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私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~【書籍化企画進行中】  作者: 川崎悠
第6章 捲簾大将

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170 別行動

 フィナさんたちが行き倒れを介抱していて、アフターケアもしている様子。

 そのうちにエミリアだけが私たちのところへ戻ってくる。


「あの、カーマイン様」

「どうしたの、エミリア」

「倒れていた人を宿まで連れていくという話になりまして」

「それはかまわないけど……」

「ですが、その同じ馬車に乗せるには流石に身元がわかっていないかと」

「ああ、そうね」


 今、この馬車にはヴァレリア殿下が乗っている。

 敵勢力かという疑いもあるけど、そう易々と同乗はさせかねるわね。


「どこまで連れていくの?」

「ジュリアン様が近くに宿があるから、そこへ運んでくださると」

「そう……。ラグナ卿」

「ん?」

「倒れていた人を背負って運んであげてくれる?」

「ああ」


 ラグナ卿は素直に御者席を降りる。


「ついでにあれから匂いがするか確認しておこう」


 流石はラグナ卿、意図はわかったらしい。

 どうやらラグナ卿の野性的な直感、私がそばにいると乱されるみたい。

 まぁ、西遊記系ギフトが孫悟空になんらかの反応を示すのは、さもありなん。

 一旦、距離を置いてみて変化するかを見極めておくが吉よ。


「それで、エミリア」

「はい、カーマイン様」

「私たち、このまま別行動しようと思うの」

「え?」


 エミリアは私の提案に驚く。


「それはいったい?」

「あのね、フィナさんと貴方に今後の行動を任せるわ。好きに動いてみてほしいの」

「好きに、ですか」

「行きたいところへ行くのも、今みたいに人助けするのでもいい。観光するのもいいわね」

「あの、それはどういう意味が?」

「私の予測は条件があるというか、フィナさんの行動を見て、それで今後を占っているみたいなものなのよ」

「占い……」

「まぁ、厳密には占いじゃないんだけどね。とにかくフィナさんには思うままに行動してほしいのよ。それは貴方も一緒。私は貴方たちの裏方に回るわ」

「カーマイン様が裏方……?」


 なぜ、そこで首を傾げるのかしら、エミリア。

 孫悟空は、けっこう地道な裏方作業をするものよ。


「シチュエーションはこう。フィナさんとエミリアが友人同士で旅行に来て、地元を案内するジュリアンさん。ラグナ卿は……ラグナ卿も、この際だから自由に動いてくれるかしら」

「聖女に同行するのではなく、か?」

「ええ。もちろんフィナさんについていってもいいわ。貴方の考えるままに行動して。ラグナ卿、私たちが出会った時のことを覚えている?」

「ああ、覚えている」

「あの時、私はこの〝予測〟とギフトの能力を駆使してエミリアの窮地を察知して、犯人グループに潜入して、あのアジトに辿り着いた。ラグナ卿も独自捜査と〝匂い〟であそこに来たでしょう? あれをもう一度やってみましょう」

「……なるほど。俺とカーマイン、それぞれのやり方で敵を見つけた方が早いか」

「そうなの。頼りにはしているけど、こう……ラグナ卿をフリーで動かさないのは、それはそれで宝の持ち腐れな気がするのよね」

「フッ……。なかなか高く買ってくれるな。わかった。だが、情報交換はするべきだろう。それはどうする」

「ラグナ卿にも四健将を一人つけるわ。この子たちは私の居場所がわかるみたいだから、連絡役に使って。あと今日の合流場所は、騎士隊長に聞いた領都の宿で、いったん別行動を試してみた結果をまた今夜、話し合いましょう」

「承知した。では、アイゼンハルト小侯爵」


 ラグナ卿は馬車の中に声をかける。


「カーマインとヴァリー様を頼むぞ」

「ああ、任せてくれ」

「お待ちください、ヴォルテール卿」


 そこで待ったをかけたのがヴァレリア殿下だ。


「私はヴォルテール卿に同行します」

「えっ」


 殿下が想定外の提案をしてくる。


「ほう……。俺はかまいませんが、何かお考えでも? ヴァリー様」

「それぞれが別行動をするというのなら私も確かめたいことがあります」

「同行する相手は俺でいいのですか」

「はい。聖女でも、マロット公爵令嬢でもないことがいいかと」


 あら。信用を失ったとか……?

 そ、それはちょっとショック。昨夜の話しがよくなかった?

 ヴァレリア殿下の暗殺を軽く扱ったこととか……。


 ヴァレリア殿下が馬車から降りる。

 ヴィル様も一応、エスコートと護衛のために降りたわ。


「ご安心を、マロット公爵令嬢」

「え?」

「昨夜の話で気分を害したわけではありません」


 わぁ、私の心配を見抜かれた。

 すごいな、ヴァレリア殿下、これで十三歳……。

 絶対、前世の年相応の時代の私より圧倒的に賢いわ。


「貴方の人柄は信用しています。ですが、その予測は多角的な分析と情報があってこそのものだと感じました。今、貴方が立てている予測も、新しい情報によって塗り替わるものでしょう?」

「……それは、はい」

「貴方一人ならば、逐次、更新されていく情報に合わせて臨機応変に動き、対応できるかもしれません」


 まぁ、うん。

 新情報があったら縮地と筋斗雲でひとっ飛びして、あとはパワーでゴリ押しすればいい。

 孫悟空の能力には対応力があるから。


「ですが、私たちがそれに合わせるのは難しい。予測が外れることもありますね。それならいっそ私や聖女が、貴方の予測の助けになるために動きましょう」

「……殿下」

「ヴォルテール卿がそばにいるなら安心、そうでしょう?」

「それはそう思います。彼は頼りになりますので」


 なんたって紅孩児なので!

