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私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~  作者: 川崎悠
第4章 破滅フラグは降妖伏魔

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104 マロット家とアイゼンハルト家

 逃げた『虎先鋒の男』の捜索を諦め、残った者たちに注目することになる。


「あちらの男、ルドロフは?」

「そちらに動きはありません」

「そうか……。マイン嬢、すまないが、俺は対応に手を回さなければならない」

「ええ、わかりました。その間、私はマリンと話しております。必要であれば呼んでください」

「ああ」


 というわけで用意された部屋に、マリンとミニ猪八戒を連れて戻る。

 ミニ猪八戒は、もうスンッとしてマリンに抱かれているわ。

 あのヤンチャそうなミニを大人しくさせるとは、やるわね。



「お嬢様、どういうことでしょうか」

「そうね……」


 隠せないところに来ているのは間違いない。

 自由に生きたい気持ちはあるけれど、これからは〝敵〟を見据えて動く必要がある。


 私はベッドの端に腰掛けると、マリンを近くに置かれた椅子に座らせた。


「まず、私のギフトだけれど」

「はい」

「いろいろなことができるわ」

「いろいろ?」

「一口に説明するのは無理なくらい、いろいろなことよ」

「…………」


 マリンはそこで抱いているミニ猪八戒に視線を落とした。


「身代わりを作り出して家に置いて、外で活動していたわ」

「……カーマインお嬢様」


 咎めるような視線を向けてくるマリン。


「まぁ、だからって悪さをしていたわけではないの」

「……」

「大きなことで言うと、アイゼンハルトで起きた魔獣災害ね。私はその解決に力を貸したわ」

「えっ」


 そう告げると、流石に驚いた様子のマリン。


「アイゼンハルトへの支援をお父様に申し出たのは、そういう縁があったからね」


 魔獣災害の解決とヴィルヘルムの縁を話す。

 加えて湖の戦いについてだ。

 どうやら怪しい連中がいて、ギフトを悪用していること。

 そうして逃げた敵がいた、と。


「……何をなさっているのでしょうか、お嬢様は」

「好きでしているわけでもないのだけれど。ただ」

「はい」

「私はこの国で何かが起きたら、他人事ではいられないと思うわ」

「……それはお嬢様のお気持ちがそうだということですか?」

「違うの。私のギフトが、この騒ぎの中心から離れられるとは思えない、ってこと」


 西遊記系ギフテッドたちが暗躍する世界観。

 孫悟空のギフトを持っている私が、そんな世界でのんびり生活は難しそうだ。

 巨大猪八戒のような災害そのものを出してくるなら、なおさら。


「……旦那様にはなんと説明されますか?」


 お父様に話すとしたら、ギフトがいろいろできること。

 アイゼンハルトで活躍したこと。

 王国を揺るがすような敵が存在すること、だろうか。


「アイゼンハルトの小侯爵とは、どのような関係ですか?」

「…………」


 マリンが切り込んできた。


「どのような、って言われると」


 互いに意識している気はしている。

 でも、今すぐにどうこうなれる立場では互いにない。

 ヴィルヘルムは後継の立場が曖昧で、婚約は候補がいて保留状態。

 私は殿下の婚約者候補のまま。


 公爵家との繋がりが利点といえばそうかもしれないが、アイゼンハルトだって侯爵家だ。

 高い身分の家格とのつながりをそこまで求めていないかもしれない。

 それよりも鉱山という実利の方が優先されるかもだ。


 鉱山。……縮地の術を使う時に〝地脈〟を探れることに気づいたのだけれど。

 これを使って鉱山を探したりできないかしら?

 地脈が乱れていたり、逆に整ったりしているところに鉱山があるとかしない?

