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第8話 優衣の過去と闇 前編

今回から2話連続で優衣の過去編です。

 私は小学校2年の時に京都から引っ越してきた。

 転校生ということもあり、みんな珍しいものを見るような目を向けてきたけど

私はそれがどうしても耐えられなかった。

 そんな時に私に普通に声をかけてくれたのが坂本 美沙希さんと月代 彩香さんだった。


*****

 


 小3の夏休みに転機が訪れた。


 お父さんの会社が破綻し、多額の借金を抱えてしまった。

 その頃からお父さんは酒に溺れるようになり、あげく私に手を出してきた。


 最初はただ殴られたり蹴られたりしただけだったんだけど、徐々に性的虐待

を受けるようになった。

 機嫌が悪かった時は特にひどかった。

 

 時には深夜に酔っ払って帰ってきて、私の部屋のドアを乱暴に開けて、寝てる私

を無理やり起こして暴行をすることもあった。


「お父さん…やめて…どうして…こんな…こと…するの」

「うるせぇ!おめぇは黙って俺に殴られてろ!この捨て子が!拾ってやった恩を忘れたのか!」

 捨て子?私が?そんな訳…ないよね…


  お母さんに聞いても答えてはくれなかった。


 お父さんからの虐待されていたせいで私は男性恐怖症になった。

 さらに小6の1学期までに3回も妊娠してしまい、そのうち2回は堕ろして

1回は仕方なく産むことになったのだが、死産という悲しい結果になってしまった。


 どんな時でもお母さんは私を助けてくれようとはしなかった。


 家出しようとも思った、でも私がいなかったら虐待の対象が妹に移るから

できない。


 私はいつかこんな地獄みたいな日々が終わることを信じていた。



*****


 小6の2学期、さらに状況はいい意味でも悪い意味でも一変した。


 私は彩香からイジメられるようになった。


 ある日いきなり、

「天使はこの世から消えな、邪魔なんだよ!」

 と言われたけど、私にはなんのことかさっぱりわかんなかった。


「私天使じゃないよ」

「嘘!絶対嘘。あたし聞いたよ?父親から殺されかけたんでしょ?それで生きてるなんておかしいでしょ!」


 どこでそんな情報が流れてるんだろう、しかもいらないおまけが付いて。

「どこでそんな話聞いてくるの?そんなバカみたいな話」

「うるさい!ホントの事なんでしょ?認めなよ!」

 ダメだ話が通じない。


「認めないなら確かめるしかないでしょ」

 彩香はロッカーに立てかけてあった誰のかわからないバットを持ってきた。

 ちょっと待ってなんでそうなるのよ。


 1発、2発、3発、4…あれ?


 恐る恐る見上げると誰かが立ってた。


「ちょっとあんた何やってんのよ」

 あれ?えっと、天人さん?だっけ?


「なんだよ、あんた誰だよ」

「こんなカワイイ子いじめるようなバカに名乗る名なんてねえよ」

「何?カッコつけのつもり?だったらあんたも…痛たた!」

 彩香はバットで殴りかかろうとしたが、逆に腕を抑えられ苦しそうにしてた。


「これ以上痛い目見たくなかったら、とっとと失せな」

「ちっ、覚えてろよ…」


「ふぅ、行ったかな…大丈夫…じゃないか」

 そう言っておぶって保健室に連れてってくれた。


「じゃあお願いします」

 天人さんは保健室を後にした。


「…お礼、言えなかったな…」


 その日以降、私は天人さんに会うことは無かった。

 

 私はこの時から天人さんを意識し始めてた。



****** 


 10月に入りようやく秋模様になったある日、家に帰ると玄関でお父さんがうつ伏せで倒れてた。


 私は少しホッとしてしまった。

 誰かの気配に気づき、視線を上げると恐ろしいほど引きつった笑みを浮かべるお母さんが立ってた。 

 

「お母さん!何があったの?誰がお父さんを…」

 ここで私は気づいてはいけないことに気づいてしまった。


「もしかしてお母さん…が…やったの?」

 何も答えない。


「ねえ!お母さん!」


 なにかブツブツと言ってるみたいだったから、近寄って聞いてみると。

「あたしはただ優衣を守りたくて…あたしは悪くない…あたしは悪くない…全部あの人が…」

 涙が出た。


 お母さんも辛かったんだ、なのに私…私…ずっとお母さんのこと…嫌ってた。

 私が殴られてるときに私関係ないみたいな顔してたから…。


「お母さん…大丈夫…もう大丈夫だから…見て、私こんなに大きくなったよ…」

 お母さんを落ち着かせつつ、警察と救急隊に連絡を入れた。


 ほどなくして警察と救急隊が来て、事情聴取されたが私自身混乱してたせいで、上手く答えられなかった。


 お父さんは死んで、お母さんは病院にしばらく入院することになった。

 

 私は1人になってしまった。


「これからどうしようかな…」


 なんて考えてるうちに小学校を卒業してしまった。


*****

 

 私は絶望の淵にいた。

 

"中学校に上がっても何も変わらない"

 

 そう思ってた。

 少なくとも放課後までは。


 入学式の後、私が彩香たちに絡まれてたら、間に割って入った人がいた。

 天人 六華さんだった。

 

 天人さんが助けに来なかったら今の私はなかったかもしれない。

 彩香たちは体育会系の先輩を連れてきて、天人さんを脅してたけど、それに動じず立ち向かう姿はすごくかっこよかった。

 

 まあ最終的に先生が来て止められたんだけどね。

 とにかく誰もケガしなくてよかった。



***** 



 天人さんに声をかける勇気が出ないまま、2学期になってた。


 夏休みが終わったのに天人さんは学校に来ない。


 篠田君ならなにか事情を知ってるかもしれない、そう思って勇気を出して声をかけてみた。


「あ、あの…」

「ん?姫宮さん、どうしたの?」

 わーどうしよう声を掛けてみたけど何て言ったら良いかわからない。


 なんてあわあわしてたら。


「六華のこと?」


 な…なぜわかった…。

 というか今"六華"って言った?

