表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【五章完結】私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~【書籍化企画進行中】  作者: 川崎悠
第5章 社交界は赤手空拳

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
154/162

154 女王のギフト

「猿の……匂い、ですか……?」


 ヴィンセント殿下が聞き間違いかとでも言いたげに女王の言葉を繰り返す。

 私はというと、冷や汗をかいているところだ。


 え、猿の匂い?

 それは、もしかして、そういう意味で言っている?

 それとも『この国の奴らは猿みたいなものじゃ! まったく臭うのう!』とか、そういう差別的な意味?


 私のように二択のないG4たちは女王の言葉が差別の意味合いだと思ったのだろう。

 ジークヴァルトあたりは不快さを隠そうともしていない。

 いや、こいつ、公爵令嬢につっかかるだけでなく、他国の女王にも突っかかる気?

 やめて、ヴィル様まで巻き込まれるから。大人しくしていて。

 もしもの時は私が如意棒で後頭部をフルスウィングして止めるしかないわね。


「ああ、すまない、誤解させたな。其方たちを愚弄したのではない」


 女王陛下はクールに訂正する。

 どことなく訛りを感じる。

 たしかレイシェル王国の言語は、グラムザルト王国とそう変わらなかったはずだ。

 地球だと……アメリカとカナダくらいの言語感? それは違うか。


「ただな。私の中のギフトが囁くのだ」

「ギフトが……?」

「ああ、私のギフト『西王母(せいおうぼ)』がな」


 西王母!?

 西遊記だけでなく、中国に古くから伝わる物語のいくつかに登場する存在だ。

 日本でも縁があって、『織姫と彦星』の織姫の血縁という説がある。


 西王母は、西方の崑崙山(こんろんざん)上の天界を統べる、母なる女王の尊称。

 そのため、特定の一人とは限らない。多くの側面を持つ存在となっている。


 西遊記においての出番は、孫悟空が天界にいた頃の話だ。

 『斉天大聖』という自称だった名に、正式な役職と官位が与えられ、仕事を任された悟空。

 それは蟠桃園(ばんとうえん)の管理という仕事だ。

 そこには三千六百本もの桃の木が生えていた。


 しかし、孫悟空の元来の目的の一つは不老不死となること。

 その桃は、蟠桃(ばんとう)という不老不死になるための桃だった。

 ……まぁ、孫悟空は蟠桃を食い散らかしたのである。

 それから西王母が、毎年行われている蟠桃会(ばんとうえ)のために仙女たちを遣わし、桃をもいでいたところ、悟空がやいと話しかけて。


 といった具合に、完全に西王母が被害者側であり、孫悟空はド級のやらかしをした加害者側だ。

 一つだけ、日本人として面白いことがあるなら、それは西王母の名だろう。

 俗称が王母娘娘(わんむーにゃんにゃん)というものなのだ。

 にゃんにゃん。敬称のはずなのに、なんだか響きが可愛らしい。


 ……って、それどころではない。


(みな)、私に顔を見せておくれ」


 女王が求めるとヴィンセント殿下が困惑しながらも、フィナさんたちに目線で合図を送る。

 一人一人、順番に彼らの目の前に立って、その目を覗き込む女王。


 ギフト『西王母』。まったく能力の予想がつかない。

 西遊記だけのキャラクターではないし、西遊記では戦闘で活躍した話はなかったはず。

 かろうじてあるとすれば、やはり獣人化の能力だろうか。

 だが、獣人化なんて女王に役立つ能力とは思えないが。

 ……戦争中なら別かな? いえ、命を狙われる機会があるなら……。

 戦闘では孫悟空が負けそうなタイプではない。

 神様に属するギフトであっても、本当にヤバいキャラではないはず。

 いや、どうなのかしら。何もかもわからないわ。


「……違うな」


 そうしてG4とフィナさん全員の目を見てから、そう呟く。

 違う? 何が。


「バンセイ、お前も見てみよ」

「ハッ!」


 女王は同行し、後ろに控えていた従者に声をかける。

 バンセイという名は、公爵家に届いた手紙にもあった名だ。

 彼がそうだったのね。


 バンセイと呼ばれたのは青年だった。

 ラグナ卿と同じ年齢くらいかしら?

 青い髪色は、ジュリアンと被っているけれど、こちらは短髪ね。

 また見た目も正反対で、いかにも筋肉質で武人といった体付きをしている。

 使者として訪れたはずだが、この様子は女王の側近、近衛騎士といったところか。


 そのバンセイも一通り、フィナさんたちを観察する。


「恐れながら」

「申してみよ」

「……彼らでは歯が立たないかと」


 ん?


「女王陛下。どういうことですか?」

「ああ、すまない。今回、グラムザルト王国に来たのは……他でもない。この国の者に〝龍の退治〟を依頼しに来たのだ」


 龍の退治!


