第7話 2学期とイベント
波乱の夏休みが終わり2学期になった。
だけどあたしは入院期間が延び、9月半ばまで学校に行けない。
たまに涼くんが来てくれるけど帰るとき寂しそうな顔をするけど、あたしも涼くんに会えなくて寂しいよ。
「次来れるの来週土曜日になるわ」
来週?遠いなぁ。
「わかった」
「いやーホント,喋れるようになって良かったな」
「まあ体はまだ痛いんだけどね」
「早く治せよ?」
「うん、がんばる」
その時ノックする音が聞こえた
「はーい」
「失礼するよ」
医者が来た。
「先生どうしました?」
「涼くんにちょっと話があるんだけどいいかな?」
「はい」
なんだろう?
あたしのこと?
それとも…
しばらくして涼くんが戻ってきた。
なんだか浮かない顔をしてた。
「話ってなんだったの?」
「…ごめん、先生に話すなって言われてて…」
え、何?なんなの?やっぱりあたしのことなのかな、でも涼くんを責められないし…
数秒考えたけど答えは見えなかったからあたしは何も言えなかった。
「ホントにごめん…悪いけど…用事あるから帰る」
「…うん、またね」
ホントはすごく寂しいし、真相も気になるけど用事あるなら仕方ないよね。
「またな。体に気を付けて」
「…うん、わかった」
涼くんが病室を後にした。
涼くんがいなくなった病室はなんだかすごく寂しい。
「また1人ぼっちか。体が言うこと聞いてくれたら涼くんを抱きしめられるのになー」
こんなときは音楽聞いて気持ちを落ち着けよう。
それにしても涼くんはなんの話をしてたのかな?
すごく気になる。
考え込んで疲れたのか気づいたら眠ってた、起きたら次の朝だった。
目覚めは正直良くない、昨日のことがまだ引っかかってるからだ。
結局何だったんだろう…まぁ考えても仕方ないか。
多分あたしの体の事だろう、とりあえずそれでいいや。
*****
9月の前半はほとんどベッドの中で過ごした。
特にやることもなく、テレビを見たり、音楽を聴いたりしてた。
時々、涼くんが来てくれるときは精一杯甘えた。
病院食は美味しくなかったから、近くのレストランに行って食べてた。
退院の一週間前にリハビリを始めた。
ベッドに横になってただけだったからまともに歩ける自信が無くなったから体に思い出させるように少しずつ歩行練習をした。
でも、歩くのってこんなに難しかったっけ?
思うように歩けない…
それに一歩、歩くたびに激痛が走る。
「痛ったい…」
あまりの痛みに涙が出てきた。
「六華、無理すんなよ?」
「だい…じょうぶ…がんば…ってみる…から…あっ!」
「六華!」
「…ごめん、よろけちゃった…」
「だから無理すんなっつっただろ!」
思ったより強く言われて戸惑った。
「ご…ごめん…なさい」
「…悪い、強く言い過ぎた…でも俺、お前が心配なんだよ!」
また余計な心配かけちゃったな…
「だからゆっくりやれよ、な?」
「う…うん。でも早く涼くんと学校行きたい」
「そりゃ、俺だって早く六華と学校行きたいよ、だけどここで無茶したらもっと期間伸びるかもだろ?だから無茶だけはするなよ?」
「…うん…わかった…ありがとう」
あたしは嬉しさのあまり少し泣いた。
「今日は終わりにしよう」
「そうだね、あたしも少し疲れた」
あたしたちは病室に戻った。
「じゃあ先生に報告してそのまま帰るわ」
「うん、わかった。よろしくね」
「じゃあな」
「うん、またね」
あたしは病室を出る涼くんに手を振った。
涼くんが帰った後も密かに歩行練習を続けたけど1人だとやっぱり心細かった。
両足に激痛は走るし、何度も転んだあげく額を少し切るしでもう散々だった。
それでも早く涼くんと一緒に学校に行けるようになりたくてリハビリを頑張ったけど、まともに歩けるようになるまで2週間はかかった。
*****
9月半ばになってあたしはようやく退院できた。
あたしは松葉づえをつきながら登校する羽目に。
久しぶりに学校に行くけど、なんか気が重いなー、まるで入学式の日みたいだ。
…こりゃ保健室登校だな、階段上がれる自信ないし。
ふと校門の方に目をやると涼くんが待っててくれた。
「おはよ、六華」
「おはよー、涼くん」
ようやく学校で涼くんに会えた!
