第十八話 人の心を操る歌声
その時、どこからともなく美しい歌声が聞こえてきた――
満員電車に揺られながら
賑やかな駅で迷子になりそうな方向感覚
心に響く 私だけに聞こえるアナウンス
永遠に道を指し示す明かり 私のコンパス
甘く透き通るような歌声が宙を舞い、質素な部屋にほんのりと甘い雰囲気を添えた。ふと下を見ると、二人の手はまだ繋がれたままで、互いの気持ちが通じ合う手のひらから、歌声の魔法にかかったように心臓の鼓動がリアルに伝わってくる。よく見ると、游暐安の両目、その吸い込まれそうなほど魅力的な瞳の中には、自分の姿が映っていた。この瞬間の彼の眼差しは、誰に対する時よりも真剣だった。薄い唇からは、濃厚で人を惑わすような色気が漂っている。ラブソングが響き渡るこのシチュエーションの中、胸の奥のドキドキはとっくに限界を超え、頭がおかしくなりそうだった。この甘い空気に当てられて、思わず目を閉じ、ただ触覚だけでそのしっとりとした柔らかな感触を味わい尽くしたくなる。いつの間にか、二人の手は互いの背中に回り、無意識のうちに唇を尖らせ、どんどん、どんどん近づいていき……
「……」
先ほどの甘い歌声がぷつりと途絶え、二人は我に返って気づいた――
(あああ!私何やってんの、今の一体何だったの!?)
(いつの間にこんな体勢になってたの!?恥ずかしすぎる……)
どこからともなく聞こえてきた歌声。心地よいメロディーと、まるでウグイスのさえずりのように美しい歌声が相まって、二人をすっかり理性を失うほど夢中にさせてしまったのだろう。甘いムードを誘う歌声から現実世界に引き戻された二人は、今の状況がヤバすぎたことにようやく気がついた。二人は慌てて手を離し、熱くなりすぎた体温をできるだけ冷まそうと手で仰いで風を送った。
お互いに落ち着きを取り戻した後、まずは急いでシャワーを浴びて綺麗な服に着替える必要があった。あれだけ雨に濡れたのだから、このままでは本当に風邪を引いてしまう。邱艾晶はロングヘアで髪を乾かすのに時間がかかるため、普通に考えれば游暐安が先にシャワーを浴びた方が効率的だ。そうしなければ、邱艾晶が髪を乾かし終わる前に游暐安がシャワーを終えてしまうかもしれない。しかし、自分はただ泊めてもらう身であり、さらに邱艾晶の方がひどく雨に濡れていたこともあって、游暐安は遠慮して先にお風呂を使うことはしなかった。邱艾晶がシャワーを浴びている間、游暐安はコンビニへ二人分の夕飯を買いに行き、残りの時間は椅子に座ってスマホをいじっていた。
「あ、おかえり。お待たせ。」邱艾晶はすでに部屋着に着替え、長い髪をタオルで頭の上にまとめて浴室から出てきた。ドライヤーは部屋にあるため、この格好のまま部屋に戻って髪を乾かさなければならない。
「先にお風呂入る?私もう終わったよ。」
「大丈夫、俺は後で入るよ。すぐ終わるし。」
邱艾晶はドライヤーを手に取ってコンセントに繋ぎ、頭のタオルを外して髪を乾かし始めた。ドライヤーのモーター音はかなり大きい。邱艾晶の髪の長さだと、この間のイメチェンで少し梳いたとはいえ、一回乾かすのに十五分はくだらない。普段、この十五分間は邱艾晶にとっての瞑想タイムだ――といっても、わざと瞑想しているわけではなく、他のことができないので、髪を乾かしながらぼーっとするしかないだけだ。
(そうだ、今朝游暐安に相談しようと思ってたこと、やっぱり後で話してみよう――あれ?)
「俺が乾かしてやるよ。どうせ今やることないし。」邱艾晶が瞑想の真っ最中だった時、游暐安はごく自然に彼女の手からドライヤーを受け取り、もう片方の手でゆっくりと邱艾晶の髪をすくいながら、まるで手慣れているかのような手つきで髪を乾かし始めた。
次回予告:超無責任な調査によれば、女子が最もときめく行動の一つと言われる「髪を乾かしてあげる」を、游暐安はなんの気なしにやってのけた。いや、ここで彼に完全に主導権を握られるわけにはいかない。彼がお風呂から上がったら、邱艾晶は絶対に同じことをしてやろうと決心するのだった。
次回:ドライヤー争奪戦