 もしかして2人って付き合ってるのかな…


「…うん」


「9月半ばまで入院してる」

 入院?どこか悪いのかな…心配だな…


「わかった、ありがとう」

「六華に用事?」

「う…うん、でも大した用事じゃないから大丈夫…です」

 やっぱり、この人に相談した方が良いのかな…  


「そうか、わかった」


 やっぱりまともに話せなかった。



*****

  

 9月半ばに天人さんは学校には来たが教室に来ない。

 

 朝、篠田君を見かけたから、話しかけてみた。

「篠田君、おはよう。ちょっといいかな?」

「おう姫宮、おはよう。どうした?」

「実は…」

 なんて言っていいかわからず戸惑う。


「相談があってね?変なこと言うけど良い?」

「うん。良いぞ」


 せーので言おう、せーの!

「私、天人さんに告白しようと思うの」

 言ってしまったー!


「そ…そうなんだ…へえー」


 多分今、私顔真っ赤。


「でもなんで六華なの?」


 私は過去の事や六華に助けられた話をざっくり話した。


「そっか…お前も大変だったんだな」

「うん…」

「事情はわかった。ただ…」

 ただ…なんだろう。


「ただ?」

「お前って俺と六華が付き合ってるの知ってたっけ?」


 やっぱり付き合ってたか…

 じゃあ私2人の間に割って入っちゃったんだ…

 私…なんてことを…


「…知らなかった」

「そうか…まぁ、俺はいいと思うぞ?」


 え?この人何言ってんの?彼女が他の人に取られるんだよ?黙って見過ごすの?

 

「いいの!?」

「ああ、他の男が六華を俺に寄こせって来たんならぶっ飛ばすけど、女の子だったら別に構わないぞ?」


 ホントにこの人大丈夫かな…いろんな意味で。


「ありがとう。私…その…全然勇気出なくて」

「そうか、そうだよな…」


 篠田君は申し訳なさそうにしてる。

 気にしなくていいのに…。


「私、がんばって告白してみるよ」

「おう、がんばれ」


 何はともあれ篠田君から協力を得られた。


*****


 篠田君に聞いたら、天人さんはどうも保健室にいるらしい、行ってみよう。


 保健室のドア前まで来たけど、未だに勇気が出ない

 きっと大丈夫、相手は異性じゃないんだよ?それを考えたら楽じゃないか。

 

 深呼吸して…よし!


「失礼します」

 反応が無いけど誰もいないのかな…

 もういないのかな?


「姫宮です。天人さんいますか?」

 次は私の名前を言って呼んでみる


「あれ?姫宮さんどうしたの?」

 よかった…いた。


「あ、いたいた。ちょっとお話いいかな?」

 思わず声が上ずる


「うん、どうしたの?」

 ああ、何度聞いても透明感のある綺麗な声だなー


「今日の放課後、時間ある?」

「大丈夫だよ?」

「じゃあ放課後体育館裏まで来てもらえる?」

「いいよ」

「ありがとう。じゃあまたあとで」

「うん、また」  


 私は保健室を後にした。



*****



 放課後


 私はドキドキしながら天人さんが来るのを待ってた。

 だけどまだ不安はある、来てくれないとか告白が成功しても断られるとか。

 

 溜息が出そうになったところで天人さんが来た。


「姫宮さん、お待たせ」

「ううん、そんな待ってないよ」

「で話ってなに?」


 がんばれ私、勇気を出せ。

 このチャンスを逃したら一生後悔する。

 つまり一世一代の大勝負ってこと、大げさかもしれないけど。

 

 それぐらいの覚悟を決めろ!

 断られてもいいじゃないか、なんせ相手は彼氏持ちなんだから。

 ダメでも友達になってくださいでいいじゃないか。

 

 まずは深呼吸して…よし! 


「あの…ずっと前から好きでした!私と付き合ってください」

 前傾姿勢を取りつつ右手を前に差し出す。


「…なんであたしなの?」

「前に助けてもらった時に、すごくかっこいいなって思って。それで…」

 言葉に詰まる。


 なんでこんな時に口下手な部分出ちゃうの…


「…いいよ?」

 え?今のでOKなの?


「…嬉しい!ありがとう」

「これからよろしく。姫」

「…実は私、姫って呼ばれるの好きじゃないんだよね…」

「そうなの?」

「…うん」


「えっと下の名前なんだっけ?」

「優衣」

「じゃあ、優衣これからよろしく」

「よろしく…六華」

 私は少し照れながら名前を呼んだ。



 こうして私と六華は付き合うことになった。 

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