青い名を持つ人間の業火
俺は初音と共にプレパパ・ワークショップに出席し、産後の妻のメンタルフォローや、具体的にどういった事に気をつけなければならないか等を学んできた。
ずっしりと重い赤ん坊の人形を相手にした、抱き方や肌着の着せ方の練習。
頭では分かっているつもりでも、いざやってみると全然慣れておらず、本当に今回出席して良かったと心から思う。
ただ、この教室は固定メンバー制だ。「室生さん……前回の旦那さんと違う……」と、当然のように教室内をザワつかせてしまったが、そこは事前の打ち合わせ通りだ。
「初音の兄で〜す。義弟がどうしても出席できないので、妹が可哀想で俺が代わりに出席しました〜」
俺は完璧な営業スマイルで、なんとかその場を乗り切った。非常に有意義な時間であったものの、休憩中には腹立たしい言葉も聞こえてきた。
「室生さんの旦那さん(※雨宮のことだ)、すっごく素敵だったからもう一度逢いたいな〜。赤ちゃん産まれたら、みんなで逢おうよ!?」
(人様の家庭に波風立てるような提案すんじゃねーよ! 雨宮の奴が、よその家庭を破壊しまくる未来しか見えねぇぞ!)
俺は内心で盛大にツッコミを入れつつ、顔を引きつらせながら会話に割って入った。
「ははは。義弟は色男過ぎて、周りで諍いが絶えなくなるから、あまりお勧めはできませんね〜」
やんわりと『やめとけ、お前のためだ!!』と警告しておく。
俺はかつて、あの青い名を持つ人間の業火に焼かれた。これ以上の被害者を出さないための、せめてもの親切心である。
そんな俺の内心の苦労をよそに、初音は終始楽しそうに、そして熱心に学んでいた。
色々とバタバタはしたが、お互いに出席できて本当に良かったと思っている。




