第十七話 出生の秘密
「え~~なんだ、妹さんだったんだ。」ずっと勘違いしていた「彼女」が実は游暐安の妹だったと知り、邱艾晶はこれまで自分が一体何のために思い悩んでいたのかと呆れ返った。自分が悲劇のヒロインだとすら思っていたが、今思い返すと本当にバカみたいだった。
游暐安の妹は游筱安といい、林谷高校の一年五組に在籍し、学校のバレー部にも所属している。この前、邱艾晶の誕生日を祝うために教室を使ったのも、游暐安が游筱安を通じて交渉してくれたからだった。もちろん、誰の誕生日を祝うのかは具体的に伝えていなかった。もし「邱艾晶」だと聞いたら、絶対に手伝いを拒否しただろうからだ。本来なら今日もバレー部の練習日だったが、定期テスト一週間前になると、重要な試合を控えていない限り、すべての部活動は例外なく活動停止となる。そのため、今日は游筱安も游暐安と一緒に帰るはずだった――のだが、予期せぬ突発的な事態が起きたため、游暐安は游筱安を少し冷静にさせる必要があると判断し、邱艾晶の家に泊めてもらうことになったのだ。
「でも、筱安はなぜか君のことを特別嫌ってるみたいなんだ。ほら、前に一度、俺たち一緒に日直やって一緒に帰ったことがあっただろ?あの時、俺が家に着いてドアを開けたら、あいつも後から入ってきてさ。あいつ、ずっと俺たちのこと尾行してたんだよ!しかも俺を見るなり、開口一番『あの女から離れろ』って言ってきて。理由を聞いても、口ごもるだけで何も言わなくてさ。」とはいえ、やはり自分の妹である。他人の前で悪口ばかり言うのも良くないと思い、游暐安はすぐに言葉を続けた。「あ、でも、あいつ実は結構思いやりのある奴で、学校でもバレー部の仲間とはうまくやってるみたいなんだ。ただ、クラスではあんまり同級生と関わってないらしくて。見た目がちょっと冷たく見えるからかもしれないけど、家では普段、俺に結構甘えてくるんだよね。たぶん、俺が君と親しくなるのが嫌だっただけだと思う。君たちもちゃんと話してみれば、きっとうまくやっていけると思うよ。もちろん、君が嫌なら無理しなくていいし、あいつには俺からまたちゃんと言い聞かせておくから。」
「じゃあ、もう一つだけ聞きたいことがあるんだけど、答えてくれる?」邱艾晶は少し恥ずかしそうに尋ねた。
「何?」
「その……最近、私の気のせいかもしれないけど、少しだけ私を避けてるような気がしてて。それも、これが理由だったの?」
「あー、たぶんそうかな。君をずっと避けたかったわけじゃないんだけど、無意識のうちに筱安に見られるのを怖がってたのかもしれない。」
その言葉を聞いて、邱艾晶は少し安心した。今後も游暐安は「誤解を避ける」ために自分と少し距離を置くかもしれないが、妹とはちゃんと話し合うと約束してくれたし、游筱安のことで彼女に影響が及ぶようなことはしないと言ってくれた。何より、游暐安が自分を嫌って避けていたわけではないと分かっただけで、彼女の心を安堵させるには十分だった。
「ということは、游暐安の家には、あなたと妹さんの他に誰かいるの?こんな風に勝手に私の家に泊まりに来て、家族に言わなくても大丈夫なの?」
「うちには妹の他に母さんがいるよ。父さんは普段地方で仕事してて、たまにしか帰ってこないんだ。でも、俺はよく許柏言たちの家にも泊まってるから、メッセージで言っておけば、母さんもそれ以上口出ししてこないよ。とにかく、俺たちと母さんは、すごく仲が良いってわけじゃなくて……いや、家族仲が悪いわけじゃないんだけど、お互いの領域には干渉しない、たまに一緒にご飯を食べるルームメイトみたいな関係かな。それで、邱艾晶は?なんで君は一人暮らしをしてるの?なんだか想像つかなくて……」
「想像つかないって、私が何もできないダメ人間だと思ってるから?」邱艾晶は拗ねたように頬を膨らませた。
「あはは、違うよ。」游暐安はばつが悪そうに笑って弁解した。「この年で一人暮らししてる人って、あんまりいない気がしてさ。君の家族は?」
「私の家族か……」邱艾晶の顔色は突然曇り、重々しい口調で語り始めた。
