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【五章完結】私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~【書籍化企画進行中】  作者: 川崎悠
第5章 社交界は赤手空拳

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139 アスティエール領

 フィナさんを実家に送り届けつつ、念のための行動をしておく。


「身外身法」


 うなじの毛を一つまみ抜き、息を吹きかける。


「「「「ウキー!」」」


 わらわらと出てくるミニ・マインたち。

 これに元から活動中の四健将たちを加えて、ミニ・マインズだ。


「命令、フィナさんの家を中心に周辺を警戒してあやしい動きがあれば報告に戻ってきて」

「「「「ウキ!」」」」


 ビシッと特有のポーズを一斉に取ったミニたち。


「「「「「ウッキー!」」」」」


 四方八方にミニ筋斗雲たちが飛んでいく。

 私が介入して移動するのは運命通りではないはず。

 フィナさんが実家に帰るのは決まっていた予定だからね。

 G4と一緒に帰ってくるルート途中に賊がいたかもしれない。


「ウキー」

「うん?」


 空に向かって飛んでいったミニ・マインたちを見送ったのに近くからミニの鳴き声が聞こえた。

 はて?


「あ」

「ウキ?」


 視線を向けるとフィナさんが一体のミニ・マインを抱えていた。


「何してるの、貴方たち……」

「その、一人、私のところへ来たので、つい」

「ウキ」


 つい、じゃないんだけどねぇ。

 ミニ・マインも『つい』の発音で『ウキ』じゃないのよ。


「可愛いですねぇ、この子。マイン様にも似ています。ふふ」


 ニコニコ、嬉しそうにミニ・マインの頭を撫でて可愛がるフィナさん。

 マリンといい、私の分身だから可愛がられているのを見るのは、むず痒いわ。


「フィナさん、せっかくお邪魔させていただいてなんなのだけど。私、そろそろアイゼンハルトで話し合いに参加しないといけないのよ」


 アイゼンハルトに侯爵とお父様が来るのが、もうそろそろなのだ。

 流石に前日や当日に帰ってOKとは思わない。事前に準備が必要だ。

 お父様だけならともかく、侯爵相手に失礼すぎるからね。

 ラグナ卿に連絡をつけるだけのつもりが、いろいろあったものよ。


「そうなのですね。一緒に領地を見てもらいたかったですが、それなら仕方ありません」

「悪いわね。子爵家の方から殿下たちに無事を報せて。ただ、彼らと合流するまでは一人で行動してはダメよ」


 スケジュールは詰まっているものの、かといってフィナさんの安全を確保しないまま去るほど、優先すべきことではない。


「はい、マイン様」

「私が殿下たちのところへ飛んでいって事情を教えるのが一番だと思うけど……」

「ですが、殿下たちと会えば、マイン様は問い詰められて大変なのでは?」

「そうなのよねぇ」


 今、殿下たちに会ったら面倒くさいに違いない。

 敵の狙いはフィナさんに向かっている節がある。殿下たちの方は心配ないと思う。

 お父様たちと話し合って、いろいろと整理してから殿下と再会するのが望ましいわ。


「マイン様って意外と面倒くさがりなんですね」

「まぁ、ねぇ」

「なのに私を助けてくれたり、伯爵家の皆さんを止めてくれたり、感謝しています」

「それはまぁ、流れ的に。私もフィナさんにお願いしたいことがあったからだから」


 あと緊箍児を外すための打算ありきだ。

 善行を重ね、徳を積む、という自分のための行動である。


「すぐに出られるんですか」

「……とりあえずミニたちが戻ってきてからね」

「では、私の家までは一緒に?」

「それはきちんと送るわ」

「ふふ、送るですか。本当はマイン様の方が護衛されるべきと思うんですけど」

「まぁねー」


 なにせ私、公爵令嬢なので! もう一度言うけれど、公爵令嬢なので!

