惟光の正体とまさかの右側
あっけなく絵の問題は解決しそうだったので、雨宮が帰った後、俺は従兄弟の律と久々に積もる話に花を咲かせていた。
例の光が食事を摂らなくなった一件から、厨房のシフト編成を大幅にと変えたこと。
腐女子連合と陸派のせいで、ハザマが危うくBLの世界に足をつっこみそうになった話。
そして、腐女子連合と白川家の組み合わせで、あわや俺までもがBLの世界に引きずり込まれかけたことを話すと、律は腹を抱えて笑い転げていた。
ひとしきり笑った後、律は急に真面目な顔をして言った。
「常々思うんだけどさ、水って『記憶媒体』なんじゃないかなって思うんだよね。水辺で霊を見たり、ジメジメしたトンネルで色々なものが視えたりするからさ。料理なんて、ほとんど水でできていると言っても過言じゃないよね? 出汁をとる時、食材の栄養と一緒に作った人間の念や情報が水に溶け出す……凄い情報量だと思う。それを食べて体内に吸収するわけだから、当然影響されるよね」
「リッつんは、割と論理的に話を展開するんだな」
「それはそうと、ハザマが御影のことを心配してたよ? 御影は初音と付き合うようになってから、彼女に影響されて人を疑わなくなったって」
「そうか? 昔と変わらず、サイコメトリー使って疑いまくってるぞ?」
「じゃあ、惟光の事は?ちゃんと調べてないでしょ?」
痛いところを突かれ、俺は言葉に詰まった。
「だって、惟光は白川の人間(身内)だし……」
「じゃ、これ。この同人誌、惟光から借りたものだから、ついでに返しておいて貰える? 僕は父さんに絵の問題は解決しそうだって報告してくるね」
立ち上がった律は、去り際に振り返って付け足した。
「ハザマに礼を言っといた方が良いと思うよ〜」
嵐のように律が帰った後。
俺は一人部屋に残り、震える手で、惟光が購入したという『室生家御用達のBL同人誌』に触れ、その残留思念を読み取った。
—————涙が、頬を伝う…………。
アイツ! 腐男子だったのかよ!!
だから、わざわざあんな危険なシフトに変えたのか!?
裏切り者めが!
しかも、カップリングは『ハザマ × 御影』。
俺が右(受け)!?
ドラマや小説で「飼い犬に手を噛まれる」という使い古されたセリフがあるが、まさか自分の人生で、ここまで痛感しながら使う日が来るとは思わなかった。




