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弱禍にはマーズの音楽



「これ以上は行かさへんからな!」

行く手に立ち塞がる不良達が鋭く睨む。


「そんなら向こうや!」

脱走犯達は雄叫びを上げながら方向を変える。



 それを彼方此方(あちらこちら)で何度も繰り返していた。

見るからに不良(ワル)な格好をしている若者達は、輝竜家で過ごして改心した元ワル達をリーダーとしている同志達で、地元に帰った元ワルと友達になった者や、通い始めた学校の若い体育教師や、我こそはと参じた体力自慢達だった。



 そして――

「建物や!」「浪花ドームやないか!」

――最悪でも強い陽射しだけは(さえぎ)れるだろうと、合流して大きな流れ(むれ)になった浪花の脱走犯(ヒツジ)達は、元ワル達(ボーダーコリー)に誘導されたとは気付かずに複製ドームに雪崩れ込んだ。



「出入口封鎖!!」

集結した元ワル達がドームを囲み、一斉に扉を閉めて大きな忍法護符を横一文字に貼り付けた。


全て貼り終えると空に巨大タープが広がり、爽やかな風が吹き抜けた。

クーラーボックスも各扉前に現れた。

そして扉にはモニターも。

「このまま見張るんや!」


気合いの入った返事をして座り、マーズの演奏が きっと始まると楽しみに待つ若者達だった。



―◦―



 浪花ドームだけでなく他のドームでも、各地のスタジアムやアリーナホールでも、同様に元ワル達を主格とする若者達の誘導で、大規模集団化した反マーズ派が集められていた。


マーズが回収した小規模の集団も、同じ『映像ライブ会場』に集められているのだった。



 反マーズ派への特効薬はマーズの音楽だと、この方法を考え出し、食事を運んで来た黒マーズに話して全国に広めてもらった祐斗と凌央は、声が大きい堅太を連れて指示を飛ばしながら最終目的地の陸上競技場に向かっていた。

「渡音商バスケ部 兄さん達ーーっ!!」


公園で待機していた高校生達が道に出た。


「もうすぐ先頭が見えます!

 脇道を塞いでください!」


 宅地は踏み荒らされないように囲んでいるものの更地ばかりなので遠くまでよく見える。

向かって来ている暴徒達は遥か向こうだが、肥大弱禍に動かされているので足は速い。


その暴走達は建物やらが見えると向かってしまうので、誘導班が両側から迫ったり、脇道を塞いだりして真っ直ぐ陸上競技場に向かわせている。


 ここまでで、散らばって個々や小集団になった反マーズ派を陸上競技場への道に集めてきたのはヤマト隊とオロチ隊で、運動能力の高い心太はヤマト隊に、鹿羽兄弟はオロチ隊に居る。

ゴールが近くなった今では、後ろから追い立て中だ。


自衛団の中学生達は情報収集をしていて、そろそろ輝竜家の土地に戻った頃だろう。

その基地には凌央だけが残り、集まった情報を基に指示を出していたのだった。

何処の地でも、こういった役割分担はスムーズに行われていた。



 先頭の表情が見えるようになると、手前の班が動くのが見えた。

「ここは任せろ!」「「「はい!」」」

大型犬に乗っている祐斗達は駆け抜けた。

「次! 萱末バスケ部 兄さん達ーーっ!!」



―・―*―・―



 邦和国内の大騒ぎを知らない(あらた)総理は大統領の要求に唸るばかりだった。


「それなら少し休憩しよう。

 君、テレビを点けてくれるかね」

それまでの厳しい口調は何処へやら。

大統領は楽し気に秘書官を呼ぶと、(みちびき)(あらた)には笑顔が見えないように背を向けて、テレビに集中した。



「あれは有名な……」

「レポーターの見田井君だね」



『世界中からの声をお聞きください!

 全て邦和人! 世界各国のマーズタウンに避難している邦和の人々の声です!』


マイクに向かって声を張る見田井の後ろには沢山のモニターがあり、どのモニターからも重なり大きくなった『マーズ!』の声が繰り返されていた。


『マーズ! 聞こえていますかマーズ!

