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私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~【書籍化企画進行中】  作者: 川崎悠
第5章 社交界は赤手空拳

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130 やや西へ

 オッス! 私、カーマイン・マロット!

 十三歳で授かったギフトは『斉天大聖孫悟空せいてんたいせいそんごくう』!

 西遊記にて孫悟空が使っていた、またはエピソードに由来する能力や道具が使えるわ!

 そんな私は十六歳、あと少しすれば十七歳。この国におけるデビュタントを控えている学生よ。

 今、筋斗雲に乗って空を移動中。

 西へ、ではなく南へ。やや西かもしれない。


 一年生の夏季休暇中。いろいろあってアイゼンハルト家で、公爵であるお父様とアイゼンハルト侯爵を交えた話し合いをする予定。

 それまでに二週間ほど猶予期間があり、筋斗雲で移動し、別のことをしていた。

 そこで遭遇したのが幽霊メイドのアンリエッタさん。

 幽霊姿の彼女は、仕えている家のベラゴート伯爵家の窮状を訴えてきた。

 そこでまたなんやかんやあって、現在、ベラゴート伯爵は気絶中。

 その子供たちであるクラリオ、ロクサーヌの兄妹は……異形の姿に変えられたまま。

 アンリエッタさんの肉体は見つかったのだけど、彼女の霊体はどうやらロクサーヌ嬢を守るために異形となった体の中にいるみたい。

 私と協力者だけでは彼らを救う手立てがない。

 そこで私は『聖女』のギフトを持つセラフィナ・アスティエール子爵令嬢の助力を求めて、こうして空を移動しているのよ。


「今日のフィナさんは、どんなふうに誘拐されて元気しているのかしらっと」

「ウキー!」


 ミニ・マイン一体が私の肩で元気に声を上げる。

 身外身法で出した分身、それが敵からギフトの正体を? 奪ったことで自立した一体。

 その名もミニ・マイン四健将。

 ただのミニ・マインと違い、赤毛の尻尾が生えているのが特徴よ。

 それとなぜか金色ではなく銀色の輪を頭につけているカラーバリエーション。

 四健将個体は文字通り四体いるのだけど、残りの三体は姿を変えたままのベラゴート兄妹のために残してきた。

 ラグナ卿がついているから彼のサポート要員ね。

 他にもミニ・マイン猪八戒がいるけど、その子はヴィルヘルムのところにいるわ。


 空の旅って快適だけど、カーナビなどないから地図と現在地を合致させるのが大変だ。

 いずれは縮地マップを国内全域に広げて、どこでもファストトラベルできるようにしたいわねぇ。

 今、私が向かっているのはアスティエール子爵領よ。

 フィナさんが実家に帰っている予定。

 でも、あの子のことだから、すでになんらかの事件に巻き込まれていると思うのよね。

 むしろ平穏にすごせていたなら、私の方はなんなのかと問いたい。

 ブラック猪八戒に『虎先鋒』の男、『黒風大王』『黄風大王』。

 『金角大王』『銀角大王』に九尾狐理精。西遊記ギフト持ちたちと相対してきた。

 トラブルへ道連れにしたいわけじゃないのだけど納得いかないわ。

 ……まぁ、自分から首を突っ込んでいった結果なところは、けっこうあるけど。

 さておき!


「この感じだと他にもわんさかいるわよねぇ、西遊記ギフテッド」

「ウキー」


 本当、次は何が出てくるのかしらね?



「ん?」

「ウキ?」


 筋斗雲から地上を見下ろし、地図と照合しながら進んでいたところ。

 私が目にしたものは。


「え、何しているの、あれ」

「ウキキ?」


 地上に人が多く集まっている。それもただの人ではない。

 彼らは鎧を着込み、同じ陣営で固まっている騎士たちだ。

 まさか魔獣が現れた?