 とくに孫悟空がそんなことをしたエピソードはない。

 そもそも孫悟空は金銀財宝などより、不老不死や名誉を求めるタイプだし。

 三蔵法師が鉱山を探させるなんてこともない。


 地脈から探れなくても筋斗雲で空から見たら思わぬ資源を発見とか。

 鉄道開発よりも先に、そういうことを探してみるのもいいかもしれない。

 鉱脈を見つけたら、それを手土産に縁を結ぶとか……。

 ちょっと現実逃避かな。楽しそうではあるけどね。


「今はなんとも」

「そうですか」


 マリンは、それ以上を追求してこなかった。

 私もこれ以外に言いようがないのだ。


「お父様にもマリンに話したことを伝えるわ」

「かしこまりました」



 それからまた数日。

 療養させてもらいつつ、ヴィルヘルムたちの調査が進むのを待つ。

 調査に協力しようと思ったけれど、私がわかるのはギフト関係だけで、どういう能力持ちか、ということくらいなのだ。

 餅は餅屋、調査は任せた方がいいだろう。


 お父様やアイゼンハルト侯爵にも連絡している。

 今は、お父様たちの動きを待っている状態でもある。


 私の体調も整ったところで、マリンを連れてアイゼンハルトの領都を歩く。

 ミニ猪八戒はヴィルヘルムのところに置いてきた。

 ヴィルヘルムも狙われてはいたからね。


「本当に売られているのですね」


 マリンは領都で売られていた〝赤髪の妖精〟ぬいぐるみを手に取る。

 今、人気の商品だそうだ。

 街で耳を澄ませると、湖の戦いについて噂が流れている。

 ただ具体的な戦いを目撃した者は意外に少ないみたい。

 大暴れはしたものの、事前避難をさせていたからね。


 それよりも、どちらかといえばレギデーシュ商会の噂の方が多い。

 新進気鋭の大商会で、市民の期待も高かった分、そちらが注目されているみたい。

 現在進行形で商会の調査も進められている様子だ。


 調査を任せると決めた手前、お父様たちの到着を待つ時間を少し持て余している。

 夏季休暇は長いが、限りもある。

 そういえばラグナ卿とも会う約束をしていたわよね。

 あとフィナさんとの約束で子爵領にお邪魔する約束も交わしていた。

 元々、筋斗雲での移動を前提に組んでいた予定だ。

 実はけっこうハードスケジュールなのだが、アイゼンハルト領でここまで問題が起きるとは想定していなかったな。


「お父様たちがこちらへ来るのが遅れるようなら、少しこの地を離れようと思うの」

「お嬢様」

「我儘を言いたいだけじゃないのよ。今後の事態を把握するため、大切な協力を得るために必要なことよ」


 ラグナ卿との共闘協定を結びたい。

 それに彼だって、この事態とは無関係ではいられないだろう。

 なにせ紅孩児なので。

 聖女、フィナさんの現在の状況も確かめたい。

 乙女ゲー推論が確かなら、この夏、彼女の回りで事件が頻発していると思う。

 G4が揃い踏みなので流石に解決能力はあると見て、放置していたけど……。

 緊箍児の問題があるから、そろそろ動きたくはあるのよね。


 マリンとの街歩きを済ませて、アイゼンハルトの別邸に帰るとヴィルヘルムが待っていた。

 ちなみにマリンは妖精ぬいぐるみ()を購入して抱えている。

 お付きのお嬢様と外出しておいて自分の買い物をするとは何事か、とか言わない。

 これは私からの〝賄賂〟である。


「マイン嬢、父と公爵を交えた話し合いが決まったよ」


 ヴィルヘルムが届いた手紙を読ませてくれる。

 急なことで、二人とも困惑している様子だ。

 だいたい湖の戦いは、文面で報告されたところで、事態を正確に把握するのは難しい。


「ただ、二人ともすぐに集まれるわけではないね」

「忙しいですものね、二人とも」


 私のお父様、アルベリック・マロット公爵。

 家族仲は良好。子供は、もうすぐ十七歳になる私と十歳の弟がいる。お母様は健在。

 広い領地を持つ領主でもあるが、王宮で大臣職も務めている。

 私はすべてを把握しているわけではないが、派閥をまとめている(おさ)でもある。

 領地運営に関しては縁戚の貴族が代官として担っていて、定期的に視察に足を運んでいるようだ。

 マロット公爵家の領地は広めで王都からそこまで離れていない。

 国全体からすると中央部を任されているといったところだ。


 領地の傾向はというと、鉱山やらがあるというより〝都市〟的な側面が強い。

 立地的に物流が強く、街道が多くつながっていて商売が盛ん。それで税収が発生している感じ?

