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魔族育ちのアルズ―終焉を背負う者―  作者: kinaco


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3/16

共鳴

訓練場では、訓練生たちが剣を振るっていた。

剣と盾の衝突音が、絶え間なく響いている。


アルズは儀式を明日に控え、気持ちも高ぶっていた。


「そこまで! 皆、集まるんだ!」


前衛部隊長ブレイブ・スクリットは、低く太い声で叫んだ。

ランサと同じスケルトン系のモンスターで、古くからの友人でもある。共に前衛部隊を仕切っていた。


全員が集まったのを確認し、ブレイブは言った。


「明日はアルズが儀式に向かう。今回は一人だけだが、一年後に控えている者もいる。しっかり見ておけ」


ブレイブはアルズに目線を合わせる。


「アルズ、ついにこの日が来たな。ランサも喜んでいたぞ」


「ありがとうございます!」


緊張気味のアルズは、声が少し高くなった。


「そんなに緊張するな。さて、明日は儀式だが――今から私の試験を受けてもらう」


「試験?」


何が起こるのかわからず、アルズは少し不安になった。

不安になるのも無理はない。他の部隊では、儀式前に試験など行われていないのだ。


ブレイブは、教え子を死なせたくないという一心で、この試験を独自に行っていた。


「そうだ、試験だ。向こうに檻が見えるか? 日が沈むまでに、檻の中にいるモンスターを倒してみろ。倒せなければ、儀式には行かせられない」


ブレイブは右側の檻を指差した。

モンスターは檻の中から、こちらを睨んでいる。


「えっ!? あれを……倒す?」


「訓練の成果を私に見せろ。これが試験だ」


「わかりました……やります!」


アルズは剣を強く握り、決心した。


檻の前に立ち、剣を両手で構える。

目を閉じ、深く呼吸を繰り返した。


「では、モンスターを解放する!」


ブレイブが檻の鍵を開ける。


アルズの前に現れたのは、体長二メートルもあるウルフだった。


攻撃のタイミングを探る。


「うぁぁぁ!」


恐怖を抑えるため、アルズは叫びながらウルフに斬りかかった。


パァン!


剣は弾き返され、アルズはバランスを崩して倒れる。


「くっ……硬い」


歯を食いしばり、再び剣を振るう。

だが、刃はまた弾き返された。


「なんで……」


ウルフが爪を立て、アルズに襲いかかる。

かろうじて避けたが、左腕に傷を負った。


「くっ……」


傷口から血が流れる。


「どうすれば……」


剣の弾かれる音が、何度も訓練場に響き渡る。

アルズのダメージも増えていった。


徐々に、視界が狭くなる。


「今までやってきたことは、何だったんだ。俺は……弱い……」


アルズは、絶望を感じていた。


ブレイブは腕を組み、その様子を見守る。

他の訓練生たちも、固唾を飲んで見つめていた。


何度やっても駄目だ。歯が立たない。

もうすぐ、日が暮れる。


焦りだけが募っていく。


アルズは心を落ち着かせるため、深呼吸をした。

その時――ランサの言葉を思い出した。


「(この世界の物質には“コア”というものがある。そこに落ちている石、植物、形あるものすべてだ。もちろん、お前にもコアはある。コアを攻撃すれば、物質は破壊される。しかし、コアは目では見えない。では、どうするか……それは今度話そう)」


(形あるものにはコアがある。コアを攻撃する方法だ。思い出せ……思い出せ!!)


「(いいか、アルズよ。一体となるんだ。武器と一体化するんだ。斬れるものも斬れやしないぞ)」


その瞬間、アルズの視界が広がった。


「父さん、ありがとう……」


表情は自信に満ち、輝きを取り戻す。


「気付いたな」


ブレイブは、アルズの勝利を確信していた。


「(共鳴!! 思い出した……共鳴だ!!)」


剣を握り直し、意識を集中させる。


「(頼む……共に戦ってくれ……)」


剣に語りかけるように、意識を送った。


剣が、わずかに振動する。


「(よしっ)」


自分の周波数を近づけていく。

ここからは、時間はかからなかった。


アルズに応えるかのように、剣の振動が強まる。

体の震えが大きくなり、やがて和らいでいった。


一定のところで震えが止まり、剣が体の一部のように感じられる。


「(いける!)」


ウルフに目を向けると、コアの場所、形、色――

膨大な情報が、意識の中に流れ込んできた。


「(あれだ……あれがコアだ)」


振りかぶった剣に、光の残像が走る。


「なにっ!? 光だと……ヒューマンは魔力がないはずだが……」


ブレイブは信じられなかった。

ヒューマンは魔法が使えない種族として知られ、他種族から下に見られている。魔力が存在しないはずなのだ。


なぜ、アルズに光が現れたのか。

憶測が、頭を駆け巡る。


「フンッ」


一瞬の出来事だった。


訓練生たちは理解が追いつかず、口を開けたまま呆然としている。


日が沈む直前、ウルフはその場に倒れた。


少しの間、静寂が流れる。


「合格だ!」


ブレイブは、安堵の表情で言った。


「倒した……あれが共鳴……」


目の前に倒れているウルフを見て、感情が爆発する。


「やったぁ〜! やったぞ!

ブレイブさん、これで儀式に行ってもいいですよね!」


アルズは、子供のように喜んだ。


「ああ、ここまでよく頑張ったな。お前は武器と共鳴した。その感覚を忘れるなよ」


ブレイブは目頭が熱くなったが、悟られないように我慢した。


「ブレイブさん、共鳴しているとき、ある一定のところで振動が止まったんです。あれが俺の限界ってことですか?」


「それもあるが、武器によって変わる。良いものほど周波数は高くなり、威力も上がる。

周波数とは言わば生命の鼓動。物質の感情や想いも関係してくる。扱う者が見合っていなければ、共鳴はできないだろう。

今後も鍛錬を怠るな。とりあえず、お前の目標は儀式を成し遂げることだ。決して油断するなよ」


「はい!」


ブレイブはアルズの目を見て、力強く頷いた。


訓練生たちはアルズに駆け寄り、口々に賞賛する。


「よし、本日は解散! 帰って疲れを取るように!」


「ありがとうございました!!」


息の合った声が、互いを称えるように訓練場に響き渡った。


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