 本来、私こそ護衛つきで移動すべき人間のはずだ。

 でも筋斗雲と縮地の術がある以上、ソロの方が圧倒的に身動きが取りやすいのよねぇ。

 縮地マップのマッピングが進めば、もっと自由自在に国内を巡れるわ。

 こういう、ファストトラベルのポイントをコンプリートするのって、ちょっと楽しいのよね。


「マイン様、では行きましょう!」

「ええ」


 フィナさんに手を引かれて子爵家へ向かう。



 久しぶりに帰ってきた娘を喜ぶ子爵夫妻。

 そんなところに突然現れる公爵令嬢の図。震え上がっているけれど。


「子爵、子爵夫人。私に驚いているようではこの先、困りますわ。だって、そのうちすぐに第一王子殿下がこちらへ来られますのよ」

「ひぇ……」


 思わず漏れた言葉は聞かなかったことにしてあげる。

 流石に殿下もフィナさんのご両親に傲慢な態度なんて取らないと思うけど。

 そうはいっても身分が下の者からすれば王族なんて関わりたくないわよねぇ。

 それは公爵令嬢も一緒だ。うん、そっち目線の気持ち、わかる。


「私の歓迎はよろしいですわ。それより殿下が来るのに備えておきなさい」

「は、はい……!」

「あと、フィナさんはよくがんばってくれているから、親として誇りに思っていいわよ」

「そ、それは……どうも」


 子爵家の中に入れてもらって、過剰な接待をお断りしてから。

 フィナさんには実家でゆっくりしてもらって。

 客室で少し一人の時間を作らせてもらう。


「火眼金睛」


 流石にフィナさんの実家の中で事件が起きるとは思えないけど。


「隠身法」


 念には念を、よね。

 透明になった上で、真実を見抜く眼を使って勝手に屋敷探索をする。

 使用人たちの様子を見ておきたいわ。


 ソソーッと動いて隠密活動。

 周辺の調査はミニ・マインたちに任せているから私は家の中だ。


「……他人の家に上がってこんなことしているって、普通に問題よねぇ」


 さも、いいことのように考えているけど、シンプルにやられたら嫌な行動である。

 でもねー、流石にねー。

 案の定、久しぶりに会ったら誘拐されて縛られていたフィナさん。

 警戒しておくに越したことはない。


 とはいえ。

 なんだかんだバトル展開が続いていた日々。少し落ち着いたかなぁ。


「ヴィル様はどうしているかしらね」


 ヴィルヘルムも狙われている側の人間だ。

 フィナさんほどではないでしょうけど、危険なことには変わりない。

 さて、ミニ・マイン猪八戒がどれだけ彼の役に立つか。


 フィナさんのところに四健将を置いていくか迷うわねぇ。

 G4は私からすれば頼りないけど。

 でも、ジュリアンはフィナさんが囚われていた場所に辿り着いていた。

 殿下たちのギフトもあるし、私が介入せずとも事件は解決できていたかもしれない。

 犠牲の大小は変動したかもしれないけど、それについてはケースバイケース。

 毎回、私の方が犠牲を最小限に抑えられる保証はない。


 ま、これについては、どちらが有能かというより徳の奪い合いのつもりだけど。

 私には緊箍児を外すという目的があるのだ。


「公爵令嬢が来られた? え、公爵令嬢?」

「本当に?」

「お嬢様のご友人として来られたらしいぞ」


 お、使用人たちが噂しているわ。

 私のことを『孫悟空のギフテッド』ではなく『公爵令嬢』として恐れおののかれている。

 ふふ、そうよ。私、公爵令嬢なので!


 使用人の様子を隠れて観察する公爵令嬢。うーん、嫌な存在すぎる。

 バレないようにしなくちゃね。


 そのあとも火眼金睛を駆使して見守る。

 今のところ問題はなさそうだけど。

 黒水晶一派が本当に王国各地で暗躍しているのよねぇ。

 聖女を狙っているっていうのなら、彼女の実家であるアスティエール家に潜伏していてもおかしくない。


 隈なく観察すると大方、問題のなさそうな使用人たちばかり。

 と思ったのだけど。


「…………」


 一人、あやしい動きをしている、他の使用人たちから浮いている人物を見つけた。

 コミュニケーション不全なのは、まぁそういう人もいるわよね、で済ませるのだけど。

 なんだろう? 雰囲気が一人だけ暗いというか。


 その人物は男性だ。私やフィナさんより少し年上かな?