 味方陣営で現状、最強だと思っている。

 孫悟空の力が劣っているわけじゃないけど、器の私が弱くしているからね。

 彼の勘が働くなら不意打ちとかにも対応できそう。うん、まったく不安にならない。


「決まったな。では、ヴァリー様は俺と行動だ」

「はい、よろしくお願いします、ヴォルテール卿」

「お任せください。では、カーマイン」

「なに?」

「この先、海に近い場所でデカブツの相手が待っているんだろう?」

「今の段階ではそう思っているわね」

「その時は必ず合流する。いや、先に俺が戦闘を始めているかもしれんな」

「それはそれで……派手な戦闘になるなら私にも伝わるでしょうね」

「ははは、違いない!」


 ラグナ卿がボスクラスと戦闘している時に、ひっそり静かに戦うなんて想像できない。

 灼熱の大火炎が嵐となって、怪獣大決戦再びの光景になりそうよ。



 そういうわけで、フィナさん、エミリア、ジュリアンさんチーム。

 ラグナ卿とヴァレリア殿下チーム。私とヴィル様チーム。

 この三組に分かれて行動することになった。

 四健将のうち二人がそれぞれのチームについていく。


「なんだか、あっという間に別行動になったね」


 ヴィル様が私のそばに残り、そう感想を呟く。


「そうですね。なんだか流れで決まっちゃいました」


 私が言い出したことだけど!


「よかったのかい? せっかくカーマインが揃えたメンバーだろう」

「そうなんですけど。こう、一緒にいて安心するだけではこの旅の意味がないなぁ、と」


 確かに戦力的には本当に安心できるメンバーだった。

 結界・治癒・浄化の聖女、フィナさん。

 最強のラグナ卿。分析能力のジュリアンさん。

 その最強パーティーに孫悟空の力を持つ私がいるんだから、どんなことにも対応できる。

 それはそうなんだけど……。


「フィナさんが駆け出した時に気づいちゃったんです」

「気づいた?」

「はい。あのままだと何も起きないな、と」


 フィナさんが行き倒れの人を助けに動いた時、『こうあるべき流れ』というのが、あのまま最強パーティーで固まっているだけでは発生しない気がしたのよ。


 なんていうか……。

 西遊記でも、妖怪たちは『孫悟空を遠ざけたところで三蔵をさらってしまおう』という動きをするのよね。

 三蔵法師だけが別行動している時を狙うの。

 孫悟空はそうしてさらわれた三蔵法師を助けに動いて……が、お約束なのよ。


 それを三蔵ポジションのフィナさんを馬車の中に囲って、孫悟空と紅孩児で周りを固めた状況では、敵だって手を出してこない。でも、それではこの旅の意味がない。


 私たちは今、『敵の戦力を削るため』に動いているのだ。

 これは天竺を目指す旅ではない。妖怪を見つけ、叩き潰す旅である。

 だったら、守りをガチガチに固めるのはナンセンスな戦略だ。


「アスティエール嬢に敵が寄ってくると思うかい?」

「たぶん……?」


 実績はある。

 フィナさんが歩けば棒に当たるっぷりを私は見ている。なので。


「ヴィル様、私たちはフィナさんを〝尾行〟しますよ」


 完全にフィナさん囮作戦である。

 いや、でも正直、これが一番効率いいと思うのよね……。


 私は、この世界を元にしたゲームか小説なんてものの確かな知識があるわけではない。

 ただ、そういう感じがするな、というメタ読みをしているだけだ。

 ただし、その読みに実績がある。


 原作なんてものの知識があるなら、きっぱり今後を予言してみせるのだけど。

 あくまで流れを読んでいるにすぎないから。

 ヴァレリア殿下もそのことをわかっていて別行動を申し出てくれたのでしょう。


「なら、馬車を片付けた方がいいかな」

「それはそうですね」


 いったん、フィナさんたちから目を離すことになるけど、四健将がついている。

 どこかで馬車を解体してから、あとを追いかけることにしましょう。



「元に戻すのかい?」

「……どうしましょう。せっかく作った馬車なんですよねー」


 もちろんギフトがあれば、同じ物をまた作ることはできるだろう。

 でも、せっかくならこの馬車、分析して複製できないかしら。


「マイン、流石に今すぐアスティエール嬢たちに危険が及ぶとは思えないよ」

「それは……まぁ、そうですね」


 敵が聖女を認識してから動くまで、それなりの時間はあるはず。

 今、気を張ってフィナさんたちの尾行をしても、あんまり意味がないだろう時間ということね。


「何かやりたいことがあるなら、やっておけばいい」

「……そうですね。では、馬車工房があるか探してみても……?」

「ああ、付き合うよ」


 ヴィル様は快く頷いてくれた。

 馬車をどうにかできれば、馬に変化している四健将二人も解放してあげられるわね。

 流石にずっと変化させておくのは負担だと思う。


 とりあえず馬車を停められる場所まで移動し、情報収集に当たることにした。

 もちろん馬車工房だけじゃなく、海難事故についても聞き込み調査開始。


「……あら」

「どうしたんだい」

「いえ」


 これ、いつの間にかヴィル様と二人きりになっているわね?

 いえ、意図してそうしたわけじゃないんだけど!

 あら、これって……ほぼ、デートなのでは??


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― 新着の感想 ―
折角マイン嬢とヴィル様が二人っきり(四健将たちはいるけど)になったからテンション上げたいところだけど、それ以上に紅孩児と玉面公主が一緒とかやべー化学反応起こしちゃわないかなってことが気になって仕方ない…
気づいたら、デート!でも、すぐにトラブルか敵に邪魔されそうwほのぼのデート出来るならそれはそれでw
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