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魔族育ちのアルズ―終焉を背負う者―  作者: kinaco


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振動の正体

リサは町を歩き回り、アルズとフィリアを探していた。


「いないなぁ……」


歩き疲れたリサの目に、カフェが入る。

そのまま中へ入り、休憩をとることにした。


「どこに行ったんだろ……」


「お待たせしました」


店員が飲み物を運んできた。


「あの……人を探していまして。魔族の女の子とヒューマンの男の子、見かけませんでしたか?」


「あぁ~、それならギルドに行ったかもしれません。仕事を探している様子でしたので」


やはり珍しい組み合わせなのか、店員はすぐに思い出した。


「ギルド! ありがとうございます!」


リサは飲み物を一気に飲み干し、店を飛び出した。




アルズとフィリアは、セフィラから与えられた訓練を続けていた。


「フンッ!」


アルズは何度も素振りを繰り返す。


「……シュフーラ!」


フィリアは無詠唱での発動を試みていた。


しかし――


うまくいかない。


二人の表情には焦りが浮かんでいた。


そこへセフィラが現れる。


「どうじゃ、二人とも。何か掴めたかのぉ」


「……いえ、何も」


「……私もです」


重い空気が流れる。


「そう落ち込むでない」


セフィラは穏やかに言う。


「簡単にできたら、誰も苦労はせん」


そして続けた。


「どんなに強い者でも最初は同じじゃ。続けることが大事じゃぞ」


セフィラは手をかざし、魔法人形を出現させる。


「アルズ。素振りだけでは飽きるじゃろう」


「次は――剣が触れずに斬るのじゃ」


「触れずに!?」


「そうじゃ」


セフィラは頷く。


「フィリアは引き続き無詠唱の訓練じゃ」


「はいっ!」


「うむ、いい返事じゃ」


セフィラはふっと笑った。


「……その前に、休憩にするかのぉ」


パチンッ。


指を鳴らすと、目の前に料理が現れる。


「腹が減っては修行はできん。さぁ、食べるのじゃ」


「ありがとうございます!」




二人は夢中で食べ始めた。


セフィラはその様子を見て、優しく微笑む。


「食べながらでよい。少し話をするのじゃ」


アルズとフィリアは頷いた。


「お前たちは純粋じゃ。見たものをそのまま受け入れておる」


セフィラはパンを手に取る。


「これはパンじゃ。パンは何でできている?」


「小麦です」


フィリアが答える。


「では、小麦は何でできている?」


「……えっと……小麦は小麦、だよね……」


「見たままならそうじゃ」


セフィラは静かに続ける。


「じゃがワシには見える」


「とても小さな粒が無数に集まり、形を成しているのがな」


「しかも――その一つ一つが常に震えておる」


「……それって……」


アルズが息を呑む。


「そうじゃ」


セフィラは頷く。


「その“振動”に合わせる。それが共鳴じゃ」


「俺たちの体も……?」


「この世界すべてじゃ」


セフィラは微笑む。


「どうじゃ? 剣を触れずに斬れると思わんか?」


「……できそうです」


アルズの目に光が戻る。


「フィリア。魔法も同じじゃ」


「詠唱とは、意識を振動させる行為」


「無詠唱のヒントになるぞ」


「はい……!」


フィリアの表情も変わった。


「焦るでない。焦りは軸をブレさせる」


「一つずつ、丁寧にやるのじゃ」


「わかりました!」


二人は再び前を向いた。




――エルフ領 ギルド「ユニシオン」


リサは重い扉を開け、中に入る。


辺りを見渡すが、目的の二人はいない。


受付へ向かった。


「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか?」


「あの……魔族の女の子とヒューマンの男の子、来ませんでしたか? アルズとフィリアという名前です」


「あぁ~! お二人なら私が担当していますよ」


「……!? 今どこに!?」


「魔女のところに行くって言ってました」


「魔女……?」


リサは目を見開く。


「森の魔女です」


「魔女って……本当にいるの……?」


「少なくとも、お二人は助けてもらったと言っていましたね」


「……そうなんだ……」


リサは考え込む。


「その場所、わかる?」


「いえ……誰も会ったことがなくて……」


「どうしよう……」


困り果てるリサ。


その様子を見て、シリスが提案する。


「依頼を出してみてはいかがでしょうか?」


「依頼……!」


リサの表情が変わる。


「それよ! お願い!」


「かしこまりました。こちらに記入をお願いします」


ペンを握るリサ。


「アルズ……フィリア……待ってなさい」


「絶対に見つけるから!」


その目には、強い意志が宿っていた。




――魔女の小屋


「はぁ……なんか今日は疲れたわ……」


フィリアはソファに倒れ込む。


「だらしないのぉ」


「セフィラさん……」


アルズは真剣な表情で口を開いた。


「……なんじゃ?」


「セフィラさんは魔女ですよね」


「そうじゃが……」


「……俺はいったい何者なんですか?」


静かな問い。


「魔女の力で……分かりませんか……?」


セフィラは少し考えた。


「……ワシは魔女じゃ」


「歴代の叡智を受け継ぐ存在じゃ」


一度、言葉を切る。


「だがの――」


空気が変わる。


「すべてを知ることほど、残酷なことはない」


「何の苦労もなく真実を知って、それで満足か?」


「その目で確かめずに……心から笑えるのか?」


「アルズ……」


フィリアが心配そうに見る。


アルズは俯いたままだ。


「……育ての親に言われました」


「旅をしろ。その目で確かめろって」


「お前の目的はなんじゃ?」


「……俺は――」


アルズは顔を上げる。


「強くなって、魔王ズワルトを倒す!」


「そして、自分が何なのか……この目で確かめる!」


「……よい目じゃ」


セフィラは微笑む。


「安心せい。ワシは導く者じゃ」


「お前たちが進むべき道をな」


セフィラは二人を呼び寄せる。


そして、頭に手を置いた。


「元気の出るおまじないじゃ」


ぽん、ぽん。


その優しさに――


アルズとフィリアは、思わず抱きついた。




――プラーナ 護衛部隊詰所


「テラ様!」


「どうした、騒がしいぞ」


「申し訳ございません。ご報告が……!」


「申せ」


「ハッ! ギルドにて『魔女のもとへの護衛依頼』が出されております!」


「……何?」


「依頼主は――リサ様です」


「……!?」


空気が張り詰める。


「リサが……なぜそんな危険なことを……」


テラは静かに考える。


そして――


「その依頼、受注せよ」


「私が行く」


「よろしいのですか?」


「当然だ」


テラは言い切る。


「このテラ・レイト」


「婚約者を守れずして、何が護衛部隊長か!」


「部隊を編成しろ! すぐに出るぞ!」


「ハッ!!」


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