 このグラムザルト王国、今まで魔獣なんて出なかったのだけれど。

 アイゼンハルト領でキメラとともに魔獣が現れ、人々を襲ったの。

 それがどうにも人為的な災害の可能性が高まっているところ。

 ただ、現段階で詳細は判明していないわ。


「でもあれ、違う陣営の騎士たちが二手に? もしかして戦争?」

「ウキー……?」


 戦争と言っていい規模なのかは微妙だ。

 前世で直接的に戦争を経験した覚えはないが映像では見たことがある。

 それに比べれば、百人以下の騎士たちが二陣営で衝突する程度は小競り合いに見える。

 でも、今世の価値観で考えると、それもけっこうなことなのかもしれない。


 筋斗雲で空から、かつ隠身法で姿を隠している私とミニ・マイン。

 俯瞰して落ち着いてその様子を窺うことができる。


 両陣営は川を挟んで相対しているわ。

 羽織ったマントなどの紋章が陣営ごとに異なっている。

 なぜ川を挟んで睨み合っているのかが不明。

 よくよく見れば、川底が他の場所より見えやすい。

 あの場所が、歩いて川を渡れるポイントなのかもしれない。


「ええと、地図でいうとこの場所は……」


 ちょうど川を領境として、二つの領地に接している川のようだ。

 もしかして水場利権を争って領地戦をしているのかしら。

 水場の確保なんてどの時代、どの国でも重要な問題よ。


 また、この平和そうな国でも、実は意外と領地戦は認められている。

 国と国の戦争ではなく、領地間での争いだ。

 騎士という職業が身近に普通にある世界観だからこそかしらねぇ。


 主に争うことは領地の境界線、それに伴う利権や資源の確保。

 わかりやすくいえば、領境に鉱山なんかある場合ね。

 自然は都合のいい形をしていない。

 だから『この鉱山は我が領地の物である!』という意見をぶつけあう事態になるわ。

 対話と交渉で問題が解決すればそれに越したことはないのだけれど。

 それではどうにも決着がつかない場合に領地戦が発生する。


 とはいえ、それはまったく無法の争いではない。

 国公認の領地戦というやつなので、事前申請だの、取り決めだの、いろいろとある。

 この領地戦が容認されているのは、王国で騎士爵を得た騎士たちが与えられる仕事だから、という面もあるわ。

 領地戦に参加できるのは基本、騎士爵を得た者だけ。

 民間人に危害を加えてはならないし、略奪・蹂躙など以ての外というわけ。


 騎士に普段から仕事を与え、戦闘経験を与えることは国力の強化にもつながる。

 ……生き残っていればの話だと思うけど。

 前世現代と違い、訓練だけの兵ばかりでは、いざという時に差が出るという考えだ。


「伯爵家同士の領地戦。普通なら何も干渉しないのだけど」


 私は今、『聖女』フィナさんに会うために移動している最中だ。

 その移動中に領地戦が始まるかどうかの光景を発見!

 さぁ、はたして彼女はこの領地戦に介入しないでしょうか?


「答えはノー。あの子、絶対に首を突っ込んでいそうだわ!」

「ウキー!」


 フィナさんには第一王子、ヴィンセント殿下と他三人が同行していたはず。

 公務の一環ということで各領地の視察も兼ねるという触れ込みだった。


 そんな大事なことに殿下の婚約者〝候補〟な私が関与しないのかって?

 それは知らない。声もかからなかったので別にいいのだろう。

 むしろ候補止まりなのだから、私から申し出て同行し、アピールするのが普通かもしれない。

 私は王子妃になりたいなんて思っていないからヨシ!


「さてさて」

「ウキウキ」


 この領地戦に彼女が関わっているか、否か。

 それを確かめるためにもまずやっておくことがある。それは。


火眼金睛(かがんきんせい)!」

「ウキーッ!」


 私の眼は、自分では見えないものの、白目部分が赤く染まり、瞳は金色になる。

 孫悟空の火眼金睛。

 筋斗雲に乗っている状態の、遥か上空からでも地上の様子を確認することができた千里眼。

 私は孫悟空に倣って片手を両目の上に翳し、遠くを視るように身を乗り出す。


 すると私の視界だけがグンッと移動し、フィナさんのところまで飛んでいく。

 そうして見えた彼女の姿は。


「…………」

「ウキ?」


 どこかの薄暗い場所。そこで腰の辺りをグルグルに縄で縛られている姿だった。


「やっぱり誘拐されて捕まってるー!?」

「ウキー!?」


 やはり聖女の助力を乞うにも一筋縄ではいかないみたい。


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― 新着の感想 ―
再開待ってました!フィナちゃん相変わらず捕らわれトラブルに巻き込まれてるう!
再開、待ってました嬉しいです! …… 聖女ちゃんさっそくの誘拐とは ……
再開ありがとうございます!待ってました(´▽`) 合いの手ミニちゃんノリが良くて可愛い。 予定調和聖女ちゃん……この分だと十回目の誘拐なんだろうな(笑) ピー○姫並みに誘拐されるね! G4仕事しろ。 …
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