 ただの使用人の一人だと思うけど。

 なぜ、家のお嬢様が久しぶりに帰ってきたのに暗い雰囲気なのか。

 あのフィナさんなので使用人たちの好感度も高そうなのだけど。

 彼にだけは嫌われているとか?

 周囲との会話が少ないので名前がわからない。

 私の姿に戻って聞き込みをすると、あらぬ疑いをかけるかもだし。

 変化で使用人の一人に成りすますにしても、使用人の数が少ない。

 この人数相手ではすぐに何者かがまぎれこんでいるとバレそう。


 あやしく思って観察を続けていると、その人物が誰ともなく声を上げた。


「なぁ、公爵令嬢のあとに王子が来るって本当かな」

「ん? ああ、それも聞いたが……どうなんだろうな」

「でも『聖女』だから縁ができたとかじゃない?」

「王子の目的は公爵令嬢なのか、お嬢様なのか」

「……さぁ? そこまでは」


 んん? あの思いつめた様子。もしかして事件じゃなく……。


「お嬢様と、その王子は……仲がいいのか?」

「そりゃ……どうだろうな」


 あ、これ。あやしい人物じゃなくてフィナさんに片思い中の青年?

 王子が来るって聞いてフィナさん目当てとして動揺している?

 とはいえ、元々が子爵令嬢と使用人。

 二人がマリンのように公爵家で一緒に働いているとかならまだしも。

 叶わぬ恋ってやつじゃないかしら。

 ちなみに顔面偏差値は普通だと思う。個人の感想ですわ!


「普通、か」


 フィナさんがG4たちやラグナ卿、誰ともフラグを立てなかった場合。

 そうしたら誰でもないモブの誰かと結ばれるノーマルエンドとか。

 そういう可能性はあるかしらねぇ……?


 とりあえず子爵家の中は大きな問題はなさそう。うん。

 ミニ・マインたちの帰りを大人しく待ちましょうか。



 屋敷の探索を終え、客室に戻って姿を戻す。

 場所は屋敷の二階。窓を開いて少し遠くまで景色を眺める。


 長閑な風景ねぇ。日本の田舎ではなく外国……って、今世の私が言うとおかしいか。

 この国ならではの田舎の風景。平和そのもの。


「この国の田舎の風景にノスタルジーを感じるなんてねぇ」


 私も根っこのところはグラムザルト王国の人間なのね。

 前世に拘っているつもりはなく、前世の知識が活かされているだけ。

 地球に帰りたいとは思っていない。


「この国で生きていくなら……」


 この先、どうなるかしら。

 ヴィンセント殿下との婚約はうまくいく気がしないわ。

 でも、私のギフトが少しバレて、これからどうなることやら。

 私の脳裏にヴィルヘルムの顔が思い浮かぶ。ついでにラグナ卿も。


「ふふ」


 自分で考えておいてなんだけど、あのラグナ卿をついで扱いしたわね、私。

 本当、これからどうなるか。


「ウキー!」

「ん?」


 周辺の調査に当たらせていたミニ・マインの一体が戻ってくる。

 あの様子は……。


「何か見つけたわね?」


 すぐに帰るつもりだったのだけど。

 どうやら、ここでも事件の匂いがするみたいね。


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― 新着の感想 ―
マインのお父さん早く登場してほしいのにまだまだ先になりそうー!! 雲だしたり、急にいなくなったりしてる娘のことをパパ目線なのも読んでみたいなーとおもったりしています!
殿下とマイン嬢は本当うまくいく気がしないよなぁ。性格的にもそうだけど、マイン嬢(結果的に)結構な現場主義者なもんだから、王族の配偶者がそんなぐいぐい前線出てたら周り大慌てなのよ。大人の包容力的なソレで…
 なんかそんな、有名探偵の孫か身体は子供、中身は大人なひとみたいな発言⋯⋯お嬢が厄災の中心と言う訳じゃないんだからーまたーw    ミニマインズ個体ごとになんか違いとか傾向の偏りのかあんのかね?  や…
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