開戦 -4-
「前口上は省こう」
レインが言った。『連盟』に所属する各国の代表者たちは未だ動揺から解放されていない。レインが冷静になる時間を与えていないのだ。もちろん、意図的に。
「『月の王国』、『魔族と契約した国』、『始まりの王国』。どのような呼び名でも構わないが、今、『連盟』が権利を所有するあの国について話したいことがあって来た」
そう言った瞬間、彼らの動揺がさらに大きなものとなった。レインはそれを見て続ける。
「いや、違うな」
レインはテーブルに肘を付き、言う。
「『お前らの方が』帝国に話さなければならないことがあるのではないか?」
動揺はさらに大きくなる。今度はすぐに何か言うことはない。彼らの内の一人が冷静を顔に貼り付けて言う。
「何のことかわからないな」
その言葉に周囲の代表者は驚きの顔を見せる。致命的な失態をやらかしたバカを見るような目をする。
レインは笑う。
「なあ、愚民。『帝国』が何の根拠もなしにこんなことを言うと思うか?」
その言葉に失態を犯した者が息を呑む。レインは続ける。
「帝国を、私を騙すことがどういうことか、考えられる頭もないのか?」
その言葉に『連盟』の代表者たちの全身からどっと冷や汗が噴き出した。死を感じた。中には恐怖で動けなくなっている者も居たが、皆がそうであるわけもなかった。『連盟』に加盟する国の中で最も大きな力を有する国、『地の王国』の王が口を開いた。
「失礼。彼はどうやら帝国を、あなたを口で丸め込めると思ってしまったらしい。しかし私はそうでないことを知っている。正直に、腹を割って話そう」
「わかった」
レインは言った。
「なら私からだ。帝国が要求するものは『月の王国』の権利だ。私は戦争などしたくないが、お前らが望むのならば仕方ないことだと考えている」
その言葉にほとんどの者は息を呑むことしかできなかった。まるで刃を首に添えられたような気分である。しかし『地の王』はすぐに言った。
「そうか。なら次は私だな」
それにレインはふっと笑う。
「そうだな。話せ」
「『連盟』は帝国の名を利用しその評価を傷付けた」
「ああ、そうだな」レインは言う。「では、交渉といこうか」
「拒否する」
「そうか、わかった」レインは言う。「なら、心苦しいが、仕方ないな」
レインは席を立った。『連盟』の者たちのほとんどが『地の王』に向かって『何てことを言ったのか』と非難の目を向けている。しかし訂正する素振りを見せないことからもわかるが、やはり『月の王国』の権利はそれほどまでに手放したくないものらしい。
そして、レインは笑った。
笑って、言った。
「開戦だ」




