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百合谷東自衛団



「うわ……」


「あ! 心太(ここた)さん!」

祐斗が駆け寄った。

「どこ行ってたんですか?」


「京都の妹トコ行って、連れて実家の様子を確かめてからコッチ戻ったんだ。

 けど……」


「ビックリですよね。僕達もでした。

 輝竜さんは、たぶん家ごとオーストリアです。

 ペット達も一緒ですから、朝のは人と僕達の犬だけで走るつもりです」


「周りの家も?」


「はい。反マーズ派が来ても危険だし、取材とかでも迷惑になるだろうからって、マーズが希望する家を連れて行ったんです。

 誰も残りませんでしたけどね」


「祐斗達の家も?」


「移動しました。

 僕達は荒らされないように残ったんです。

 あれを建ててもらって」

だだっ広い更地にポツンと建っている輝竜家本館を縮小コピーしたような建物の方を向いた。

「食事は届きます。

 お風呂は輝竜さん家のを小さくした感じです。

 あっ、デューク♪」


犬達が走って来ていた。

百合谷東町が丸ごと引っ越し真っ最中に、優秀な番犬だからと我王(がおう)義王(ぎおう)を竜騎が連れて来てくれたのだった。

だから祐斗もデュークだけは残してもらった。


「俺も、いいのか?」


「はい♪ 責任者、お願いします♪」「ええっ!?」

犬達が一緒に建物の方へと促すので歩き始めた。


「未成年ばかりですから♪」


「うわぁ……けど、やらねぇとな!」


「ありがとうございます♪」『これは何事だっ!?』

「「ん?」」

振り返ると、家の場所で騒いでいる(まこと)と荷物を残して啓志(ひろし)が走って来ていた。


「祐斗っ、どうして町が更地に?」


「危険だからってマーズが避難させたんです。

 啓志お兄さんの家も。

 どこ行ってたんですか?」


「ややこしくなる前に次のライブがある北長安に行こうと思って空港に。

 でも淳が乗れなくて……あ、悪い事じゃなくてね。その、、おめでたいヤツで」


「えっと……あ! 走ってます!」「淳っ!」

啓志は大慌てで駆け戻った。



 そして宥めつつ連れて来た。

「どうしてればいいんだろ?」

まだ騒ぎそうなので淳の口を塞いでいる。


「彩桜に伝えます。

 啓志お兄さん達は必ず来るからって、先に家を運んだんですから」


「そうか。ありがとう、頼むよ。

 淳、もう大丈夫だよね? 騒がないでね?」

頷いたので手を離した。

「荷物を持って来るからね」また走った。


「手伝うよ!」祐斗も。



「あ、取材だな。

 奥さんは待っててください。

 俺、責任者なんで」

テレビ局のロゴが入ったワゴン車が来たので心太も走った。犬達も追った。



―・―*―・―



 秘書達も同派閥の若手達も、誰も助けに来てくれない新総理は困りきっていた。


集まっている記者達は、これまでの取材を通じてマーズファンになった者ばかりで、自称マーズスタッフも大勢いた。

なので行儀よく静かに待っていたが、流石に長過ぎると、質問が飛び始めた。

1人ずつ次々と。


「そろそろ何か話してもらえませんか?」


「ま、待ってもらえないだろうか。

 まだ私は総理の言葉も聞いていないのだよ」


『総理は貴方でしょう!』似たり寄ったり大勢。


「前総理のっ、、いや、申し訳ないが先に映像を見させてもらいたい」

スマホの電源を入れた途端に鳴った。

「何事だ?」


『複数国から総理にと緊急の電話が入っております。

 待機して頂いておりますので、只今、繋がっております米国大統領と先ずはお話しください』


「待てっ! 通訳は!?」


『此方も手が足りないのです。

 今いらっしゃる場所で調達をお願いします』


「何故!? 足りぬとは!?」


『説明している時間も惜しいので申し訳ございません』

もう有無は言わせないと途絶え、英語が聞こえ始めた。


相手の声は漏れ聞こえていたので記者達が騒めく。

ドアのノック音で遮られたのだが。


 スーツ姿の双子としか思えない男2人が斜め前位置に大きなモニターを設置し、

「取材の皆様もご覧ください」

とだけ言って去った。



 カメラが ぐるりとして広い更地を映し出し、黒い家の前に集まっている青年・少年達と犬達で止まった。

そしてレポーターがアップに。

『キリュウ兄弟が暮らしていた町が丸ごと、すっかり消えてしまいまっています!

 残っているのは青年をリーダーとする自衛団のみ!

 何があったのかを聞いてみます!

 お願いします』

歩きながら話していたレポーターが家前の誰かにマイクを向けた。


カメラは運動靴の足元を映した。

引きの画面では真ん中辺りに居た少年のようだ。


『マーズが邦和を去り、キリュウ兄弟も去りましたから町も、ってだけです。

 また取材で騒がしくなるでしょうし、反マーズ派が釈放されて占拠されたら嫌ですから僕達は自衛団として残りました』


『また? あ~、すみません。

 冬から春にかけてのですよね。

 反マーズ派が占拠とは?』


『帰る場所なんてありませんよね?