「私、一人っ子だから、幼い頃から兄弟姉妹がいるってどんな感覚なのか知らないし、同世代の遊び相手もいなくて、ずっと『自立して強く生きなさい』って教えられてきたの。まあ、その頃は彼らの言う『自立して強く生きる』が具体的にどういうことなのか、全然分かってなかったけど。その後、私が七歳の時に、両親は価値観の違いで離婚したわ。あの時はまだ小さかったから、心の準備なんて全然できてなかったし、お父さんとお母さんが離婚した後の生活が自分にどんな影響を与えるかなんて、想像もできなかった。ただ、前みたいにお父さんとお母さんと一緒に楽しく過ごせなくなるのが悲しかっただけ。でも、私にはどうすることもできなかった。結局、私はお母さんと一緒に暮らすことを選んだの。家には私たちしかいないから、たくさんの家事を手伝わなきゃいけなかったし、お母さんは仕事で帰りがいつも遅かった。学校から帰ってきてから、お母さんが帰ってくるまでの長い時間、私は一人で宿題をして、お風呂に入って、家事をして、お母さんが前日に用意してくれた夕ご飯を温めて食べて……。本当にたくさんのことを一人でやらなきゃいけなかった。だから私、あの頃からずっと一人でいることに慣れてるの。でも、その後……」
話し終わらないうちに、邱艾晶は言葉を詰まらせ、これ以上話せないかのようにむせび泣き始めた。游暐安は邱艾晶の背中を優しく撫でながら、彼女の心の傷を不用意に抉ってしまったのではないかと少し自責の念に駆られた。
「大丈夫?無理して話さなくてもいいんだよ。」
「ううん、大丈夫。」邱艾晶は首を横に振り、鼻をすすって、わざと気丈に振る舞いながら話を続けた。
「その後、高校に上がる前の夏休みに、お母さんが交通事故で亡くなっちゃって。だから私、ここで一人で暮らしてるの。ここの生活にもう慣れちゃってたから、お父さんのところへは戻らなかった。でも今は、お父さんが毎月送ってくれるお金で生活してるわ。」彼女は自分を奮い立たせ、今の生活にしっかりと向き合う決意をしたような表情を見せた。
話し終わった後、数十秒の沈黙が空気を包んだ。やがて游暐安は少ししゃがみ込み、邱艾晶と同じ目線になって彼女の目を真っ直ぐに見つめた。
「辛かったね。君がそんな過酷な環境で育ってきたなんて知らなかった。」そして彼は次に何と言えばいいのか分からなかったが、無意識のうちに邱艾晶の手を握りしめ、心の中で彼女へ静かにエールを送った。そして、これからは自分が必ず邱艾晶を支え、彼女が安心して頼れる心の拠り所になろうと密かに誓った。
邱艾晶は手のひらから伝わる温もりを感じながら、自分の話が少しやり過ぎだったのではないかと内心思っていた。
実際のところ、人間界で生活する翼族姫である邱艾晶には、当然ながら本来「家族」という概念など存在しない。強いて言うなら、羽帝や他の翼族姫、そして民たちこそが家族のような存在だろう。しかし、翼族姫であるという正体を人間に知られ、大混乱を引き起こすのを避けるため、先ほど語った偽の身の上話はすべて、人間界で尋ねられた時のためにあらかじめ用意しておいた作り話だったのだ。この作り話は、万が一に備えてすべての翼族姫がそれぞれ事前に考えておくべきものであり、もし方雨彗や簡彤菲に聞いたとしても、彼女たちもまた、それぞれが一人暮らしをしている理由についてもっともらしい説明をするだろう。それに加え、マスコミュニケーション部で鍛え上げられた邱艾晶の演技力も相まって、見事に人を騙しきることができたのだ。本当は邱艾晶自身も嘘をつきたくなかった。ましてや、こんなにも気まずい空気になることが分かっているならなおさらだ。しかし、自分の正体を隠し通すことはすべての翼族姫の義務であり、この事に関しては一切の妥協は許されなかった。
次回予告:邱艾晶の家の中で、突然謎の歌声が響き渡り、二人は理性を失いそうになる。その歌声はとても心地よく、なぜか人の理性を狂わせるような衝動を呼び起こすのだった。その瞬間、手を繋いだままの二人は見つめ合い、お互いの距離がどんどん、どんどん縮まっていき……
次回:人の心を操る歌声