すっごく嬉しい!
「今日どうするんだ?」
「体まだ少し痛くて階段上がれないから、保健室にいくよ」
「そうか…付いてこうか?」
「ううん、大丈夫だよ」
ホントは一緒に来て欲しいけどちゃんと授業に出て欲しいから断った。
「そうか、わかった」
涼くんは手を振りながら教室へと向かっていった。
さて保健室に行きますか。
昇降口から左に曲がるとすぐ保健室がある。
今のあたしにはこの距離すら億劫に感じる。
ものの数秒で着くところ1分ほどかけて保健室到着。
「失礼します。ベッド貸してください」
「あら、りっちゃん。退院したの?」
「はい、つい先日」
「そう、よかったわねー。今日から愛しの涼くんと一緒なのよね?」
おっと、この人は何を仰ってるんですかねーまったく。
「そ…そうですけど?」
「あら?うれしくないの?」
「うれしいです、うれしいですけど、それを先生に言われるとは夢にも思ってなかったもので」
「そうだったのね。それはごめんなさい」
謝る気0な謝り方だなー。
「とりあえずベッド借りますよ?」
「はいどうぞ。涼くん呼んで愛の巣にはしないでね?洗濯大変だから」
またしても余計な茶々。
さすがのあたしも学校じゃやらないよ。
「やりませんて」
「冗談よ冗談」
上品な笑みを浮かべながら去っていこうとする先生。
「まるで親みたいな先生だなー」
思ったことが口から漏れていた。
「なんか言った?」
閉まり切ったはずのドアを開けての先生が覗き込む。
しまった、まだ居たか。
「いいえ何も言ってませんよ?」
「そう。職員会議行ってくるからお留守番よろしくね」
「わかりました」
ってなんであたしが留守番なの?
…まあいいか、寝よ。
しばらくしてドアが開く音がした。
「失礼します」
誰か来たけど居留守使おう。
…ってこの香りは!
「姫宮です。天人さんいますか?」
やっぱり姫宮さん!あたしに何か用かな?
「姫宮さんどうしたの?」
「あ、いたいた。ちょっとお話いいかな?」
あれ?若干キャラ違いませんか?
「うん、どうしたの?」
「今日の放課後、時間ある?」
「あるけど、何?」
「実はちょっと話したいことがあるんだけど…ダメかな?」
「いいよ」
「じゃあ放課後体育館裏まで来てくれる?」
姫宮さんは嬉しそうに目を輝かせている。
「わかった」
姫宮さんから話…か…何かな…
体育館裏と言えば、定番の告白スポットだけど…まさか…ね?
でも、姫宮さんから告られるのも悪い気しないなー、あたしはレズってわけじゃないけど姫宮さんから告られるなら、断れないじゃないか。
「ありがとう。じゃあまたあとで」
「うん、また」
姫宮さんが保険室から出ていく。
「さて、もっかい寝よ」
正直ドキドキしてた。
ベッドに入ってはみたものの、色々気になって眠れないなー。
とか考えてるうちに眠っていた。
お昼に涼くんが来て起こされた。
「六華、昼持ってきたから食おうぜ」
「…うん、ありがと」
あたしは目をこすりながらそう答えた。
「なぁ、六華」
「ん?どうしたの?」
「あ…あの…さ?」
なんだか歯切れが悪いな
「その…いい天気だな」
「そ…そうだね」
今何かごまかしたな?