 せめて姿だけでも見せてください!』



「どうして邦和の放送が?」

「衛星中継のマークと英語の字幕が出ているだろ」



 波のうねりのようになっていたマーズコールが更に大きくなった。


見田井の姿が小さくなり、モニター周りに見えるようになった白い壁が撤収されると、その引きの画面いっぱいにモニターが増えた。


画面左上のモニターがクローズアップされる。

そこから右へと動いていくと様々な国の人々がマーズコールしているのが映し出された。


そうして全てのモニターを嘗め終えると、一際大きい『マーズ!』の声にエコー。


暗転――『マーズ参上!』――歓声爆発!


音が弾け、画面が明るくなると忍者達が揃っていた。

演奏は止めないが深々と礼。

暫く留まってからパフォーマー達が動き始めた。


メーアが悠々とセンターへ。

『前言撤回だ!

 マーズが邦和に戻ったんなら俺達フリューゲルも邦和に行く!

 ドームツアーも予定通りだ!』

イントロ中に宣言して歌い始めた。



「外国人歌手が和語を流暢に……」


「メーア=ドンナーの曾祖母は邦和人だよ。

 でも彼がそれを知ったのは今年の正月。

 マーズと友達になったのも同じだよ。

 それから和語を覚えたんだ。

 新君も他の国の言葉を学んでみては?

 それと、もっと世の中の事を知るべきだよ。

 その認識度合いなら、あんなのでマーズを倒せると考えたのも納得だけどね」


すっかり肩の荷が下りてスッキリな(みちびき)の言葉は穏やかだったが、(あらた)にはブスリブスリと刺さっていた。



―・―*―・―



 世界的に大ヒット中の2曲を続けた後、後方で演奏していた金 銀マーズをメーアが引っ張り出した。

『今は寡黙を徹してる場合じゃないよな?』


『確かに。

 多くの皆様からご声援を頂けた事、求めて頂けた事に心よりの感謝を申し上げます』

マーズ揃って深々と礼。


『金らしいよなぁ。

 銀は? 同じ事なんか言うなよ』


『他に何言えってぇ? ったく。

 さっきメーアは俺達マーズが邦和に戻ったと言ったが、メーアが俺達を呼んでいた場所が たまたま東京のスタジオだったってだけだ。

 東邦テレビだったから邦和にも流れてるってだけだ。

 6割の邦和人が邦和に居られない今、蝦夷と琉球が独立しようとしている今、俺達も邦和に戻ったとは宣言できない。

 避難した皆が、独立しようとしている皆が、邦和で良かったと安心して暮らせるようになって初めて俺達マーズも忍ノ里を元の場所に戻して邦和復帰を宣言する。

 だから……マーズは次のスタジオに移動だ。

 メーア、此処はセットチェンジだぞ』


『必ず戻って来いよ』


『おう。今日は邦和を除く世界中が復興を終えた祝いの音楽祭りだからなっ♪』

マーズは楽器ごと一斉に忍者移動した。


『よーし見田井! 此処と隣を準備しろ!

