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私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~【書籍化企画進行中】  作者: 川崎悠
第6章 捲簾大将

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182 血の雨の難

 霊感大王を倒したあと、局所津波の被害を見回る。

 黒犬を追いかけて山奥に向かい、そこでジレインと遭遇してあの津波攻撃を食らった。

 人里から離れていたことで被害規模は最小限で済んだようね。


 それでも潰された家屋がある。

 ミニ・マインを駆使して人命救助に当たった。

 死人は……今のところ確認できていない。

 土砂崩れとはちょっと状況が違うからね。


 でも怪我人は出た。

 やっぱり、あの男、ジレインは味方ではないわね。

 海を操る男なのか、それとも。


 被害の対処を一通り終えたところで、ヴァレリア殿下も目を覚ます。


「……面目ありませんわ」

「いえ、こちらこそお守りできず、すみません」

「いいえ、救出はしてくださいました。ありがとうございます」


 さて。

 問題は、霊感大王がヴァレリア殿下を狙ったのかどうかよね。

 私からすれば黒水晶一派が狙う理由は十分あるように見える。

 でも、それはなんていうか『玉面公主』が敵のボスにつながるギフトかもしれない、という目算があるからよ。

 敵には、まだその情報は伝わっていないはず。

 まして、この地方には縮地を使って来た。

 敵がヴァレリア殿下を追いかけてきたわけじゃないってことよね。


「もしかして、アレが沙悟浄というギフトの力かい?」

「アレ?」

「ジレインと名乗った彼の能力だ。海水を生み出すなんて」

「いえ、あれは沙悟浄ではないと思います」


 沙悟浄に海を生成する能力なんてないはずよ。

 ギフトだからエピソード昇華型の何かを発現しているかもしれないけど……。


「私のギフトが反応しなかったんです。猪八戒には反応していましたから、沙悟浄にも反応があると思うんです」

「なるほど」


 あの力は沙悟浄ではない。

 とにかく、また水難系ね。何があったかしら。

 やっぱり四海龍王? でも、そういう感じでもない。

 何か見誤ったらだめな気がするのよねぇ……。

 紅孩児や、悟空ブラック並の雰囲気というか。強者感があったせいでそう思うのかしら。


「敵は動き出した。今回、俺たちに接触した上であの巨大な魚をけしかけてきた」

「そうですね……」


 私たちが発見してバトル開始になったのではなく、敵に見つかってのバトルだったわ。


「マイン、俺はヴァリー様を連れていく。君は南へ向かってくれないか」


 ヴィル様がそう提案してくる。

 フィナさんたちがすでに敵と遭遇している、というのだろう。

 ……正直、私もそう思う。

 フィナさんとラグナ卿、さらにジュリアンルート上でジュリアンさんがいるのだ。

 絶対にどこかでフラグを立てているはず。


「一緒に行きたいところだけど、君一人の方が速いんだろう」

「……はい」


 ヴィル様が一緒にいてくれるのは心強い。

 でも、あちらにはラグナ卿という戦力がいる。

 ここは大人しく私一人で向かうべきでしょうね。


「戦力をどう分けましょうか」


 私はミニ猪八戒たちを見る。

 独立型のミニ・マインは八戒と四健将二人よ。ただの毛の分身はすでに消している。

 殿下が霊感大王に狙われた以上、念のため護衛として三人とも置いておくのがベストよね。


「……全員だ。八戒も尻尾つきの二人も、どちらもマインと一緒に行ってくれ。ヴァリー様は俺が守る」

「え……」

「ウキ?」


 それはどうなの。私は驚いてヴィル様を見る。

 目が合うと困ったように笑うヴィル様。


「マインの考えが移ったみたいだ」

「えっと?」

「たぶん、俺が一番マインの〝読み〟を、そばで見てきたと思う」

「……まぁ、それは? そうかもしれませんけど」


 なんだかんだ、ここまでいろいろとあったわよね。


「マイン、血の雨が降っているのは南だろう?」

「はい」

「南部はもう海に近い。海では海難事故が多発しているという」

「……はい」

「南部での事件を片付けたら、そのまま海での戦いになりそう(・・・・)じゃないか?」


 それはヴィル様の〝読み〟だった。

 私がこれまで彼の前でしてきたものと同じだ。


 推定ジュリアンルルート。

 縮地で道中をスキップし、イベント発生前に動いたことでフラグはボキボキに折っている。

 その中でもこの地にいたのは霊感大王、如意真仙が確定。

 ジレインはギフトがわからないままだけど、ジークヴァルトルートの『虎先鋒』の男、バルグリッサ・コーデルのようなポジションでしょう。


 血の雨の難で出てくるだろう敵は、万聖龍王と九頭虫。

 脇役だけど、ナマズや鮎の妖怪もいるかもしれない。

 ……この戦い、実は一筋縄では終わらない。

 西遊記の戦いはそういうものといえばそうだけれど。

 例の如く助っ人参戦タイプのエピソードよ。

