草そよぐ島で
彩桜とサーロンは広い雲海で唯一の草そよぐ島に来ていた。
楽しそうな彩桜は自分の周りに大量の保護珠を浮かせた。
【雲海の生物さん達♪
下空の雲地で保護されてたから増やしたの~♪
放流なの~♪】
【だから浅瀬? でも陸地の沿岸は?】
【コッチで増やしてから♪】
【そういう事ね♪】
【おいおい。恵みを与えてからにしろよな】
【【ん?】】振り返ると死神爺様。
【理俱師匠ナニしてるの?
みんな生きてるから連れてっちゃダメだよ?】
【死神しに来たんじゃねーよ!
俺達の憩いの修行場に来ただけだっ!
職域が急遽 全引っ越しになって片付けやらで忙しかったんだからなっ】
【俺達て? 全引っ越し?】て、どして?
着地して保護珠の中を確かめ、種類毎に分け始めた。
【青生と会ってないのかよ?
稲荷山と奥ノ山の社と輝竜家――だけじゃなくなったけどな、フリューゲル城の放置してた土地に引っ越したんだよ。
西は西海村から東は竜ヶ見台市まで。北は成荘村までな】
彩桜と向かい合って座ったリグーリも中身を確かめて、ひと塊を自分の前に浮かべた。
【葡萄畑の他も広かったんだね~♪】
かつての領地=今はただの私有地。
とんでもなく広い私有地だ。
【まだ余ってたよ。
軽く山も在るから社を並べて、海の代わりに湖と運河も成して、まんまな感じのを作ったんだ】
【へぇ~♪】【凄……】
【ま、神が遣るんだから何でもアリだ。
で、此処は分厚い岩壁で唯一の草原だった。
悪神がツクヨミ様の角を捨てた場所だったんだ。
角はツクヨミ様にお返ししたから、ハーリィ達と保ってたんだよ。
ずっと忙しかったからなぁ、ようやく様子を見に来れたんだ。
島として残ってて良かったよ】
話しながら保護珠に『恵み』を与えている。
【先に雲海草類からな。
他は雲海草が定着してからだ】
【ん♪ サーロン行こ~♪】【うん♪】
彩桜とサーロンが楽しそうに放流している(雲海草なので石やらに時短術活着させては掌握で底に並べている)のを眺めながら、他の保護珠に『恵み』を与えているとハーリィとプラムが来た。
【そうか。本来の雲海に戻そうとしているのか】
【彩桜が保護区域の雲池で養殖してたんだよ。
ハーリィも様子を見に?】
【この草地まで雲海になっていたら寂しいと思ってな】
手伝い始めた。プラムにも教えながら。
【ハーリィとプラムの始まりの場所だもんな♪】
【そ、そう、だ、な】
【まだ真っ赤になるのかよ】
【リグーリの方は? 神社も移したのだろう?】
【近隣 丸ごとだから無問題だよ。
片付けも手伝ったし浄化も完璧。
今頃は親子水入らず。団欒してるよ。
時差ボケ解消中かもだがな】
【ふむ。順調ならば構わないが。
人世の方は何か聞いているのか?
あれを放置しているのは何かの策なのか?】
【爺様からチラッと聞いたのは、ギリギリまで放置して不穏を溜めて、闇禍が餌に寄って来るのを待ち伏せするそうだ。
超越者に地星は闇禍と戦えるから滅ぼそうとするのは無駄だと示す策らしい】
【待ち伏せ? 何処で?】
【爺様はオフォクス様を月に引っ張ってったぞ】
【そうか、月か】【理俱師匠~♪ 定着した~♪】
【ほらよ。小さいものからな】【ん♪】【はい♪】
【ん? 雲海星だらけ? おいおい】
【このコ達、雲水浄化するんだよ♪
人世のヒトデじゃにゃいんだから~♪】
【元々多かったのか?】
【うんっ♪ 雲池でも底ビッシリ♪
か~わい~の~♪】
【ゲ……】
【ほえ?】【あ、パステルカラーなの?】
【ねっ♪ 可愛いでしょ♪】【そうだね】
彩桜は小さくて淡い色とりどり達を手に出して指で撫でている。
手を出さないサーロンは怖いのか気味悪いと思っているのだろう。海っ子なのに。
【もういいから行けよな】【うんっ♪】
嬉しそうにサーロンを連れて飛んで行った。
【ん? 雲海の生物を何方が保護したのだ?
