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EP 9

戦いの後は、空飛ぶカジノと巨大温泉で

「あ、あんた……ほんまに魔王より恐ろしいで……」

空になったポップコーンのカップを握り締めながら、ニャングルが震える声で絞り出した。

隣に立つリバロンも、ハンカチで額の汗を拭いながら深く頷いている。

「そうか? ただの害虫駆除の延長戦みたいなもんだろ」

「どこがやねん! マップごと更地にするような火力が、定食屋のオヤジの持ち物であってたまるかぁっ!」

「まあまあ。せっかくの機会だし、少しこの船の中で遊んでいかないか? 地上はまだ焦げ臭いだろうし」

リアンはニコリと笑うと、VIPルームの奥にあるエレベーターのボタンを押した。

チーン、という小気味良い音とともに扉が開く。

「さ、案内するよ。――ようこそ、轟丸のレジャースペースへ」

エレベーターを降りたキャルルたちが目にしたのは、ここが軍事用の空母の内部であることを完全に忘れさせるような、極上のエンターテインメント空間だった。

「う、わぁぁぁ……っ!」

キャルルが思わず声を漏らす。

目の前に広がっていたのは、煌びやかなネオンが輝く『カジノエリア』。

その奥には、ズラリと品物が並ぶ『アーケード商店街(売店)』。

さらには、『大浴場(サウナ付き)』と書かれた暖簾まで揺れている。

リアンが前世の知識と『ネット通販』のスキルを総動員して内装をカスタムした、究極の引きこもり空間である。

「リ、リアンさん! あそこの『無料バイキング』って書いてあるコーナー、本当にタダなんですかっ!?」

「ああ、リーザちゃんは好きなだけ食べてくれ」

「神様ぁぁぁっ!」

貧困人魚姫のリーザが、カニの足やローストビーフが積まれたバイキングコーナーへと、弾丸のような速度で突っ込んでいく。

「カ、カジノまであるやんけ……! ルーレットにスロット……ちょっと視察させてもらいまっせ!」

「……ええ。ポポロ村の財源確保の参考に、私も少し(ブラックジャックを)見ておきましょう」

商人ニャングルと執事リバロンも、大人としてのポーカーフェイスをかなぐり捨て、欲望のままにカジノエリアへと吸い込まれていった。

ルナに至っては、「あ! ゲームセンターがある!」と言って、クレーンゲームの筐体に張り付いている。

「すごい……本当に、何から何まで揃ってるんだね。あの兵器の塊の中に、こんな空間があるなんて……」

一人残されたキャルルが、呆然と辺りを見回していた。

最強の武闘派である彼女は、王族の籠の鳥であることを嫌って国を出た。ファミレスでの女子会や、銭湯を楽しんでいた彼女にとって、この空間はまさに『理想郷』そのものだった。

「キャルル。こっちへおいで」

リアンに手招きされ、キャルルは備え付けのカフェテラスへと案内された。

テーブルに座ると、リアンがスッと一つのグラスを差し出す。

「戦いの後は、甘いものが欲しくなるだろ?」

「これ……っ!」

キャルルの瞳が、星のように輝いた。

グラスに盛られていたのは、瑞々しい真っ赤なイチゴが山のように乗った、特製の『特大ストロベリーパフェ』だった。

下層にはサクサクのコーンフレーク、濃厚なバニラアイス、そして自家製のベリーソースが美しい層を作っている。

ポケットに常に飴玉を忍ばせているほど甘いもの好きなキャルルにとって、それは魔法の宝石よりも魅力的な物体だった。

「た、食べていいの……?」

「キャルルは俺の店(ポポロ亭)の、記念すべき最初のお客さんだからね。サービスだ」

「いただきますっ!」

キャルルはウサギ耳をピンと立て、長いスプーンでパフェをすくい、パクリと口に入れた。

「んんんんんん〜〜〜〜っ♡」

濃厚なクリームの甘さと、イチゴの甘酸っぱさが口の中で爆発する。

闘気で張り詰めていた彼女の筋肉が、一瞬にしてふにゃふにゃに溶け落ちていく。

「おいしぃぃぃ……! ファミレスのパフェも好きだけど、これ、今まで食べた中で一番美味しい……っ! 脳が、幸せでいっぱいになるよぉ……」

ほっぺたを押さえながら、満面の笑みでパフェを頬張るキャルル。

その姿は、マッハ1の飛び蹴りで敵を粉砕する近衛騎士隊長候補ではなく、ただの年相応の可愛い女の子だった。

「よかった。いつでも食べに来ていいからな」

リアンが優しく微笑みかけると、キャルルは顔を真っ赤にして、ウサギ耳をバタバタと揺らした。

「リ、リアン君……っ、すご〜い! 強くて、料理もできて、こんなすごいお城まで持ってて……」

バイキングの皿を山盛りにしたリーザと、クレーンゲームの景品を抱えたルナも、キャルルのテーブルへと駆け寄ってくる。

「リアンさん、最高ですぅ! 一生ついていきますぅ!」

「リアン君の作ったパフェ、私も一口ちょーだい!」

三人のワケあり最強美少女たちが、リアンを取り囲んでキラキラした視線を向ける。

「きゃー! リアン君、素敵〜♡」

圧倒的な暴力による「安心感」と、胃袋を完全に掌握する「極上の料理」。

この日、リアン・クラインという男は、ポポロ村の裏の支配者たちを完全に骨抜きにしたのだった。

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