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魔族育ちのアルズ―終焉を背負う者―  作者: kinaco


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2/16

スープの温度

一ヶ月前――魔族領。


中央には巨大な魔王城が聳え立ち、その左右に各部隊の施設が並んでいた。

アルズの属する前衛部隊は、大門に最も近い場所にある。

綺麗な施設ではないが、生活に不便はない。

ここで認められることが、魔族領で生きる者の誇りだった。


前衛部隊・居住区


「父さん、ただいまぁ」


剣の訓練を終えたアルズは、疲れを見せないように言った。


「おぅ、おかえり。今日の訓練はどうだった?」


ランサ・スクレットはスケルトン系のモンスターだ。

幹部の指示により、アルズの父親として日々を過ごしていた。


アルズは、自分がヒューマンであることを知らない。

ランサのことを本当の父親だと思っており、見た目の違いも「歳を重ねれば自分もスケルトンになる」と信じていた。


ランサは夕食をテーブルに並べながら、アルズの話を聞いた。


「今日は一つ上のランクと模擬戦をしたんだ。やっぱ、つえぇなぁ」


「なぁんだぁ、また負けたのか? 情けない奴だな」


「負けてねぇよ! 引き分けだ!

なんて言うのかな……奴は妙に落ち着いてた。こっちの動きが分かってるような感じだった。隙が無いんだよ。

おっ、いただきます!」


湯気の立つスープから、骨身に染みるような香りが漂っていた。

アルズはテーブルに置かれたスープを、疲れた身体に流し込んだ。


「なるほどな。剣と精神が一体化していたのかもしれん」


「やっぱこのスープは美味いなぁ。なに、その一体化とかって?」


「いいか、アルズよ。

どれだけ力が強くて素早くても、武器と一体化しなくては意味はない。斬れるものも斬れやしないさ」


「ふ〜ん。それってどんな感覚なんだろぅ……父さんは出来るの?」


「当たり前だろ! 前衛部隊ナンバー2だぞ!

武器と一体になるってのは、同じ周波数で共鳴してるってことさ。

どれだけ共鳴できるかで、強さが決まると言っても過言じゃない」


ランサはナイフをかざして言った。


「共鳴ねぇ……」


アルズは手に持ったスプーンを握りしめたが、何も感じなかった。


「まっ、ちゃんと訓練すれば分かるさ。

部隊長ブレイブの教えを、ちゃんと聞くんだ。あいつなら間違いはない。

そういえば、アルズ」


「んっ?」


「お前、儀式の準備は出来ているのか? 確か、三日後だったな」


「あぁぁ、ヤバいっ」


「全く、お前は……。

十八歳になったらダンジョンに行くよう言われてたろ。

今日はそれを食べたら、もう寝るんだ。明日も訓練なんだろ?

疲れてたんじゃ、何も出来やしないからな」


「わかった! 俺、やり遂げるよ!

そして幹部になって、父さんを楽にさせてやるから!」


アルズは握り拳を、ランサに見せた。


「父さん、なんか嬉しそうだね」


「何言ってんだ。俺はスケルトンだぞ!

バカ言ってないで、早く食べてしまえ」


「了解!」


スケルトンは表情が分からない。

――だが、アルズには見えていた。


息子の晴れ舞台を喜び、そして心配する。

父親の、その表情が。


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