「……龍の退治? それはいったい?」

「そうだな。我が国の事情を話そう」


 聞いていいのかわからないが、私とヴィル様がひっそり壁に立つ部屋の中で、隣国の事情が語られた。


 レイシェル王国には今、龍害(りゅうがい)というものが起きているという。

 龍の害。つまり、龍によって巻き起こされる災害だ。

 それは台風や大雨に近いものだという。

 原因となるのは、間違いなく龍らしいのだが、これをどうにかする(すべ)がない。


 龍は天高く飛び、空を舞っている。人間の剣は届かないのだ。


「まったく手段がなくはないのだ。だが、確実とは言えない。しかし」


 なんでもレイシェル王国には『占い師』のギフテッドがいるそうだ。

 西遊記系ギフトじゃなく、今世の世界観に合ったギフトっぽい。

 いやまぁ、西遊記にも占い系はあるかもしれないけど。


 王家お抱えの『占い師』曰く。

 グラムザルト王国に龍と戦える若者あり。その者たちはギフテッドである。

 ……と。

 だから、お忍びで我が国にやってきて、ギフテッドに会いたかったのだとか。


「だが」


 女王は続ける。


「どうやら、その勇者は、お前たちではなさそうだな……」


 勇者なんだ、そこ。もう世界観を統一してほしい。

 時々、西遊記じゃなさすぎるのも混じってくるし。


「……なぜ、俺たちでないとわかる……んですか」


 ジークヴァルトー! 女王にタメ口を聞こうとするんじゃないわ!

 かろうじて敬語に修正するとかいう、テンプレムーブをするんじゃない。


 ヴィル様を見ると、少し天井を見上げている。

 完全に『このバカ弟は……』の動きである。最小限の動きと表情の変化だけど。


「私のギフトがそう囁く。わざわざ女王の私が出向いた理由だ。それにバンセイもお前たちを認められないという。すまなかったな、呼び出してしまって。私たちは他を当たることにする」


 おお、戦力外告知。

 これはG4たちのプライドをゴリゴリに刺激するのでは。

 というか、G4たちではないとなると、女王が捜しているのは、私かラグナ卿なのでは。

 この一件も乙女ゲーのイベントだとするとどうなるかしら。


「──待ってください」


 そこで声を上げたのは……フィナさんだ。


「其方は?」

「……私はセラフィナ・アスティエールと申します、女王陛下」

「そうか。では、セラフィナとやら、何を待てと?」


 他ならないフィナさんが声を上げたことでG4たちは動きを止められている。


「ここにいる四人は、協力すれば大きな成果を上げられると思います」

「……そうか」

「もちろん、私も協力します」

「……其方は『聖女』と聞いている」

「はい、私のギフトは『聖女』です。あの……その占い、対象は一人なのですか?」

「ん……?」

「もしかして、みんなで協力して問題に当たることを求められているのではありませんか」

「……ほう。なぜ、そう思った?」

「それは……。先ほどから女王陛下と護衛の方が〝一人の強者〟を求めているように思えたので。もしかしたら、陛下たちは一人の強者を求めているけれど、占いの内容は『複数人の協力体制』を求めていて、そこで捜す相手が間違ってしまっているのではないかって。そう思ったのです」

「……そうか。なるほど……。確かに私は一人の……そうだな」


 おお……? すごい、フィナさんが会話して、状況を動かした。

 それも他国の女王相手に。

 私は今、ヒロインちゃんの輝きを特等席で見ているのかもしれない!


「ですので。もし、女王陛下がグラムザルト王国で『一人の強者』を見つけたとしても。その一人だけで、すべての問題を解決させようとは、なさらないでほしいのです。みんなで協力すれば、もっと簡単に済むことかもしれない。私はそう思うのです」


 フィナさん、貴方は今、間違いなくヒロインよ!

 でも、なんでそんなことを言い出したのかしら?

 彼女はそれほど功績に拘るタイプじゃない。

 かといってG4たちを売り込みたいってタイプとも思えないし。


「なるほど。聖女よ、其方」

「は、はい」

「『一人の強者』とやらに思い当たる者がいるな?」


 あ。

 もしかしてフィナさん、私やラグナ卿が一人だけで駆り出されないように?

 もし、私たちが彼らに声をかけられたとしても、協力者が動きやすいように言ってくれた?


「それは……」

「そして、その者は其方の近くにいる」


 フィナさんが目を見開いて動揺する。

 女王陛下はなんだか、なんでも見抜くようなすごみがある。

 彼女を前にしたら私も嘘を吐けない気がするわ……。


「もしかして」


 さらに女王は続けた。


「この部屋の中に、その者がいるのか?」


 ぴゃああ! なんでも見抜きすぎよぉ!

 もしかして、これも『西王母』のギフトの力なのかしら!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
玉龍絡みだから敖閏か、おじで如意棒の元の持ち主の敖広も可能性としては……?と思ったら西王母様かー。
「私の中のギフトが囁くのだ」って、もしかして「囁くのよ、私のゴーストが」少佐 by◯殻◯動隊から?
ジークよ……その調子で、ヴィル様の前でボロを出しなさいwww でも、国に不利益はもたらしてくれるなよ꜀( ꜆ -ࡇ-)꜆
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