドしてるの~♪
一緒に居るのラナン様とソニア様なの~♪】
桜色のヘンゲ龍は超ゴキゲンだ。
後ろを向くと橙龍神達も楽しそうだった。
【そもそもどうして? それに龍神様達いいの?】
【んとねぇ、海外マーズタウン辺鄙ばっかりなの。
だから観光地 近くまでヘンゲ龍で運ぶてなったの。
そしたら現地のヒト大騒ぎ♪
で、こぉなったみたい~♪】
【そっか。じゃあホントに心配いらないんだね?】
【いらにゃ~い♪】
【もう1つ。ドラグーナ様とお兄さん達を集めてもらいたいんだ】
【ドラグーナ様もヒト乗せて飛んでるし、兄貴達マーズしてるよ?
姉ちゃん達に乗ってガイドさん♪
俺、ランと一緒に飛んでたの~♪
ラン今、飛鳥とユーロン迎えに行ってるの~♪】
【でも急ぎなんだ。
マヌルヌヌ様が作った称号、バステト様が神力に戻してマヌルヌヌ様に込めるんだよ。
見届けない?
ドラグーナ様も安心できると思うんだ】
【そぉだね~……伝えたからねっ♪
あ♪ ドラグーナ様~♪】
【ちょうど降ろしたところだったんだ。
どうかしたの?】
黄金ピカピカ龍の登場で後ろの人達が大喜びだ。
【マヌルの里 行こ~♪
あの称号、消えるトコ見よ~♪】
【消えるの!? ……本当に?】
【本当です♪】【だから行こ~♪】
【おいドラグーナ、兄弟と妻達も一緒に行くぞ】
【そうしないといけませんね♪】
【俺はフィアラグーナも呼んだからな♪】
【あ♪ ランも行こ~♪ 飛鳥、飛行経路♪】
チビッ子マーズ羽龍を乗せているサファーナと握手して流した。
【ちょっと用事だからお願いねっ♪】【はい♪】
「「先導、交代しま~す♪」」
―◦―
どうにか他の神マーズ達と交代できた輝竜兄弟と妻達がマヌルの里に揃った。
バステトは待ってくれており、マヌルヌヌが逃げないように捕まえていた。
カウベルルとタイガルルは苦笑していた。
さあ始めようという時、アヌビス ハトフル ラーが手伝いに来た。
「大きな神力が必要だから助かるわ♪
ですが最も大きな神力をお持ちのドラグーナ様は離れてくださいね。
もしも、が起こってしまったら大変ですから」
しゅんとして縮こまっているマヌルヌヌを囲んでの詠唱が始まった。
すぐにマヌルヌヌの顔の前に称号光球が浮かぶ。
【おっきいねぇ】【それに内側が蠢いているよ】
【【コワ……】】【確かに恐ろし気だな】【む】
【ですがほら、輝きと透明感が増しています♪】
光球が解けていき、煌めく光点達がマヌルヌヌの額に吸い込まれていく。
【キレイなってくね~♪ あっ!】
光球が消えて無くなるかという時、唐突に弾け散り、称号核らしい小さな塊が飛び出して探っている様子で留まった後、ドラグーナに狙いを定めて動き始めた。
【ドラグーナ様を守れ!】複数の声が響く。
と同時に誰かが吠えた。
吠え声に驚いて振り向く【えええっ!?】大勢。
術は続いている。
マヌルヌヌとドラグーナの真ん中に白い虎神が倒れていた。
【【ディルム!】】【触れないで!!】
駆け寄ろうとしたマリュースとカツェリスが立ち止まり、制止したドラグーナを見た。
【ドラグーナ、これは? 何してるんだ?】
【うん、説明するけどね。
術が終わるのを待ってもらえる?】
長かった詠唱が終わり、マヌルヌヌを包んでいた光が収束すると――
【うわわ。子猫なっちゃったぁ】
――マヌルヌヌは若返り、、過ぎていた。
どうやら、これまでずっと称号に想いと神力を込め続けていたらしい。
「過ぎる事をすれば、そうなって当然です。
ですが、やり直す機会を得たとも言えます。
今度こそは道を過たずに、この里を守りなさいね」
「はい、お母様。あの、、」チラリ、チラリ。
「ドラグーナ様でしたら、あちらに。
お友達にとお願いしてごらんなさいな」
「いえ、その……あの方は?」
「ヌヌが あんな仕掛けを込めていたなんて思いもよらなかったわ。
ドラグーナ様をお守りしようと、飛び出した称号核を飲み込んだのではないかしら?」
皆の心配そうな視線がディルムに集まる。
「ん?」ムクリ。キョロキョロ。
「あ♪ チョー可愛い子猫ちゃん♡」「きゃっ♡」
バッと跳んで抱き締めっ! 頬すりすり♡
「可愛いお嬢さん、私と生涯を共にしていただけませんか?」
「はい、喜んで♡」
嬉し恥ずかしで互いを毛繕いし始めた。
「うわ……」マリュースが頭を抱えた。
「ヌヌ……」バステトも。
「ですが、お師匠様、あなた。
私は気が合いそうだと思ってディルムを連れて来たの。
一緒に修行していた頃のヌヌ様をよく知っているから。
きっかけは術途中の何かを食べたせいかもだけど、よく見て? 幸せそうよ♪」
「て? カツェリスいったい何歳なんだ?
