月も邦和も大騒ぎ
マヌルの里でも暫くはカーリと一緒に居た彩桜は、今、夕焼けが美しいカリーナ火山の火口湖に来ていた。
【彩桜、早いね】到着。
【わくわくなの~♪ 島の集いは?】
【残れる方々は瞑想しているよ。
でも職域は朝だからね、お仕事に向かわれたよ】
【じゃあ邦和も朝だね♪】
【そうだね。
どうなったのかは見ていないけどね】
【俺も~。瑠璃姉どしたの? 静かだけど~】
【いつも騒いでいるように言うな】フン。
【緊張しているのかな? ルリ様と話したい?】
【それは確かにな。
黙っていたのは、二人が話しているのを邪魔したくなかっただけだ】
フイッと外方向いた。
その時、
「「彩桜~♪ 俺達 来た~♪」」湖上に現れた。
「あ♪ 俺も来たの~♪」手を振り合う。
「火星に行かない?」「火星の地下♪」
「行く!♪」
「アオ兄とルリ姉は すぐに来るから「待っててね♪」」
「どして別々?」
「「月に寄ったから♪」乗って~♪」「行こ~♪」
「うんっ♪」
彩桜を乗せたサクラ達が消えると、アオ達が現れた。
「絶妙タイミングですね♪」
「「そう?」サクラは火星かな?」
「なら、戻る迄は各々で話す?」
「そうしましょう。
瑠璃も相談があるみたいだし」
「それなら俺達が離れる?」「そうしよう」
と、青生を乗せて消えた。
「瑠璃、どうかしたのか?」
「青生に絡む心配事か?」
「それもありますが、先に兄に関してなのです。
私は再誕なのですが、前生のラピスラズリ兄様の意思も別神格として残っているのです。
その兄との分離が出来ないかと。
青生と彩桜の魂材神様の分離が容易そうに見えましたので」
「「ふむ。見させてもらおう」」
「お願い致します」目を閉じて神力を基底にした。
静かに待っていると緊張が解けたように思えたので目を開けた。
「兄様……?」
目の前に瑠璃色の光球が浮かんでいた。
「確かに瑠璃の兄だが、僅かしか存在しなかった」
「今は眠っている。保護は得意なのだろう?」
「はいっ、ありがとうございます!」
ラピスラズリを保護珠へ。
「想い神と再会が叶ったと喜んでいた」
「だが、その想い神も僅かな魂片だと悲し気でもあった」
「だから一度は支え合う形で融合させ」
「人としての再誕を経て、改めて分け」
「個々に神としての再誕をすべきだと思う」
「人として……そして神に……」
「地星の生物は全て物生体だが、神世生物と人世生物は異なる物生体だ」
「故に、その経路が最善だと考える」
「青生と瑠璃の子として育てては如何か?」
「暫くは合わせた魂を瑠璃の魂内で保護せねばならぬだろうがな」
「はい! そうさせて頂きます!
あの……こういう分離は異界では普通の事なのですか?」
「私達は医師だ。アオもサクラもな」
「長く旅をし、多くの生命体を見てきた」
「診てもきた。
だからこそ魂をよく知るに至った。
「それだけだ」」
―・―*―・―
青生を連れたアオ達は月に来ていた。
ドラグーナ達が地星がよく見える表側に居るので裏側に。
【【青生も何か悩み事?】】
【獣神秘話法をご存知だったんですか?】
【【いろいろと学習しただけだよ♪】】
【この数日で?】
【随分と旅をしてきたからね】
【パターンもあるから習得も早くなったんだよ】
【青生だって尾に知識を蓄えているだろ?】
【それに近い感じで覚えるんだよ】
【それなら理解できます♪】
【青生と話すのに月を選んだのは、俺達が闇禍を誘き寄せられると思ったからなんだ】
【青生も含めての俺達だよ♪】
【ドラグーナ様もね♪】【そうだね♪】
【ドラグーナ様なら分かりますけど……】
【青生もドラグーナ様も青身神だよ♪
【勘だけどね♪】】
【ドラグーナ様は金色ですよ?】
【青くも出来るよね?】
【囮をするのなら青くした方がいいよ】
【伝えます!】話し中。【伝えました♪】
【【それで悩みは?】】
【悩み、と言うか、聞いてみたかったんです。
お子さんは? 何人いらっしゃいます?
俺と瑠璃は これからなので】
【【7人だよ♪】】
【平均的な天竜は、産卵が生涯一度だけ】
【産卵数が2~4個で孵化率は8割】
【俺達兄弟の7個全て孵化はワケアリ】
【俺達の子供達もワケアリなんだ】
【【だから青生もワケアリ子沢山になるよ♪】】
【でもね、経緯が何であれ】
【子供は皆【可愛いよ♪】】
【そうですか。安心しました。
オーケストラを作りたいので頑張って育てます♪】
―・―*―・―
【ほらほら地下海~♪】【火星ヒトデ~♪】
【ちっちゃヒトデい~っぱいだ~♪】
サクラ達は火星の空を散歩した後、入った地下海中を飛んでいた。
小さな小さなヒトデ達は水中を浮遊している。
淡い色も形も、神世の雲海星そっくりだった。
【クラゲかもだけどね~♪】
【ヒトデでいいと思うんだ♪】
【うんうんヒトデ~♪ あ♪ 光~♪】
【【外からの光だよ♪】】
【そっか~♪ サクラ達もヒトデ好き?】
【【だ~い好き♪】】
そこからサクラ達がヒトデと出会った島の話になった。
―・―*―・―
(予定の器よりも強い力が集まっている)
(先に行くか?)(行くべきだろう)
(全てが行かずとも――)
(確かめてから予定に向かっても遅くはあるまい?)