 マーズも俺も体力無限大だからな♪

 音楽を届け続けるぞ!』



―◦―



 マーズが移動したのは『いつものスタジオ』。

そこにはユーレイ探偵団がスタンバっていた。

この放送はジャックではないのでカメラマン達も他のスタッフ達も意気揚々と待ち構えていた。


『押し付けて去って悪かったな。

 一緒にやろーぜ♪』『はいっ♪』


『今のユーレイ探偵団はインストバンドだ。

 だから俺達もバックバンドだなっ♪』

『ボーカルは邦和の歌手の皆様です!』


この間に青マーズから曲情報とセットリストが一気に流れてきていた。

それを整理し、控室に神眼を向けると

【こんなにも大勢……】

邦和では名の知れた歌手達が待ち構えていた。



 1曲目のイントロが始まる。演歌だ。

【金錦兄が歌ってもいいんだぞ♪】


【それは……】勘弁してほしい。


【だから声かけて集まってもらったんだ♪

 運んでくれたのは神マーズだけどな♪】


【ありがとう黒瑯】【おう♪】



―◦―



 各『映像ライブ会場』では、収容予定人数の3倍の弁当入り水晶玉を用意していたにも拘わらず、激しい争奪戦が起こっていた。


それは長く続いていたが、空腹に耐えきれなくなったのか、1玉でいいと1人抜け2人抜けとしていき、騒ぎから離れて弁当を取り出す者が増えていった。


食べ始めて ようやく、数ヶ所に設置されている巨大スクリーンに目が向いた。

流れてきている音楽が耳に届いた。


「あれがマーズか……」


誰かが呟いた。



―◦―



【兄貴達~♪

 次の曲終わりで此処セットチェンジねっ♪

 だから俺達、漢中国に移動ねっ♪】


【ンな準備、いつしてたんだよっ!】


【白久兄タクシーで海渡ってた頃~♪

 黒瑯兄とメーアとガネーちゃ師匠が動いてたの~♪】

その黒瑯は白久の様子に大笑い中。


【もしかして世界中に行くのかぁ?】


【当ったり~♪ 白久兄ムリ? お歳だから?】


【誰がンなコト言ったよ!!

 エンドレスでも無問題だっ!!】


【外国ぜ~んぶ野外なの~♪

 お客さん入ってるの~♪

 満員御礼なの~♪】

曲が終わり、余韻の中で礼。


【ユーレイ探偵団も行くの~♪ せ~のっ♪】

楽器ごと、すっかり消えた。

実は一瞬だけ早かった彩桜を皆が追ったのだが。



―◦―



 その国での放送は局からのダイレクトなものに切り替わるが、他は東邦テレビからの衛星中継のままだ。


見田井とメーアが並んでいる場所はモニターが並ぶセットに戻っており、その中の1つがクローズアップされて人々が左右に()けると、マーズとユーレイ探偵団が居るステージが見えた。


ステージが画面いっぱいになる。

『漢中国の馬頭街(マーズタウン)会場で~す♪

 出演歌手、最初の方は――』



【あれ? ソラどこ?】


【少し離れたけど心配しないで。

 お兄が疲れたみたいなんだ】


【また お兄なのね~】


【だから響がドラムしてくれる?

 偽装分身お兄は電源オフな電子楽器にしたいから】


【ん♪】ドラムも楽しいのよね♪



―・―*―・―



 ソラはカケルを連れてキツネの里に来ていた。

つまりステージに居るシード(ソラ)ロンサ(サーロン)カルケ(カケル)は分身で、彩桜と狐儀のものだった。

だから何も問題は無かったのだが、響もドラムを叩きたいだろうと交代を頼んだのだった。


月華(ユエファ)様、星華(シンファ)様!

 お兄をお願いします! 様子が変なんです!】


すぐに狐の女神達が現れた。

【これは……覚醒?】

【そうかも。悪い感じは無いわ】


【トリノクス様は月ですので、お願いします!】


【演奏中ですものね。【任せてね♪】】

【あれ? ソラお兄ちゃん?】


【え? どうして紗ちゃん?】


【サクラに治癒を頼まれてたの。

 向こうの部屋の人達】


【あ、リハビリ中の?】


【うん】【【行っていいわよ♪】】【うん♪】


【行こう♪ ユーレイ探偵団のマーヤちゃん♪】


【うんっ♪】

ソラと同じ衣装にして神笛フルートを手に、ソラと一緒に彩桜へと術移した。



――【えええっ!? ラン、治癒は!?】

ちょうど彩桜(ラクサ)もフルートを吹いていた。


【行っていいって♪

 ユーレイ探偵団のマーヤよ♪】

並んで吹き始める。


【うんっ♪ 一緒ねっ♪】【ねっ♪】







凌央と祐斗も真っ黒オバケが犯人だと考えて作戦を練りました。


マーズはリーダーとして忙しかった金錦と、新総理を監視していた白久を除いて、この音楽祭りに向けて動いていたようです。

青生と彩桜も別行動でしたが察知して加わったんです。

だからこそキツネの里でリハビリ中の人達への治癒を紗に頼んでいたんです。

それなのに来たのには驚いた彩桜でしたが、一緒は嬉しいので狐神の皆様にお任せしようと陽の気に集中しました。



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