ギリギリ逆転勝利を目指す
青生と彩桜は瑠璃に乗って帰宅し、ソラはイーリスタに乗って鳳凰の里を経由してマヌルの里へと戻った。
厨房に行ったソラはバースデーケーキのホイップクリームまでを仕上げたものを貰い、色とりどりの木苺を飾り付け始めた。
【虹苺か。いい並べ方だな♪
仕上げにコイツで苺をコーティングしたらキレイになるぞ♪】
【それは?】
【ただのゼリーだよ。
ま、オレが作るんだから『ただの』じゃねぇけどなっ♪】
【ありがと兄さん♪】
【その苺ならコレだな。持ってけ♪】
【紅茶?】の缶?
【神世のハーブティだと思ってくれ♪
響チャンの誕生日だから特別なヤツだ♪】
【何から何まで ありがと兄さん♪】
【おう♪】
【あれ? そっちのケーキは?】
【ユーロンと飛鳥の分だ♪
C班で行くから今のうちに食わせとくよ】
運んで行った。
―・―*―・―
彩桜達はマーズがアトリエホールに集まっているので加わり、ブルー達から聞いた話をした。
「だから成り行きに任せておいて、寸止めする形で解決するのが最善らしいんだ」
「逆転勝利しないとなの~」
「成り行き、つったって……」
金錦と白久は全てを聞いてからだと黙っているので、黒瑯が白久の代わりに言葉にした。
「マーズは邦和から去って、諸外国に本気にならないようにと先回りしておくべきだと思うんだ」
「威嚇パフォーマンスだけしてもらうの~」
「けど音楽は? 補助金は?」
「補助金はマーズ事務所から出すんだから問題ないよね」
「音楽はユーレイ探偵団が引き継ぐの~♪」
一斉に驚きの声が上がる。
「ボーカルはメーアとか奏お姉さんとか、招いて歌ってもらうの。
ユーレイ探偵団はインストゥルメンタルバンドなの♪
コーラスするけどね~♪」
「ま、彩桜も入ってるから大丈夫だろーけどな」
「あのカケルもか?」「偽装しましょうか?」
「トリノクス様て音神様でしょ?」
「「あ……」確かに」「だったな」息子達。
「これから鍛える~んるん♪
ツナギは俺する~んるん♪」
「それなら、なぁ?」「そうですね」
「でもね、マーズには負けるの。
やっぱりマーズが必要てなるの。
その声、大っき~くしなきゃなの」
「「そ~ゆ~コトか」ん? 白久兄?」
「おう。そんならマーズは欧州に行く。
大国巡りは兄貴と俺がやる。
邦和の復元依頼は、残るは反マーズ派のみだから、一区切りついてるトコだ。
丁度いい。つか、今しかねぇだろ」
「ふむ。そうしよう。
彩桜。今日の放送でマーズからの手紙を読んでもらいたい」
話を聞きながら書いていたものを差し出した。
「ん。ナニ言っても反マーズ派には火に油なるけど頑張る~んるん」
「それが目的の手紙だからね」「うん」
「邦和に残るのは青 紺 桜 空のみ。
他は欧州各国からの依頼を受ける事とする。
黄緑も欧州での活動に加わるよう。
では、移動」
「承知!」一斉に瞬移した。
「青生兄 瑠璃姉、俺とサーロン別行動なるからね。
避難して来てる子供達お願いね」術移した。
――マヌルの里、ソラと響の部屋前。
【ソラ兄~♪ 響お姉ちゃ~ん♪ 人世 行こ~♪】
【彩桜クン!?】【行こうよ】【そうよね!】
――東邦テレビのスタジオ。
彩桜は素早く機材をセットしていった。
「ね、マーズは? 爽さん達は?」
「So-χの皆さん、ボランティア中なの。
マーズ、置き手紙して消えちゃったの」
「へ? 彩桜クンもマーズでしょ?」
「違うの。マーズは友達。正体不明なのぉ」
【盗聴されてるの利用するから合わせてく~ださい♪】
【そっか】
「私、ずっと彩桜クンが桜マーズなんだと思ってたよ~。
違うのね。ホントに消えちゃったのね?」
「うん。あっ!」指差す!
一瞬だけ桜マーズ。
奏とカケルとサーロンを残して去った。
「お兄!?」
【違うの~。俺、分身して偽装なの~。
サーロンもなの~】【ボクがするよ】【ん♪】
【そのうち本当に翔がドラムを担当するそうよ♪
でも今は無理だから、ね♪】【ね~♪】
「私、いつもの部屋で準備するわね」「は~い♪」
【響、落ち着いて聞いてね。
バンド名はユーレイ探偵団。
ボーカルはゲストになるんだ。
マーズが邦和から去ったから、代わりに電波ジャックする為のバックバンドなんだよ】
【そっか。理解したよ。
反マーズ派に対抗して、マーズの音楽が聴きたい運動を起こさせる為なのね?】
【その通り♪ これはこれで続けられるように頑張るけどね♪】
【頑張ってるけど何かが足りないって演技をしないといけないのね♪】
【だから早く お兄にドラムしてもらわないとね♪】
【それなら私達が苦労して演技しなくても足りなくなるよね♪】
【あんまりな言い方だけど、その通りだよね♪】
「セッティング、チューニングでっきた~♪
着替えよ~♪」
「ここで着替えるの!?」
「ワンタッチテント~♪」言っただけ~♪
【隠しカメラとかナイから~♪
ユーレイ着替えしてね~♪
コレ真似てね~♪】クルン♪
「古典的 探偵ルックね♪」
「でしょ~♪ 色違いチェック柄なの~♪」
【衣装だから好きな色にしてねっ♪】
「で、帽子の前トコに白三角ねっ♪」見本♪
【だからユーレイ探偵団なのね♪】
「こっちが前ね♪ これでいい?」
「うんうん♪
でねっ、前髪で顔隠す~♪」偽装~♪
「「あ~♪ ぽいよね♪」」
髪型なんて自由自在なのもユーレイならでは。
「もぉ誰だか分からにゃ~い♪」
【コレならチョイダメ演奏も平気でしょ?