婆様と修行って……」
「ですからヌヌ様はお若いの!
確かにお姉様だったけれど。
マヌルディア様に弟子入りなさって、欠片を沢山いただいていたのまでは知っていたの。
暫くして会ったら……だから口止めされていたのよ」
「そっか。
で、さっきのは?」今度はドラグーナに。
「うん。説明するからね」「我はディルム!」
皆の視線がディルムとヌヌに集まる。
「獣神王ディルムだ! 王妃よ、共に玉座に♡」
嬉しさいっぱいだが恥ずかし気に頷いたヌヌを片手で抱いて壇上へと跳んだ。
そして玉座の前で白い虎が仁王立ち。
「ここに我は宣言す――」ドサッ。
「ったく~」後ろにマリュース。
「変な称号、取っ払おうぜ」やれやれだ。
大神達と輝竜兄弟が頭を寄せ合い、苦心惨憺して、称号の『獣神王』部分だけを気絶しているディルムとヌヌから摘出した。
「まさかディルムに入った称号核がヌヌ様にも伝染っていたなんて……」
「さっきの毛繕い? 鼻ツン?」「後者かな?」
「流石、マヌルの里長が想いを込めまくって成した称号核だな」
「ドラグーナ様に入らなくてよかったぁ」
「確かにな」大勢。
「そろそろ起こしましょう」
バステトが見回した。
「じゃあ~「反転治癒眠」♪」
「……ん?」ガバッ!「俺の嫁!! 居た~♡」
目を開けたばかりなヌヌを抱き締めっ♡
「ヌ~ヌ♡」「ディルム様……」ぽ♡
「大好きだ♡」
「私も……♡」
「父様母様♪ 結婚の絆を早く♪」
やっと両親が見えたらしい。
「獣神王はナシだぞ?」マリュース睨む。
「へ? 獣神王はドラグーナ様でしょ?
それより! やっと俺にも愛しの子猫ちゃんが見つかったんですから早く♪」
「その前に神力差を確かめないとな」
「神力差?
ヌヌちゃんは強いから大丈夫ですって♪」
「お前が吸収されそーなんだよっ!」
「へ? いや俺、月で頑張ったんですからぁ」
「確かめさせろ!
イーガスタ様みたくなったらどーすんだよ!」
「ソレ誰です?」「イーリスタ様の爺ちゃん♪」
「彩桜、当たりだ。
俺も見たんじゃなく、結婚する時に親父様から聞いたんだがな。
イーガスタ様の結婚は無理矢理だったそうだ。
長老が孔雀神から欠片を貰って生んだ美神サリーニア様は、美しさは際立っていたが修行は全くだった。
蝶よ花よと大切に大切に育てたんだ。
当然イーガスタ様は長老に説明した。
けどな、長老は断りたいが為だけの偽りだと、全く信じずにイーガスタ様に縄を掛けて強引に絆を結んだんだ。
結果、サリーニア様は絆に吸収されちまった。
キレイなキレイな愛娘は消えちまったんだ」
皆、驚きで言葉を失っていた。
「だから見させろ。
結婚すりゃあいい。反対なんかするもんか。
バランス悪かったら一緒に修行して高めてもらいやがれ」
「はいっ!」
ジーーーーーッ! ヌヌの方をチラリ。
「ん~~~~ダメだ。
まだまだムリだな」「えーーーーーーっ!!」
「ヤカマシイ!! 修行不足は自業自得だっ!」
「んな大声でっ! フラれたらどーすんだっ!」
取っ組み合いの親子大喧嘩が始まった。
ゴロゴロバタバタ転がりながら離れて行く。
「あの……ドラグーナ様……」
「はい?」若干、後退る。
「もう称号はありませんし、友にとも申しません。
私……ディルム様が良いのです。
思い詰め易い私には、底抜けに明るい方が必要なのです。
ドラグーナ様にお願いできるような私ではありませんが、これはドラグーナ様でなければならないのです。
どうか どうか、お助けくださいませ」
「つまり俺にもディルムの親になれと?
基底の高い龍が親になれば足りると――確かに足りるかもしれませんね。
マリュースと話してみますよ」
『ならば儂も加わってやろう』『僕も~♪』
同代皆に先を越されたと落ち込んでいたディルムですが、本来の能天気さを全開発揮しているようです。
それにしても核だけでも恐ろしい称号ですよね。
その効果で結婚を望んでいるとしたら大丈夫なんでしょうか?