(――確かにな)
地星に向かっていた闇禍の群は、地星の寸前で月へと進路を変えた。
―◦―
【来たみたいだね】【青生は一緒に戦ってね】
【アオ王子は?】
【【こっそり加勢するよ♪】】
この楽し気な感じはドラグーナに似ていると思いつつ、青生は表側へと術移した。
―・―*―・―
【来たようだな】【行くぞ】
ルリ達も瑠璃を連れて月へ。
―・―*―・―
空に戻って飛びながら、ヒトデの話から寝言の話になっていたサクラ達が地星の方を向いた。
【闇禍?】彩桜も向く。
【【誘き寄せてたんだよね?】】
【そぉみたい~。行きたいにゃ~ん】
【【行こっ♪】】
――【闇禍い~っぱい♪】
【喜んでいる場合かっ!】大多数。
【昇華闇障暗黒、激天大闇呼吸着♪】まずは普通に♪
【昇華光明煌輝、滅禍浄破邪封乱悪牢】
【青生兄ありがと♪ アオ王子は?】
【加勢するって少し離れたよ。また来ているね】
【あらら~、また来たねぇ。激天々超特大化!】
【あ、瑠璃達は向こうに居るよ】
【じゃあ~封神力雷刃滅禍浄破邪万華掌い~っぱい!】
瑠璃達の方にビシバシ蕾を連射した。
【あれれ? サクラ達は?】神眼キョロキョロ。
【アオ王子の方じゃないかな?】
【ん~~~、うわわ。アッチで闇禍 集めてる!】
【思っていた以上に集まったんだね】
【これから何度も来るのかにゃ~ん】
【それを阻止するんだよ。無駄だと示してね】
【そっか~♪
ね、この数て反マーズ派ぜ~んぶに憑くつもり?】
【そうみたいだね。
カケル君だけではなかったんだね】
―・―*―・―
そんな戦いなんて全く知らない朝の邦和では、紙を渡された反マーズ派が大騒ぎしていた。
その余波は、結局カプセルホテルで一夜を明かした新総理にも及んだ。
強引に目を覚まさせたスマホを忌々し気に取ると、騒がしいノイズと共に
『何処にいらしたのですか!?』
襲い掛かった怒声が耳をキーンとさせた。
「迎えにも来なかったではないか!!」
同派閥の若手だろうと負けじと叫ぶ。
『そのような事、私は存じませんが!?
それよりも位置情報を! 早く!』
「どうすればよいのだっ!」
こんな有り様なので翻訳アプリも使えず、国際問題も大嵐状態なのだが。
『ああもうっ!! 場所は!?』
「カプセルホテルなのだが……」
何かホテル名を書いている物はないかと探る。
『もういいです!
御大様の別荘にお願いしますね!
大至急ですよ!!』一方的に切れた。
「何だと言うのだ?
御大様の別荘……煌麗山湖畔ではないか!
昨日の運転手の名刺は……あった!」
今となっては誰よりも信頼できると思えるタクシードライバーに電話した。
『はい、龍神タクシーの馬頭です』
「昨日のカプセルホテルに迎えに来てもらいたいのだが?」
『20分程お待ち頂けますか?』
「その間に準備する。頼む」
『はい、では20分後に』
そして20分後。
新総理がホテルから出ると、ピッタリにタクシーが到着した。
「煌麗山湖に向かってくれ」
「遠いですよ? 此処、上総ですから」
「は?」
「都内のホテルやらは全て記者が張っていたでしょう?
ですから離れますよと言いましたよね?」
「確かに。しかし行かねばならぬのだ。
急いでくれるか?」
「では向かいます。
派閥のドン、5代前の元総理の別荘ですね?」
「何故それを?」
「簡単な推理ですよ。
あ、そのバスケット、サンドイッチが入ってますので。どうぞ」
「これは……」
「必要かと思いまして用意したんですよ。
味は確かだと思いますよ」
笑顔の運転手は前を向いて車を出した。
邦和には富士山のような山が2つ並んでいます。
西側が竜ヶ峰、東側が煌麗山です。
どちらも高くて美しい山で、麓には森と湖と別荘地があります。
年末に騒いだのは竜ヶ峰の七連湖畔の別荘でしたが、今回は煌麗山湖の方です。
もっと大騒ぎな月の方は……ま、無問題ですよね♪