 しかも、九頭虫との戦いで助力してくれたのは何を隠そう、あの二郎真君。

 まぁ、原典西遊記だと最強は……というキャラである。

 なんだったら西遊記だけに留まらないレベルの最強だ。


 絶対に二郎真君クラスの助力がなければ厳しい戦いかというと、そうではないと思うけど。

 悟空一人の戦力が紅孩児と同等と見るなら、如何にラグナ卿がいるとはいえ、私もいた方がいいには違いない敵が想定できる。


 ……で。

 そんな恐ろしい敵との戦いが終わったあと、時間を空けてラスボス沙悟浄が出てくる流れ。

 変ではないと思うけど……。


 問題はあれよね。

 私はアイゼンハルト領で、なし崩し的に全面バトルを引くことになった。

 白骨夫人のバンシーに、黒風大王・黄風大王、さらにブラック猪八戒と。

 それだけの敵を出してしまっている。

 しかも今回は私とフィナさんにラグナ卿まで揃っている。


 これ、このまま、なし崩しで沙悟浄顕現まで行くんじゃないか、という……。

 如何にも私が考えそうな〝読み〟だ。

 九頭虫たちに苦戦したのも、例の如く『水中引き込み系』の難だったからだし。

 海まで敵を追いかけたらその先で、というのは、あまりにもお約束展開。


「確信が持てるほどではありませんけど……」

「でも『あり得そう』だろう?」

「……ちょっと否定できないです」


 お約束展開は、もはや『起こる』と考えた方がいいところはある。

 とくにフィナさん回りではそうよ。

 メタ読み抜きにしても、実際、敵にはこちらの存在が勘付かれているわけだし……。

 沙悟浄まで見つかるなら、速攻で叩きに行った方が被害は少ない。


「マイン、俺を信じて」

「ヴィル様……」

「必ずヴァリー様を守るよ。そして南へ駆けつける」


 ヴィル様にそこまで言われては信じるしかない。

 何より信じられるだけの実績を、彼はすでに示してくれている。


「わかりました。八戒たちも連れて南へ向かいます」

「ああ、頼んだよ、マイン。八戒もね」

「はい!」

「ウキィ!」


 私は筋斗雲に乗り、空へ。

 もう事態が事態だから、隠身法で身を隠すこともしない。

 近くで見ている人が驚いているけれど、気にしていられないわ。

 ヴィル様とヴァレリア殿下に見送られながら、私は南部へと向かった。



 誰も運んでいない状態だから、最速を出し、飛んでいく。


「「「ウキィ!」」」


 四健将二人は私の肩に掴まり、八戒は私の筋斗雲と自分の筋斗雲を混ぜて同行。

 そんなことできるの、八戒。

 筋斗雲系は『雲に乗る』術だから、雲をくっつけたところで……意味あるのかしら。


 侯爵領で広いとはいえ、ただ一つの領地にすぎない距離。

 北部から南部へかっ飛ばした私は、今まさに血の雨が降り注いでいる光景を見る。


「あんなの、不気味以外の何ものでもないわ!」

「ウキ!」


 血の雨は降っているが、当然だけど十三の宝塔は見当たらない。

 仏舎利はギフトとして出てくる意味がないとして……。

 現在進行形で血の雨が降り注いでいるのなら、ラグナ卿とジュリアンさんが原因究明に動いているはず。

 そしてフィナさんがフラグを立てているはず!


「火眼金睛!」


 私の視界がフィナさんのもとへ飛んでいく。

 周囲の状況は見られない千里眼だけど、フィナさんの様子を確認するだけでもわかることはある。


 流石にラグナ卿がそばにいるからか、フィナさんは縛られていない。

 三蔵法師のお約束パターンは引いていないわね。

 ただ、何をしているのかしら。


 フィナさんはどこかで両膝をつき、祈りを捧げている? なぜ。

 フィナさんが膝をついている場所は室内じゃない。岩場? だからなぜ。


 あやしいことをさせられているなら、ラグナ卿とジュリアンさんが見破りそうなもの。

 超感覚的な嗅覚と鑑定能力がある二人だからね!


「とりあえず!」

「「「ウキ!」」」

「──芭蕉扇(ばしょうせん)!」


 緑色のひょうたん型の扇、芭蕉扇を生成する。


「嘘呵吸嘻吹呼(きこかきゅうきすいこ)!」


 呪文を唱え、芭蕉扇が四メートルほどの大きさになる。


「風よ! 血の雨を降らす雲を吹き飛ばしなさい!」


 巨大化した芭蕉扇を一仰ぎ!

 猛烈な突風が、禍々しい雲を吹き飛ばす!


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― 新着の感想 ―
ヴィル様が順調にマイン嬢に感化されていますね。 というか、ヴィル様は戦い方といい思考回路といい、柔軟で臨機応変な対応にかなり強いから、ここにマイン嬢仕込みの論理的()に飛躍した先読みまで加わるの鬼に金…
ヴィルヘルム単独で王族たる少女かつ今後のキーマンを護るつもりとは流石の覚悟、そしてここでマインちゃんの「読み」を度々見て来ただけはある「読み」を見せるデキる男感よ マインちゃんの背中を預かろうとする…
確かに…なんか連続バトルで、そのままここでのボス戦!になりそう(汗)そして、ヴィル様相変わらず格好いい!
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