14話 猛攻
お久しぶりの投稿となってしまいました。
最近忙しくなってしまって、大変申し訳ありません<m(__)m>
~猛攻~
俺を囲むように燃え上がる火炎の渦。
俺の周囲には真っ赤な壁が立ちはだかっていた。
逃げ場などない、高い火炎の壁が俺を憐れむような眼で見ているかのように見下していた。
「さぁ君の余裕の理由を見せてもらおうではないか」
この状況で先に口を開けたのは、ルナ教官だ。
「・・・」
自身の周囲が激しい火炎の轟音が俺を押しつぶそうとしているため彼女が放った言葉が耳に入るわけはなく俺は、ある一つのことだけを考えていた。
暑い、ただただ暑い。
一体、今ここは何度になっているのだろうか。まるでオーブンの中にいるみたいだ。
いや、今はとにかくこの状況をどうにかするか。
ふぅ、と俺は一息つき自分の襟にかけていた右手を真上に上げ、指を一回鳴らす。
「疾風滅裂」
静かにならした指の音が消えていくとともに俺の半径5メートルで激しい風が吹き荒れる。
俺を囲む炎を押し返す俺の嵐。
もちろん俺の嵐の被害はルナ教官にも及んでいる。
だがこれはただの炎除けだ、残念ながら人的被害はない。
数秒後、先ほどまで暑苦しかった松岡し、いや炎の壁は跡形もなく消し飛んでいた。
「さぁここから俺のターンだ。---」
---シャルル、メアリー&観客side---
ルナ教官が火炎蜥蜴を発動した場面まで時間を遡る。
「笑笑笑、あのラグナってやつ終わったな。馬鹿だよな、日常生活ならまだしも戦闘で杖を使わないなんてな笑。」
「あのルナお姉様の火炎蜥蜴から逃げられるわけがない、あいつのふざけた態度に制裁をしてやってくださいお姉様!」
会場内にはルクスに対する罵倒する声や嘲笑する者であふれていた。
ただ数人を除いて。
「ぐぬぬ。この者たちを燃やしてやりたい・・・」
「まあまあ、その気持ちはわかるけどここはルクス君を信じて待と?きっと彼ならどうにかしてくれるさ!」
そんな話をしながらルクスに熱い視線を送っているのはシャルル、メアリーだ。
彼女たちの手は固く、そして強く握りしめられていた。
「おぉ!出ました!ルナ先生の別名火炎蜥蜴サラマンダー、その由来となったこのAランク上位の魔術、炎舞 火炎蜥蜴サラマンダー! たった数発の火炎が敵を囲む摩訶不思議な魔術!この魔術に囲まれたら最後さらっさらな灰に!」
この実況をきっかけに今まで観客のぼそぼそとしていた罵倒、煽りなどが殻を破り大多数に向けた大きな声を誘った形となった。
今では会場内は完全にアウェー。
「「うぅぅぅ・・・」」
この空気に共に観客席にいたシャルルとメアリー押しつぶされようとしている。
その中、お互いの体は周囲の勢いに対しての怯えとその者たちに対する対抗心に影響され小刻みに震えていた。
---その程度なのか?
その声の主は、シャルルたちの横に佇み、戦っているルクスを見下ろしている。
「あっエリシア先生!」
(エリシア・・・ルクスが女子寮に入り込んでいるのを発見しその後ルクスが試験を受けるきっかけとなった人、鬼教師)
エリシアは、先ほどシャルルたちに放った言葉を繰り返す。
「その程度なのか?」
この言葉に対し、メアリーは反抗的に言葉を返す。
「そ、そんなわけ!ルクス君はルナ先生なんかに負けたりなんかしません!」
その言葉を聞いたエリシアは一つ小さな笑みをこぼし、視線をルクスからシャルルたちに向ける。
「そんなことは聞いてはいない、ルクス君ではなく君たちだ。」
シャルルたちの頭の上には?マークが浮かぶ。
エリシアは話を続ける。
「君たちの関係、思いはその程度なのか?と聞いたのだ。」
エリシアの長い黒髪の隙間から覗いていた彼女の瞳は曇りがなかった。
シャルルたちは質問の意味を理解した瞬間、そんなことはありません!と、主張する。
その言葉を聞くと先ほどとはまた別の笑みを見せ、シャルルの肩をたたき、人ごみの中へ消えていった。
その後のシャルルたちは震えることなくルクスに応援の視線を常に向けていた。
「・・・疾風滅裂」
ルクスを囲んでいた火炎の壁がかき消される。
その光景が先ほどまで騒々しかった会場に静かな海岸にいるような感覚に陥るほどの静寂を誘う。
会場にいるすべての人間が今自分の目の前で起こっている“事件”について理解が追い付かない状態であろう。
ほとんどの生徒は口を開けたまま唖然としている。
シャルルたちもまた例外ではなかった。
「メ、メアリー、今一体何が起こったんだ?」
