SP1:游筱安の密かな尾行
「バイバイ!」
「またね!」
今日、游筱安が所属するバレーボール部は放課後の練習がなかったものの、部活に関するちょっとしたミーティングがあった。ミーティングは順調に進み、わずか三十分ほどで解散となった。部活の友達と別れを告げ、游筱安は校門を出た。
(待って、前にいるのって?)
門を出た途端、游筱安が顔を上げると、男女が肩を並べて歩いている人影が目に入った。その背の高い男性の後ろ姿を、游筱安は〇・五秒で兄の游暐安だと認識した。そして隣にいる女は、一際目立つ金髪のロングヘアで、あの女以外に考えられなかった。
どうしてこの時間になってゆっくり校門を出てきたのだろう?たぶん日直でもやっていたのだろう。一緒に帰るのは百歩譲るとしても、よりによって自分の目の前で見せつけられるなんて。以前からあの女には近づかないよう兄に警告していたのに。今は兄の安全を確保するため、少し離れたところからこっそり尾行するしかない。
校門から少し離れた。幸いここは人口の多い街で、道には仕事や学校終わりの人波が続いている。人が多い場所なら、彼女もそう簡単には手を出せないはずだ。だが万が一に備え、やはり見張っておかなければならない。
游筱安は少し歩調を速め、二人があんなに楽しそうに話している話題が一体何なのか、聞き取れないか試してみた。
「アハハ、そうだね。」
「でも、うちのクラスのあの……」
「ゴォォォ――」
「ビュー、ビュー」
道路の車や強風が引き起こす様々な騒音がうるさすぎて、二人の会話から具体的な内容を聞き取るのは難しかった。これ以上近づけば、尾行していることがあっさりバレてしまうだろう。
「ピコン――」
その時、游筱安はポケットの中のスマホからメッセージの着信音が鳴るのを感じた。通知音が少し大きかったが、幸い二人との距離がそこまで近くなかったため、聞かれずに済んだ。
「明日の国語のテストってどの単元だっけ?今日先生が言ってた時、よく聞こえなくてさ。」クラスメイトからのメッセージだった。
「それは本当によく聞こえてないね。」游筱安はため息をつき、「国語のテストは来週だよ。」と送信した。
スマホをポケットにしまって再び顔を上げると、尾行していたはずの二人がいつの間にか、瞬時に視界から消え去っていた。
さっきメッセージを返すのにそんなに時間はかからなかったし、遠くまで行けるはずがないのに。慌てた游筱安は少し小走りになり、二人が一体どこへ行ったのか確かめようとしたが、やはり全く痕跡が見当たらない。これ以上先に進むのはあり得ない。途中で突然何の理由もなく全力疾走でもし始めたならともかく、そんなに前へ行けるはずがないのだ。もしかして、さっき人混みのどこかで見落としていて、本当はまだ後ろにいるのだろうか?
そこで游筱安は来た道を引き返し始め、視線を巡らせて二人の姿を探した。
その時、前方十メートルほどにあるコンビニの自動ドアが開き、入店音が鳴り響き、邱艾晶と游暐安の二人が中から出てきた。
どうやら、游筱安がメッセージを返している間に、ちょうど二人はコンビニに入っていたらしい。だが、彼らはこれから游筱安のいる方向へ歩いてくる。早くどこかへ隠れないと見つかってしまう。
「もう、なんであそこにいるのよ……」歩道には身を隠せる物が少なく、游筱安は仕方なく街路樹の下の低い植え込みに隠れることにした。
しゃがみ込んで体を植え込みの中に押し込めながら、葉の隙間から二人がいつ遠ざかるかを盗み見し、同時に見つからないことを祈った。
二人の話し声がだんだん近づき、目の前を通り過ぎた後、再び小さくなっていった。幸い、彼らはお互いに夢中になっており、怪しい場所へ気を留めることはなかった。
(そろそろかな。もう遠くまで行ったみたい……ん?これって?)
游筱安の視線は二人の足取りを追って左へ移動し、ふと自分の左肩に異物があるのが見えた。目を凝らしてよく見ると、一匹の蝶が左肩に止まっていたのだ。
「きゃあぁ――っ!!」
游筱安は昆虫の大半に強い恐怖心を抱いており、突然決して小さくない蝶に体に止まられ、一瞬恐怖のあまり叫び声を上げてしまった。
「今、何か音しなかった?」
「分からない、車の急ブレーキの音じゃない?」
幸い、邱艾晶と游暐安はすでに遠くへ離れていた。悲鳴は耳に届いたものの、あまり気にも留めず、すぐに元の話題に戻って家への道を歩き続けた。
游筱安は蝶に驚かされ、蝶も游筱安の悲鳴に驚いて飛んでいった。少し心を落ち着かせた後、游暐安たちが帰る方向へと顔を上げると、まだ視界の範囲内にいて見失っていなかったため、すぐに歩調を速めて後を追った。
「お兄ちゃん、なんで今日もあの女と一緒に帰ってきたの!」家に帰った後、游筱安は游暐安に向かって腹を立て、すねてみせた。
「ん?お前、さっき俺たちの後ろについてきてたのか?」
「たまたま見かけただけ!言っておくけど、あの女に関わっても絶対いいことないんだから、やっぱり離れた方がいいよ!」
この時の游暐安は知る由もなかった。游筱安のその言葉のいくらかは、無実の蝶に対する八つ当たりが混ざっているということを。