真四獣神様方がお気付きになられた時には雲海は干上がっていたのだろう?
アミュラ様はルサンティーナ様を保護して避難なさっておられた。
ならばブルー様なのか?】
【可能性大じゃないか?
今の、不穏を溜めてる状況も見てるのかもな】
【ふむ。地星の神の足りぬ所を静かに補ってくださるのだな……】
【目指すべき『神』の姿だよな】
【そうだな】【あら♪ 来ていたのね♪】
現れたのはロークスとチャリル。
続けてラナクスとタオファも。
【引っ越し完了で離脱して来たのか?】
【ま、そんなところだな】【ね♪】
【ほら♪ やっぱり来てるよ♪】
【置いてくなよなぁ】
マディアとディルムも来た。
【ディルムの存在を忘れていた】
【ハーリィ!? 兄を忘れるな!】
【兄だとも思っていない】【お~い】
【此処が気になっていた】
【でも忙しくて! やっと来れたのよぉ】
【島として残っていたとは嬉しい限りだな】
【そうよね♪】【お~い、俺達を無視すんな~】
【気になってて、やっと来れたのはハーリィからも聞いたよ。
で、アッチでは彩桜とサーロンが放流中だ♪】
【そうか。生きた雲海に戻すのだな】
【本来の神世に戻っていってるのね】
各々、夫婦で微笑み合う。
【【・・・】】
【あ♪ 僕、サーブル連れて来るね♪】
【俺が行くよ。龍の里だろ?】
【リグーリは人世の彼女じゃないの?】
【同代を集めた後でな。ラピスリは人世だし】
【そっか♪ じゃあお願いね♪】
【ってマディア、エーデリリィ様は?】
【最高司してるから後でね♪】
【そっか。そんなら皆で恵みを頼む】
【うん♪】
リグーリは術移した。
【おい、リグーリの彼女って?】
独り身仲間に裏切られた気分のディルム。
【人の女の子♪ 待ってたら会えるよ♪
あ♪ ロークス ラナクス。末代をお願い♪】
【そうだな】【集めよう】【【私も行くわ♪】】
狐兄弟は妻を連れて術移した。
そこにリグーリがサーブルと黄龍の女神を残して消えた。
【サーブル、そのコ……妹だよね?
サンフラウリィ?】
【当たりです♪ マディア兄様♪
私達、保魂域に封じられてました。
助けていただいて、サーブルに治癒してもらって、結婚しました♪
サーブルもボロボロで回復しきれていなかったのに治癒してて、優しくて♪
カウベルル様に結んでいただいたんです♪】
【良かったね♪ サーブルも♪】
【うん。最初はマディアに会いたいって騒いでいたんだよ】
【他に知らなかったんだもん】
【だよね。マディア、エーデリリィ姉様は?】
【後でね♪】【【サーブルが女の子と居る!?】】
次に来たのはエメルドとユーリィだった。
エメルドは淡い桃橙色の龍女神を、ユーリィは透明感のある白鱗の龍女神を連れていた。
【結婚したんだ~♪】【えええええっ!?】
【うん、ユーチャ姉様の同代でアプリコット】
【滝で一緒してたオパール兄様の同代でクォーツだよ♪
マディア♪ 姉様とかって関係ないよね♪】
【ナイナイ♪ ふたりも治癒してて仲良く?】
【【うん♪】結婚ラッシュだったよね♪】【ね♪】
「あ~居た居た♪ マジで居た♪
ヨシちゃん、俺の兄弟だ♪」
【ウンディも輪に入ってよ♪】「おうよ♪」
【ウンディ、まさかとは思うが……】指、震える。
「俺の妻、ヨシちゃんだ♪
神より強いユーレイなんだぞ♪」
【ウンディまでもが結婚……】ガックリ。
【ありがとうリグーリ。
ミュゲ、気をつけてな】【はい】
声の方を向くと、アーマルが支えるようにミュゲステラをエスコートしていた。
【随分と揃っているのだな】