 日本でいうなら王都が東京だとしたら、大阪や京都みたいな場所かしら。

 王都の東側に位置し、内陸ではあるものの、大きめの川があることで水運もいい。

 まぁ、なかなか国において重要な領地を任されている家ね。


 アイゼンハルト家も王都の東側、どちらかといえば北寄りの位置にある。

 馬を駆ければ半日もなく王都から辿り着ける距離だ。

 大きめの湖がいくつかあり、それが観光名所になっていることは教えてもらった。

 武家であり、騎士団が強いことで有名。

 騎士系ヒーローの家系ということでお約束。

 アイゼンハルト侯爵は、王宮騎士団の団長を務めている。


 王宮騎士団長、ガルシア・アイゼンハルト侯爵。ヴィルヘルムとジークヴァルトの父親だ。

 領地運営は、どうやらヴィルヘルムに任せている様子。

 これといって頭が悪いとかの噂は聞かないので、ジークヴァルトタイプではなく、ヴィルヘルムタイプなのかもしれない。


 王宮騎士団は、王宮に兵舎がある。そこにも団長用の部屋があるだろう。

 お父様と同じく侯爵も王宮に私室を持つことを許されているはずだ。

 また王都のタウンハウスも所有しているとヴィルヘルムに教えてもらった。

 帰る場所がいっぱいあるタイプねぇ。

 領地運営の視察に戻ってくることは(まれ)らしく、ヴィルヘルムを信頼している様子だ。

 縁戚の代官とは違い、優秀な実の息子だものね。


 とまぁ、そういう二人なので、いきなり呼び出されたとしてもすぐに仕事は手放せない。

 これで私かヴィルヘルムが死んだか、大怪我したならまだしも二人とも無事なのだし。


「どのくらい時間が掛かりそうなのでしょう?」

「二週間ほど待つ必要がある」

「二週間」


 流石に夏季休暇の限られた時間を、そこまで無為に過ごすわけにはいかない。

 とくに今は各地で確認したいことやらが大量にあるのだ。


「…………」


 私はヴィルヘルムと目が合った。

 たぶん、二週間と聞いて、私の思っていることは察してくれているのだろう。


「お父様たちの話し合いまでに、いくつかこの地を離れて確認したいことがあるの」

「……ああ」


 ヴィルヘルムのもどかしそうな表情を見返す。


「……今の俺に君を留める権利はないね」

「ヴィル様には、たくさんすることがありますから」


 そうして。

 私はお父様たちの話し合いが始まるまで、この地を離れることに決めた。



「お嬢様? いったい……」

「護衛にはミニ猪八戒を残していくからね」

「ウキッ!」


 筋斗雲で自由行動する孫悟空が、三蔵法師の護衛を頼むがごとく。

 ミニ猪八戒にマリンやヴィルヘルムの護衛を託し、私は筋斗雲に乗る。


「筋斗雲!」


 雲を生み出し、その雲に乗る私。

 その姿にマリンは絶句していた。ミニ猪八戒だって雲に乗っているんだけどね。


「じゃあね、マリン。また置いていって悪いけれど」

「……危ないことはなさらないでください、お嬢様」

「もちろん!」

「…………」


 あ、疑う目付きをされた。

 おかしい。私付きの侍女の信用がないなんて。

 私は公爵令嬢なのに。公爵令嬢なのに!


「八戒! ヴィル様とマリンを頼むわよ!」

「ブヒーッ!」

「ブヒはやめなさい!」

「ウキッ!」


 敬礼みたいな仕草をするミニ猪八戒。

 ついでとばかりに九歯のまぐわを振り回して得意気にしてみせる。

 お調子者感がすごいわねぇ。

 猪八戒そのままだったら、サボって寝てしまいそうだけど……。

 ヴィルヘルムの言うことをきちんと聞くように言っておいたから任せよう。


「ヴィル様」

「……ああ。無事を願う」

「はい」


 言葉はこれ以上重ねず、私たちは見つめ合ってから頷き合った。


 そうして私は筋斗雲に乗って空へと飛び上がる。

 おっと。忘れずに隠身法で姿を消しておこう。

 どうやら、気を抜くと筋斗雲は目撃されてしまうこともあるらしい。


隠身法(おんしんほう)!」


 姿を消し、筋斗雲の上に淑女らしく横に座って、私は空を旅するのだった。


次回から、新天地へ!

ヴィル様とミニ猪八戒はしばらくお別れ。

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― 新着の感想 ―
「今は」ねぇ? この後ラグナとフィナさんに会うのか。人たらしめっ(( 家に帰ったらジト目のカーマイン弟が 「無断で小公爵と逢引きなど何をやっているんですか。姉上」 ですね??(何が)
 ミニのぬいぐるみ良いなあ。  良いなあ!(大事なことなので  ラグナ卿の方も聖女ちゃんの方も面倒臭いイベントの予感しかしないw
 腹黒殿下が邪魔過ぎる件。
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