↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔族育ちのアルズ―終焉を背負う者―  作者: kinaco


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/37

夢の声

アルズは草原に立っていた。


「ここは……どこだ……」


周りを見渡しても何も無い。

空は黒い雲に覆われ、所々から光が零れている。


まるで――

世界の終わりを告げているようだった。


「もう……終わるのか……」


それでもいいと思えた。

何も考えたくない。


ただ、世界の流れに身を任せるのもいい。


その時――

何かが語りかけてくる。


(……アルズ……)


(……光を……絶やすな……)


「誰……?」


(……お前は……この世界の……)


――その瞬間。


「アルズ! 朝よ! いい加減、起きなさい!」


アルズは驚いて飛び起きた。


目の前には頬を膨らませ、腰に手を当てるフィリアが立っていた。

どうやら怒っているらしい。


「もう、いつまで寝てるのよ。朝食の準備をするわよ。顔を洗ってきて!」


「悪い……すぐ行く」


「早くしてね! 今日から本格的に修行が始まるんだからね」


そう言ってフィリアは部屋を出て行った。


「夢か……」


アルズは呟く。


「なんだったんだろう……」


夢にしては、妙に鮮明だった。


アルズは顔を洗い、気持ちを切り替える。

そしてフィリアのもとへ向かった。


「遅いわよ! ほら、お湯を沸かして」


「そんなに怒るなよ」


「怒ってないわよ!」


フィリアはすぐに言い返す。


「早く修行して強くなりたいの。あのままじゃ悔しいからね」


どうやら、ベルデに言われたことが気に障っているらしい。


「そうだな。強くならなきゃ」


(強くなると決めたんだ)


「いい匂いがするのぉ。気合いが入っておるようで何よりじゃ」


「おはようございます! セフィラさん!」


「うむ、おはよう。朝食を食べたら修行を始めるぞ。しっかり食べておくのじゃ」


「はいっ!」


フィリアは元気よく返事をした。


「よし!」


アルズも負けていられないと気合いを入れ直した。




朝食後。

三人は小屋の近くにある湖へ向かった。


「では、始めるぞ」


セフィラは二人を座らせる。


「お前たちは感情的になりすぎじゃ。常に心を冷静に保たねばならん」


そしてアルズを見た。


「アルズ。特にお前じゃ。剣と共鳴して戦うのじゃろう? 忘れるでないぞ」


確かにそうだ。


昨日、ベルデを目の前にして心が乱れた。

あのまま攻撃していても、結果は見えていた。


「わかりました」


「うむ。目を瞑り、何も考えず自然を感じるのじゃ」


二人は静かに目を閉じた。


風が肌を優しく撫でる。

水の囁きが耳に届く。

草木の香りが鼻をくすぐる。


舌には朝食の余韻が残り、

閉ざされた視界は穏やかな世界を作り出す。


アルズは五感で自然を感じていた。


「よし、そこまでじゃ」


セフィラが声をかける。


「どうじゃ? 気持ちは落ち着いたかのぉ」


「はい。余計な考えが浮かばず、穏やかな気持ちになりました」


アルズは感じたままを伝える。


「私は……自分の声がいっぱい聞こえてきたわ」


フィリアが不思議そうに言った。


「もう一人の自分がいるみたいな感じでした」


「うむ。その心を保っておれば、判断に迷わんじゃろう」


セフィラは頷く。


「朝と夜、この瞑想を続けるのじゃ。自分を見つめ直すのじゃぞ」


「はい!」




「さて、アルズ。剣を持って構えるのじゃ。フィリアは少し待っておれ」


アルズは剣を取り出した。


「……!?」


ウィンクルムソードは元の姿に戻っていた。


「アルズ、その剣……ケルベロスと戦った時と同じ?」


フィリアは金色の剣を思い浮かべていた。


「あぁ、同じ剣だ」


それを見たセフィラが呟く。


「ほぉ……魂も面白いが、この剣も興味深いのぉ」


「まぁよい。アルズ、素振りをしてみるのじゃ」


アルズは剣を振りかぶり、真下に振り下ろした。


「なるほど……」


セフィラが言う。


「アルズよ。強さとはなんじゃ?」


「強さですか……力です」


「うむ。間違ってはおらん」


セフィラは微笑む。


「じゃが、もう一歩先がある」


「もう一歩先……?」


「感じたことのない力が出た時を思い出してみるのじゃ。そこに答えがある」


「今日は素振りを繰り返すのじゃ」


「わかりました」


アルズは言われた通り、素振りを始めた。




「さて、フィリア。待たせたのぉ」


「はい!」


「お主は魔族。闇属性の魔法を扱う」


セフィラは続ける。


「自分の魔法を理解しておるかの?」


「私の魔法は相手を助ける魔法です。攻撃魔法は使えません」


「うむ。理解しておるようじゃな」


セフィラは一つ質問をした。


「例えば、大切な人が攻撃を受けて倒れそうになっておるとする」


フィリアは静かに頷く。


「そこで攻撃している相手を魔法で倒す。結果、大切な人は助かる」


「これは、相手を助ける魔法かの?」


「えっ……?」


フィリアは戸惑う。


「……わかりません」


「うむ」


セフィラは優しく言う。


「この答えは人それぞれじゃ。お主は優しすぎる」


「正解など無い。よく考えておくのじゃ」


「……わかりました」


「ではワシに魔法をかけてみるのじゃ。そうじゃのぉ……睡眠魔法じゃ」


「はい!」


フィリアは詠唱を始めた。


「我、求めるは……」


「……」


「シュフーラ!」


しかし――

セフィラは眠らない。


「フィリアよ。魔法はいつも詠唱しておるのか?」


「はい……たまに無詠唱もありますが、どうやっているのか分からなくて……」


「課題が決まったな」


セフィラは手を前にかざす。


魔法人形が現れた。


「これに魔法を撃つのじゃ。もちろん無詠唱でな」


そして瓶を渡す。


「魔力が無くなればこれを飲むとよい」


「ワシのオリジナル調合エリクサーじゃ」


「ありがとうございます!」


フィリアは訓練を始めた。


「さて……」


セフィラは二人を見ながら呟く。


「初めはこんなもんじゃな」




――プラーナ 生命の樹


「ただいま戻りました、お母様」


「リサ。あなたは次期領主になるのですよ」


「自然を感じるのもいいですが、町の様子もしっかり見ておきなさい」


「はい、お母様」


リサは思い出したように言う。


「そういえば、珍しい旅人を見かけました」


「珍しいとは?」


「魔族とヒューマンの組み合わせです」


「……!?」


「名前は……アルズとフィリアと言っていました」


「……リサ」


領主は静かに尋ねる。


「その旅人は、今どこに?」


「しばらくこのプラーナに滞在するそうです」


「……そうですか」


少し考えてから言った。


「リサ。その旅人を探してもらえませんか」


「是非、会ってみたいのです」


「わかりました。明日、探してきます」


「ありがとう……」


リサは部屋を去った。


領主は小さく呟く。


(まさか……)


胸がざわついていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。