シャルルは、少々震える唇を無理やり開けて隣に座っているメアリーに声をかける。
「・・・えーーーーーーーーーーーー!!!!」
メアリーは、まるで世界の終末が訪れたかのような大きな声を張り上げ立ち上がった。
その声は静まり返っていた会場内に反響しおそらくここにいるすべての生徒、教師の耳に届いただろう。
「う、うそでしょ・・・」
メアリーのこの発言は今この会場内にいるすべての観客の言葉を代弁している。
静まり返ったこの会場でルクスの反撃が始まる。
---ルクスside---
「えーーーーーーーーーーーー!!!!」
っ!!なんだ、急に。
誰だよ、ようやく静かになったってのにでかすぎるだろ声。
観客席に意識を一瞬向ける俺。
その瞬間をルナ教官は見逃さず続けて攻撃を叩き込む。
「基礎の炎よ、我が敵を穿て!火炎弾。この大地に赤き豪雨を! 炎舞 赤き五月雨」
彼女の詠唱完了とともにまず一直線に俺に向かう直径1m以上ある火の玉が一つ。
その球はこの会場の静寂を絡めながら乱れることなく等速度運動しながらきれいな一線を描く。
さらにその後方から無数の赤い矢のようなものが放たれる。
無数の矢はアーチ状に軌跡を描き、火の玉を援護するかのように俺に向かってくる。
その光景はまるで地面に向かって花火が誤って爆発を起こしてしまったようであった。
見ればわかる。この攻撃をすべて受けてしまうと死にかねない!
そう本能と経験が言っている。
そう考えているうちにも火の玉と矢は近づいてくる。
あぁ縄にかけられる動物ってこんな気分なんだ。
逃げ場がない。
たとえ逃げるために後ろに下がっても火の玉でノックアウト。
上に飛んだとしても矢でノックアウト。
左右もまた同じように矢でノックアウト。
正面から魔術をぶつけようとしても相手は上位ランカー、勝てるとは思えない。
あぁ\(^o^)/オワタ
まあ普通の人間ならそう考えるだろう。
だがしかし! 俺を甘く見ないでほしい。
なんてったって俺は元魔王だ。
やられてたまるもんですかってね。
それにさっきせっかく俺のターンだなんてくさいセリフも吐いてしまったしな。
やるしかないだろ、反撃を!
「対魔術 無効化術式 改!」
対魔術 無効化術式 改、ある一定の威力の魔術を消滅させることができる術式。
俺が魔王だった時に、もし魔術師が攻撃を仕掛けてきても対処できるようにと部下のやつにこの術式を叩き込まれた。
今思うと部下に術式を叩き込まれる魔王ってなんなんだ?
上司としての威厳はあったのだろうか。
そんなことを考えつつ俺は向かってくる火の玉に対して右のこぶしを後方に構える。
俺と火の玉の距離、4m...3m...2m...1m!!
ここだぁぁぁぁ!!
俺のこぶしが火の玉と衝突する。
その瞬間視覚でとらえられていた火の玉が消滅する。
残りは火の矢。
・・・無効化術式を使いたいとこだが、残念ながらこの術式は自身の体が触れた瞬間発動する。
まあ火の矢が当たる瞬間に発動することも不可能ではないがそれ相応の危険が伴う。
俺は、そんな命知らずではない。
正直、タンマ! と言いたいところだけれども矢は否応なしに俺に向かって降下してくる。
俺は天井を見上げる。
赤い矢は、俺と天井の空間を支配している。
俺に矢がヒットするまで数秒。
俺よ、頭を回せ。
・・・・・・!
雨が降るなら傘を差せばいいじゃない!
簡単な話じゃないか。
なにを俺は考え込んでいたんだ。
よしっ!
俺はいったん跪き両手を地面につける。
魔力は地面に接している両手に集中させる。
「地形創造!」
一気に地表に魔力を送り込み素材はそのまま、地形を作り直すことが可能になる。
俺は、地形創造で自身の真上を主軸に矢があたる可能性がある範囲を覆う。
どうやらこの会場の床の素材は土ではなかったらしい。
少々頑丈な傘ができた。
だが、雨のように降り注ぐ矢をすべてこれで受け止めるには所々不安が残る。
そこは新たに魔術をこのおおきな傘に付与する。
・・・素材強化
その名の通り素材の強度を増加させる付与強化魔術だ。
これで赤い矢を完全に防ぐことができるだろう。
あとは雨が降るまで待つ。
・・・来た!
俺の頭上で金属同士がぶつかり合うような激しい金属音が鳴り響く。
・・・終わったか。
さすがは上位ランカーのルナ教官。
このままだと押され続けて終わりそうだ。
・・・よし、やるか。有言実行の7代目魔王と言われたことがあるほどの俺だ。
これからだ! 本当の試験は!!
称号
「風を支配するもの」「ガーディアン」「魔術破壊者」
を獲得しました。