でも~やっぱりイヤだよね~。
だから まだまだ練習中なコドモにしにゃい?】
【そうね♪】背を低くした。ソラも。
彩桜も分身のカケルを小さくした。
【心込めなかったら足りなくなるから、心話おしゃべりしながら演奏しよ~♪】
【楽しく演技だよね♪
頑張ってる感は出して♪】
【うんうん♪】
スタッフルームでメイクしていた奏が戻った。
「それじゃ放送 始めよ~♪」
―・―*―・―
ダイナストラとショウフルルの王子としての神王殿での執務は、復興もしているからと少しだけだった。
なので拍子抜けしつつ狐神便でマヌルの里に戻ると、モグが出迎えてくれた。
「ダイ兄ちゃん ショウ兄ちゃん、お帰り~♪
お兄トコ行ってみる?」
「だな。まだ封印結界の中なんだろ?」
「うん♪」
犬になって一緒に向かった。
「ユーロンとアスカは?」
「C班、出発したトコ~♪」
「モグは行かないのか?」
「お兄トコで見張りしよ~と思ってた~♪」
「そっか。サイアク支配で静かにさせるつもりだったんだな?」
「ま~ね~♪」
着いた。
「まだ寝てるのか」「「ただ寝てるね~♪」」
『俺が眠らせてしまったんだよね』上から声。
「えっ!?」「「あらら~♪」」
揃って上を向くと、鳥翼をはためかせながら瑠璃鱗の竜達が降りて来た。
「青身神ブルー様?」「アオ様、帰ったよね?」
「うん、また来たんだよ。
今度は飛ばされたんじゃなくてね」
「カケルの魂に絡んでいた縛りは全て消しておいたよ」
「記憶も再構築したから「もう安心してね」」
「ありがとうございます!」「「ありがと~♪」」
「それじゃあ後はお願いね」
「もう俺達は離れるからね」
ス~ッと上昇して消えた。
「なんか……圧倒されたな……」
「ドラグーナ様みたいだったね~♪」
「と~っても優しい感じしたね~♪」
「でも強い」
「「うんうん♪」」
「すんごく強くて、すんごく優しいんだな」
「「うんうん♪」」
「四獣神様も、輝竜の兄貴達と彩桜も、すんごく強くて優しいよな」
「「うんうん♪」」
「俺、目指す!
すんごく すんごく すんごく遠いけど!」
「「僕達も目指す~♪」」
異界の大神達が消えた天を見上げて誓った。
「あ、カケル忘れてた」「「起こそ~♪」」
―・―*―・―
「なぁ祐斗。アレ、彩桜とサーロンだよな?」
堅太がテレビを指差した。
「だと思うけど、彩桜の演奏だとは思えないよ」
考え込む祐斗。
夜中に反マーズ派が出て行った北渡音アウトレットパーク避難所を閉鎖しようと、片付けと清掃をしに来ていた彩桜の友人達は休憩室に次々と集まっていた。
「マーズは? いつもの時間だから中断して来たんだけど?」
凌央が顔を顰める。
「「「変でごじゃりましゅる~」」」
『僕達はユーレイ探偵団です。
マーズ事務所に所属していますが、練習中・準備中でボーカルも居ません。
ですが、マーズが消えてしまいましたので、急遽、引き継ぐことになりました』
バックバンド達、揃って礼。
『まだまだな僕達ですが、次の曲にいきます』
「声まで変えて……何か考えがありそうだね」
「凌央も そう思う?」
「あんなのは彩桜の演奏じゃないからね。
技術だけは確かだけどね」
「僕も そう思ってたんだよ」
「なぁ、マーズが消えたって言ったよな?」
「言ってたね。でも彩桜もサーロンも居る。
もしかしたら……」
「もしかしたら?」複数。
「もうマーズしないという意味かもしれない。
キリュウ兄弟も戻らないのかも……」
バッとドアが開いて買い出しに行っていた女の子達が駆け込んで来た。
「ノワールドラコが閉まってたの!」
「稲荷堂も! きりゅう動物病院も!」
「昨日までは代わりの人達が開けてたのに!」
ユーレイ探偵団は神世の復興の合間に音楽活動することになってしまいました。
姿は偽装を駆使しての小学生バンドです。
驚いて騒いでいるのは祐斗達だけではありません。
邦和中のマーズファンが大騒ぎです。
さてさて彩桜の思惑通りに事が運ぶのでしょうか?