口々に嬉しさのままな返事。
そこに両手に大皿なオニキスが配達され、続いて両手に子兎な虹香姫。
そして慌てた様子の狐儀は当然ながら梅華を連れている。
【これは? リグーリから大至急と聞いたのですが……?】
【【単なる同代の集いだ】】
ロークスとラナクスが末代と妻を連れて戻った。
【大至急とは?】
【そう言わないと兄様もラピスリも動かないからな♪】
ユーレイ化した沙織を連れているリグーリがニヤリ。
その後ろでラピスリと青生が苦笑していた。
【青生兄~♪ コッチ手伝って~♪】
【うん、行くからね。
瑠璃、たまには ゆっくり楽しんでね】
【彩桜は何をしているのだ?】
【放流じゃないかな? 養殖していた雲海星の♪】
【そんな事をしていたのか!?】
【パステルカラーで小さくて、少しだけど浄化の神力を持っているんだよ。
雲海を元に戻すのにも、維持するのにも必要だからと世話していたんだ】
【どこまでもヒトデなのだな……】ふふふ♪
【だよね♪ じゃあ行くね】翼を広げて浮かんだ。
【行ってらっしゃい】微笑む。
【うん♪】満足気に飛んで行った。
【お~いディルム、紹介するから起きろ~♪】
リグーリが ゆさゆさ。
【俺なんて……俺なんて……】ぶつぶつぼそぼそ。
【もしかしてディルムだけ?】
【【【【そのようだな】】】】
【どこかに居ないかしらね~】
【今ならマヌルの里に居――】【行くぞっ!】ビタンッ!
瞬移しようとしたディルムの尾をハーリィが掴んでいた。
【何しやがる!】【落ち着け】
なので腹這い状態ジタバタ。
【そうだな。そんなにカリカリしていては狩られると怖がられて、女神達に逃げられてしまうぞ】
【どう見ても虎なのだからな】
【うわ。満員御礼だな】【あ♪ 父様~♪】
【マリュース様!?】一斉ビックリ。
その間にサファーナはユーロンを連れて両親の間に収まっていた。
【チビッ子達に修行させようと思ってな。
俺も長く此処に隠れてたからなぁ。
マディアもチョイチョイ来てたんだろ?】
【はい♪ あの頃には想像もしてなかった楽しい場所になりました♪】
【そんならいい♪
此処はドラグーナとオフォクスも修行してたし、イーリスタ様も来てたんだ。
その前にはフィアラグーナ様とガイアルフ様。
俺の両親も修行したらしい。
歴代四獣神の多くが此処で鍛えたんだ。
お前らも鍛えまくれよなっ♪】
【はい!♪】元気に一斉。
【いい返事だ♪ お~いチビッ子達~。
アーマルと一緒に居たいのか?】【【はい♪】】
【そんなら行くか?】背に。
【そうね。では――あら、ディルムは どうして寝ているのかしら?】
【うわ……母様も居たのかぁ】
【居てはならないのかしら?
何にせよ修行よ。
鍛えなければ神はモテないわよ】
【ですよね】起き上がった。
【マリュース、バステト様のお嬢様は どうかしら?】
【結婚してない娘様なんて居たっけか?】
【いらっしゃるわよ♪ 行ってみない?】
【確かめとくか♪】でっかく瞬移だ♪
【バステト様? 娘神様?】
【じゃあランも楽しんでてねっ♪】【姉様~♪】
【サクラは?】【俺、途中なのぉ。後でねっ♪】
彩桜はサーロンを連れて術移した。
【ランマーヤ、此方に】にっこり。
【あっ、はい! お母様♪】
母に治癒もしなければならないし使徒神団長もしていたのだからと、彩桜を追うのは諦めて両親の所に行った。
雲海唯一の島は、あの岩壁で唯一の草地だった場所でした。
思いがけず同代の集いになり、復興の合間に楽しく過ごせる時間が得られました。