涼くんが何かごまかす時はいつも、耳の裏を触るクセがある。
「今、何かごまかしたでしょ?」
「いや?なんにも?」
「えぇー?ホントかなー」
「…ホントだよ」
やっぱり耳の裏を触ってる。
「本題をお願いできるかな?」
「やっぱ六華に隠し事できねえなー」
「涼くん、何かごまかすとき耳の裏触るよね?」
「嘘だろ…やってるのか?」
「やってるよ」
「んぬわー!」
奇声を上げる涼くん。
こんな涼くんも何か良い。
「そういえばお前、放課後、姫宮さんに会うだろ?」
ん?何で知ってるんだろうか。
「まあね?」
「何を言われても、驚かないで受け止めてあげてな?」
「う…うん。それはいいんだけど涼くんがなんで姫宮さんと会うこと知ってるの?」
疑惑の目を向けてみる。
「それは…悪いけど今は言えない」
「そうか…」
さては密談してたな?なんだろう?まさか二股?いや涼くんはそんなことしない…よね?あと考えられる可能性…思い当たる節が無いな。
ま、姫宮さんに会えば全部わかるか。
「時間だから教室、戻るわ」
「うん、わかった」
「じゃあな」
「じゃあね」
キスをしてから、涼くんと別れた。
やっぱり、姫宮さんからの話が気になるなー
まあ、とりあえず放課後まで寝よう。
*****
保健室で寝てたら、あっという間に放課後になった
あたしは大きく伸びをしてベッドから出た。
ふとデスクの方を見ると養護教諭がため息をつきながら書類整理に追われていた。
「先生、ありがとうございました」
「あら?もう帰るの?」
「はい、もう放課後ですし」
「そうですよね。じゃあまた明日」
先生は少し寂しそうな顔をする。
「また明日」
あたしは後ろ髪を引かれつつ、保健室を後にした
姫宮さんを待たせたら悪いから急ごう。
体育館裏に行くと姫宮さんがいた。
遠目から見ても分かるくらいソワソワしていた。
「姫宮さん、お待たせ」
「ううん、そんな待ってないよ」
「で話ってなに?」
さあ、どうくるのかな?
「あの…ずっと前から好きでした!私と付き合ってください」
かわいい手を差し出してきた。
告白イベントだったか…受けるべきか受けざるべきかそこが問題だな。
涼くんは驚かないで受け入れてやれって言ってたけど…こういうことか。
「なんであたしなの?」
「前に助けてもらった時に、すごくかっこいいなって思って。それで…」
そうかあの時すでにあたしの事好いてくれてたのか、それなら涼くんの言葉通り受け入れてあげよう。
花火大会の時に感じた感情は気のせいじゃなかったみたい。
「…いいよ?」
「嬉しい!ありがとう」
嬉しさのあまり飛び上がりそうな勢いの彼女。
「これからよろしく。姫宮さん」
「…実は私、名字呼びされるの好きじゃないんだよね…」
「そうなの?」
そうだったのか、何か事情でもあるのだろうか?
まぁ今は聞かない方が良いか。
「…うん」
「えっと下の名前なんだっけ?」
「優衣」
「じゃあ、優衣これからよろしく」
「よろしく…六華」
優衣は照れながらあたしの名前を呼んでくれた
こうしてあたしは優衣と付き合うことになった。
「早速だけど、今度の土日どっちか空いてる?」
「空いてるよ?」
「じゃあ、デートしようよ!」
「いいよ?どこ行こっか」
普通にショッピングとかでいいのかな?
