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魔族育ちのアルズ―終焉を背負う者―  作者: kinaco


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辿り着いた声

「さて、続きを始めましょうか」


ベルデは攻撃態勢に入る。


両手を剣に見立て、風を切るように交差に振った。


「ブラストウェーブ!」


風の衝撃波がアルズとフィリアに襲いかかる。


アルズは剣を構え、集中した。


「レイ・クリーヴァー!」


光の衝撃波が走る。


ドォォォォン!


互いの衝撃波は激しくぶつかり合い、消滅した。


「へぇ……」


「!?」


衝突した衝撃波の奥から、なおも光の衝撃波がベルデへ向かう。


「くっ……」


ベルデは寸前で回避したが、光の衝撃波は左翼をかすめた。


「危なかったわ……やるじゃない」


フィリアが一歩前へ出る。


「卑怯者! 飛んでばかりじゃない!」


フィリアは叫んだ。


「フフッ、面白い子……喜んでもらえてるみたいで嬉しいわ」


「……可哀想だ……」


アルズの声はどこか寂しげだった。


「本当の喜びを味わったことがないなんて……」


「本当の喜び? 何それ?」


ベルデは首を傾げた。


「どうでもいい……」


そう言い捨てながら、ベルデは地上へ降りる。


フィリアが小さく呟いた。


「泣いているわ……」


「何か言った?」


ベルデには聞こえていない。


「あなたの心が泣いていることに気付かないの……?」


ベルデはフィリアを睨みつけた。


「黙れ!」


手の平をフィリアへ向ける。


「バラムフィロ!」


刃のように鋭い風が放たれた。


一直線にフィリアへ迫る。


「ミュール!」


フィリアは障壁を展開した。


バリィン!


だが風の刃は障壁を打ち砕き、そのまま襲いかかる。


「きゃあっ!」


フィリアは吹き飛ばされ、地面へ倒れ込んだ。


「フィリア!」


「だ、大丈夫よ……」


幸い、障壁のおかげで威力は軽減されていたようだ。


ベルデが再び手を掲げる。


「……バラムフィロ……」


「……!?」


「アルズ! 危ない!」


「えっ?」


ズシュッ!


風の刃がアルズの右肩を切り裂いた。


「うわぁっ!」


アルズはフィリアの近くまで吹き飛ばされる。


「アルズ!」


「しっかりして! すぐ回復するから!」


「……リーレン……」


フィリアは回復魔法を発動し、治療を始めた。


「フィリア……油断した……すまない……」


「大丈夫。治せそうだから安心して」


アルズはベルデへ視線を向けた。


追撃してくる様子はない。


「きっと……遊んでいるんだ……」


「アルズ、どうやって精霊を解放するの?」


「精霊もベルデを救いたいはずだ……」


「きっと、もう一度ベルデへ語りかける」


「そのタイミングで、ありったけの光をぶつけるんだ」


「上手くいくかな……」


「やるしかない」


アルズは静かに答えた。


「私にできることは?」


「フィリアの力を貸してほしい。ケルベロスと戦った時みたいに」


「ヴァムプレスね。任せなさい!」


フィリアは力強く頷く。


「あの時より魔力も増しているはずよ」


「それに、セフィラさん特製調合のエリクサーもあるから」


「それは心強いな」


「よし、回復したわよ」


「ありがとう」


アルズは立ち上がった。


「ベルデが苦しむ時まで耐えよう」


「了解!」


「そろそろいいかしら?」


ベルデが笑う。


「まだまだ、これからなんだから……」


翼を撫でながら愉快そうに笑っていた。


アルズは剣を構え、ゆっくり呼吸を整える。


息を吐くと同時に地面を蹴った。


フィリアは支援魔法を重ねる。


「いいわねぇ。楽しみましょ」


ベルデは鋭い爪を立て、風に乗って突撃する。


バァンッ!


アルズとベルデが激突した。


攻撃は休むことなく続く。


フィリアはポーチからエリクサーを取り出した。


(今のうちに魔力を回復しなきゃ……)


薬を飲み干す。


(ヴァムプレスで私の全部をアルズに託す……)


キンッ!


カンッ!


剣と爪が火花を散らす。


互いに一歩も譲らない。


速度は徐々に増し、


やがてフィリアには目で追えなくなっていた。


(まだか……)


アルズは精霊がベルデへ語りかける瞬間を待っていた。


意識をコアへ向ける。


二つ並んだコア。


その左側は薄く緑色へ染まっていた。


(早くしなければ……輝きが薄れている……)


その時だった。


ウィンクルムソードが強く輝く。


(!?)


アルズの意識が引き込まれた。


真っ白な世界が広がる。


「ケルベロスの時と同じ感覚だ……」


『アルズよ……』


「……ウィン?」


『待つ必要はない』


「どういうことだ?」


『自らコアへ語りかけてみよ』


「語りかける……」


『そうすれば道は開かれるだろう』


「ウィン……君は一体……」


『我は意思を継ぐもの』


『お前を導くもの』


次第に視界が戻っていく。


『光を絶やすな……』


「待って!」


だが世界は消えていった。


視界が戻る。


目の前には笑いながら攻撃を続けるベルデがいた。


(語りかける……か)


アルズは剣を握り直す。


意識をコアへ向けた。


(風の精霊よ……俺の声が届くなら応えてくれ……)


反応はない。


もう一度。


(風の精霊よ……応えてくれ……)


ウィンクルムソードの輝きが増した。


(……た……すけて……)


「!?」


女性の声が聞こえた。


(あなたは風の精霊か?)


(……ベルデを……たすけて……)


(……私が……加護を与えようとした……)


(……ベルデは……悪くない……)


(やはり……)


アルズは確信した。


(あなたもベルデも救う)


(もう一度、ベルデへ語りかけてくれないか?)


(……やってみる……)


(ありがとう。必ず助ける)


アルズは剣を強く握った。


刀身から黄金の光が溢れ出す。


「なっ……!」


ベルデは思わず目を覆った。


その隙にアルズは距離を取る。


「(フィリア! 準備はできてるか?)」


「(もちろん! いつでもいいわ!)」


「(よし……共鳴だ!)」


アルズは意識を集中する。


(俺に光の力があるなら……)


ウィンクルムソードの振動が高まる。


(きっと救える)


(いや――救ってみせる!)


黄金のオーラが全身を包んだ。


(ウィン……行くぞ!)


フィリアは目を閉じて集中していた。


(私の力をアルズに……)


振動をイメージしながら両手を剣へ向ける。


(アルズ、受け取って!)


「ヴァムプレス!」


ドクンッ!


アルズの鼓動が跳ね上がる。


瞳から光が溢れ出した。


「はぁぁぁっ!」


右足を引き、剣を後方へ構える。


その時だった。


ベルデが苦しみ始める。


「……うぅ……」


頭を抱えた。


「話しかけるな……!」


(精霊が語りかけている……今だ!)


その瞬間。


アルズの意識に別の世界が流れ込んできた。




(ここは……魔族領……)


見たことのない場所。


だが、なぜか理解できた。


(こんな自然豊かな場所があったなんて……)


草原が広がり、

優しい風が吹いている。


遠くには小さな村が見えた。


アルズは歩き出す。


そこはハーピー族の村だった。


住人達はアルズの姿に気付いていない。


向こうから少女が駆けてくる。


「ベルデちゃん! 遊ぼうよ!」


(!?)


アルズは振り返った。


そこにいたのは――


純粋な笑顔を浮かべた少女。


「うん! 遊ぼ!」


その少女は、

間違いなくベルデだった。


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