男たちの最低な翻訳
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気まずい沈黙が部屋を支配する。お互いにそれに耐えられなくなった時、初音がパッと顔を上げた。
「光様の様子を見てからお話しますね」
彼女は逃げるように立ち上がり、光の体が鬱血しないよう体位を変えにいってしまった。
そんな折、入れ替わるようなタイミングでハザマがやって来た。
「おい御影。お前んとこの白川の犬は、一体何をしでかしてくれるんだ? また私はBLの世界に足を踏み入れるところだったぞ」
俺は、厨房のシフト——白川派と腐女子を組ませた件で、さっそくハザマからお叱りを受けた。
「俺の方だって、もう少しでBLの世界に足を踏み入れるところだったんだよ。しょうがねーだろ、惟光は事情を知らなかったんだから」
「御影は、惟光のことを信用しすぎだぞ」
ハザマの惟光不信は、今に始まったことではない。
やがて光の世話を終えて戻って来た初音は、ハザマに自家製ドクダミ茶を出した後、気まずそうに雨宮の件について話しだした。
「あの……青児さん、妊娠した女性を描いた事がないらしくて。女性のふっくらとしたお腹に生命が宿っている神秘をどうしても描き切りたいと。体全体ではなく、胸の少し下とお腹の部分だけ肌が出ていれば良いそうなんです」
俺はその言葉を聞き、初音にキツく釘を刺した。
「男として雨宮の言葉を翻訳してやるとだな。『一度も妊婦とヤッたことないから、してみたい』だ。絶対そうだ」
すると、横でドクダミ茶を啜っていたハザマまで、同調するように深く頷いた。
「月島の遺伝子を通して青児の言葉を翻訳するとだな。『モデルになってくれと女性の自尊心をくすぐり、有頂天にさせて関心を惹きたい。そして、キャンバスに筆でなぞられ描かれている女の恥じらう様子を逐一視姦したい』……だな、きっと」
「お二人は、青児さんが純粋に芸術のために描きたいと思っていらっしゃらないのですね……悲しいです」
初音が心外だというように眉を下げるが、俺は断固として譲らない。
「まともな奴は、画材のテレピン油にスコポラミンを混ぜて襲おうとはしないぞ……俺はまだあの時のこと、許してないからな」
「青児さんのアトリエにはお母様もいらっしゃいますし、前みたいな無茶な事はできないと思うんですけれど……」
相変わらず雨宮の芸術家としての顔を信じている初音に溜め息をつきつつ、俺は結論を出した。
「今度、例の贋作疑惑の絵のことで雨宮に直接相談しに行くつもりだ。だから、モデルの件はその時に俺が会って条件を決めようぜ」
取り敢えず、初音にはしっかりと釘を刺しつつ、俺はいよいよ雨宮青児に会う覚悟を決めた。