「私、おススメのカフェがあるの、そこ行きたい」
優衣のおススメなカフェか、気になるな。
あたしはそんなにカフェ詳しくないから助かるなぁ。
「いいよ」
「じゃあ、午前中はショッピングして、お昼そこで食べて、水族館行こうよ」
「良いよ、じゃあ土曜日でいいかな?」
「うん!じゃあ10時に洲島駅に集合ね」
「わかった!」
デートか、楽しみだなぁ。
あたしたちはキスしてから別れた。
いやーそれにしても嬉しいな。
優衣と付き合えることになろうとは夢にも思ってなかった。
なんてウキウキ気分で昇降口あたりまで戻ってきた。
「よっ!」
涼くんに声を掛けられたけど嬉しさのあまりボーっと歩いてたせいで少し驚いた。
「うわっ!びっくりした」
「そんなに驚くか」
「ごめん、少しボーっとしてた」
「一緒に帰ろうぜ」
「いいよ」
手をつないで校門へと向かった。
帰る途中あたしは優衣の事を涼くんに聞いた。
「ところで優衣とどこまで話したの?」
「あぁ、今まで黙ってて悪かったな、実は…」
涼くんは経緯を教えてくれた。
過去の事もあってあたしに告白する勇気が無くて、どうしたらいいか分からなくて涼くんに相談したらしい。
ただあたしが涼くんと付き合ってるのを知らなかったらしく、相談したことを後悔し諦めかけたところを涼くんが背中を押したらしい。
「というわけだ」
「なるほど。涼くん、ありがとね」
「感謝されるようなことは何もしてないさ」
「でも…」
言葉を遮るようにあたしの唇に指を当ててきた。
「何も言うな、俺はただお前らにとって何がベストか考えて行動しただけだ」
あたしは何も言えなかった。
「あとな六華…そうだなこれは俺の思い過ごしだと思うから聞き逃してくれていいんだけど…」
涼くんは少し言いづらそうにしてる。
「けど…何?」
「その…お前らが双子なんじゃないかって」
「あたしと優衣が?」
「そう、思い過ごしだと思うけど」
「なんで?」
「その…容姿と仕草が何となく似てるなって」
そうなのかな?
「それだけ?」
「うん、それだけ」
「そっか…否定して申し訳ないんだけど多分気のせいだよ」
「やっぱりそう思うか」
少し残念そうな涼くん。
でもどうだろう、ホントにあたしとあの娘が双子だったとして、生き別れた理由とか経緯って何だろう?
もしかしてあの娘は何か知ってるのかな?
いや、多分知らないだろう、知ってたらあたしにこういうアプローチしてこないと思う…いやむしろ知っててアプローチしてきたとか?
なんて考えてたら涼くんに頬を突かれた。
「すまん六華、余計な事言った」
「ううん気にしないで、それより涼くん、お願いがあるんだけど…いい?」
「いいぞ?何だ?」
「裁縫とか編み物得意なんでしょ?教えて欲しいなぁ、なんて」
「ちょ!それ誰から聞い…いや犯人はあいつか」
「涼くん?」
「あぁすまない、教えてやるよ」
やった!
料理はそれなりにできると思ってるけど裁縫とか編み物って正直苦手。
「ありがとう。そういえば涼くんって料理できたり裁縫や編み物できる女子力高い系男子だけど、何かやろうって思ったきっかけってあるの?」
「きっかけか…無いな多分、けど何で?」
「いやぁあたしって基本ガサツで、女の子っぽいとこって料理上手ってとこくらいなのよ、だけど女子力なんて1ミリも気にしたことないんだけど涼くんの話を聞いて、なんか女子力で男子に負けてるのかって思ったら何か悔しくて」
「そうか…」
涼くんを困らせてしまった。
「でも…さ?俺はそんなとこも含めてお前のことが好きだ」
うわぁーなんか照れるからやめてください。
「そ…そう、ありがとう。あたしも涼くんの事…好き…だよ」
不意打ちには不意打ちで対抗。
「そう…か…」
涼くんはあたしから視線を外して頬をかく。
「なぁ、今から家来るか?」
「良いの?あぁでも今日はいいや」
「そうか、わかった」
残念そうな涼くん。
そうこうしてる内に涼くんの家に着いてしまった。
もうお別れか…明日会えるけど寂しいな。
「じゃあ、また明日…な」
「うん、また明日」
あたしたちはキスしてから別れた。