 家は建ててもらえない、避難所は閉鎖。

 会社からは解雇、家族からも縁切りされた逆恨みで集まる可能性は大です』


『それは……確かに。可能性はありそうですね』


『被害届が次々と出ているようですから暫くは拘束されるでしょうが、時間の問題ですので守りを固めているんです。

 もういいですか? 入りたいんですけど?』


『ありがとうございましたっ。

 スタジオにお返しします!』


 切り替わったスタジオには見田井とユーレイ探偵団の1人とコメンテーター達。

『中継の間にマーズ事務所よりの手紙をマーズが置いて去りました。

 ユーレイ探偵団のラクサ君、読んでもらえますか?』


『はい。演奏した時と同じで、まずは抜粋から。

 ご要望が多かったのは想定外でしたが、主要各国と交渉し、マーズタウン用地を確保しましたので、望まれる方の受け入れを開始します。

 工場等の大きな建物も忍者移動にて移設可能ですので、ご遠慮なくお申し出ください。

 連絡先は――』「お待ちください! ああっ!」


皆の視線がモニターから新総理へ。

どうやら先方が一方的に通話を終えたようだ。


「総理、大統領は何と?」


「い、いや、先程のは秋小路総帥で……」


「米大統領は?」


「とうに切られて……私は英語は苦手なのですよ」


「秋小路氏は何と?」


「グループ全てを移すと……松風院グループも、春日梅グループもマーズファンなので同じだと。

 タキ電機も邦和では販売できなくなったマーズ関連商品の販路確保の為に同行すると言っていると……」


「此処に居る場合じゃないぞ!」

1人が立ち上がると、次々と出て行った。

「総理! 会見は明日! 必ずお願いしますよ!」

同意や念押しの声達も走って行った。



「どうすれば……」ぽつねん。



 着信音が広い部屋に響いた。

「迎えを、頼む」


『此方は忙しいと申した筈ですが?

 次々と繋ぎますので切らないでください』

苛立ちも露な和語に続いて異国の言葉。


「あ、アイ、キャンノット――いや無理だっ」

投げようとしたスマホを取った手があった。


腕を辿って上へと視線を巡らせると、男は背を向けて話し始めた。


「何語だ? それに誰なのだ?」

呟けど、男は相手と談笑している。


そして通話を終えると、背を向けたままスマホを返してきた。

そのスマホからは別の異国の言葉が聞こえている。


「た、頼む! 次も、その次も! 全て頼む!」


「そんな外国語力で前総理とマーズを襲い、総理になろうとしていたんですか?

 俺が何と返事をしてもいいと?

 頑張ってくださいね、新総理」


男は待ってもスマホを受け取ってもらえないので相手と少しだけ話すと、スマホをテーブルに残して消えた。



「やはりマーズだったのか……」



―・―*―・―



「みんな~♪ たっだいま~♪

 消えた町の見本ありがとねっ♪」


居間に夕食を運んで来た彩桜がピョンピョン♪


「彩桜!?♪」駆け寄って囲む。

祐斗は逃がさないぞと抱き締めている。


「祐斗ありがと♪

 ちゃんと戻れるよぉにするから離してね?」


「……うん」


「他が引っ越し完了したら、この家も運ぶからね。

 それまで……お願いねっ♪」


「彩桜……」「俺達もカラ元気するぞ♪」

「そうだね堅太。

 彩桜の居場所を守るんだからね」


風呂上がりな心太達がドアを開け、大喜びで駆け寄った。


「今は晩ご飯 持って来ただけなの~。

 でもでも元気だからねっ♪

 心太さんリーダー? ヤマトさんサブ?」


「「だよ」オロチは駅北拠点リーダーだ♪」

既に駅北マーズタウンもスーパーいちいもタキ電機の工場も引っ越しているので。


「ん♪ ありがと、で、ヨロシクなの~♪」


「「おう、任せろ♪」」


「うんっ♪ じゃあまた朝ねっ♪

 啓志お兄さん、後で赤マーズ来るからねっ♪」

手を振って居間から出、瞬移した。



「よーし! 食って寝て明日も走るぞ!」


「オー!♪」

笑顔で湯気の立つ夕食が並ぶテーブルへ。


テレビを点けるとニュースで、自分達が映っていた。


「邦和からマーズファンが消えたら、中立だった人達も治安が悪くなりそうだと移るだろうね。

 反マーズ派ばかりになったら……」


「凌央、続きを言ってくれよ」


「その頃には僕達も外国だよ。

 何をされても知ったことではないよね。

 各マーズタウンはマーズが繋いでくれるから気候は違っても邦和に居るみたいに何不自由なく暮らせるだろう。

 外国でならマーズもキリュウ兄弟も活動するんだからファンにとっては何も問題ない。

 でもファンじゃない、反マーズ派でもない人達にとっては?

 彩桜とお兄さん達は踏まえて考えている。

 その想定で僕達は動かないといけない。

 祐斗、また後で少しね」


「うん」

「そんなら参謀は凌央と祐斗だな。

 俺は考えるのが苦手だからな」「俺もだ」

心太とヤマトも聞いていたらしい。

意気投合している2人は安心したと笑顔になった。







想定内だからこそのユーレイ探偵団バンドです。

音楽でマーズの想いは伝わります。

子供バンドの演奏と比較して、マーズの想いを実感してくれればファンにまではならなくても安心してマーズタウンに移動してくれるだろうと考えてもいるんです。


マーズタウンに移ればマーズの音楽が聴けます。

それは、これまで耳にしていなくて消えきっていなかった人々の弱禍も浄滅できるからと、普段はファンを増やそうとしないマーズでも張り切って流しているからなんです。



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