#4
「言ったじゃない。僕が強くなったら一緒にゲームしてくれるって。でも…愁くんがこのゲームをやりたくないんじゃ何の意味もないね…。さっき消すとは言ったけど、ここまで大きくなっちゃうと無理かなぁ。まぁそこはどこかの企業に引き取ってもらうとして…。そうだな…愁くんがやりたいゲームってなに?次はそれを作るよ。ねぇ愁くん、僕は何を作ればいいかな?何を作ったら僕と遊んでくれるの?またそこで強くなるよ。それとも僕が作ったゲームじゃ満足できないかな?じゃあ愁くんがやりたいゲームを僕もやるよ。それでいいよね?守るよ。僕が愁くんを守るから、だから教えて?ねぇ愁くん教えてよ愁くん。どんなゲームなら僕と遊んでくれますか?」
やめてくれ
やめてくれ
やめてくれ
恐怖で足がすくむとはこういう事なのだろうか?
直ぐにログアウトを連打するけれど、一向にこの世界から落ちてくれない。
これも全て瑠偉が遠隔操作でもしてんのか?
俺が現実世界に帰らないように?
そう思ったら俺はなりふり構わずに強制ログアウトのコマンドを打ち込んだ。
もし仮にゲームからログアウトできない時の為に、誰かが仕込んだ非公式プログラムだ。
このゲームで遊んでいる友人から予め聞いておいて良かった。
頭に嵌めていた仮想マシンを取り外してパソコンの電源ごと引き抜いた。
異常なほどにびっしりと汗をかいていた。
「…ハッ…ハッ…ハッ」
走った時のように息も荒い。
「なんなんだよアイツ…」
俺はすぐさまスマホを取り出して、とある人物に電話を掛けた。
『ップ…はいはーい?どちらさまー?』
数度のコール後に呑気に電話口に出たそいつに対して俺はこれでもかと言わんばかり怒鳴りつけてやった。
「おまっえ!なんだよあれ!?なんで!?」
『は?誰?何いきなり…って…あ、愁か?いや…え?なんいきなり?なんのこと?』
「お前の弟だよ!」
『弟?なに?瑠偉?』
「そう!!」
『あいつがどしたん?瑠偉なら今アメリカにいると思うけど』
「はっ?アメリカ?」
『うん。留学中』
「留学?」
『そうそう、とある向こうの企業に呼ばれてそっちで仕事がてら勉強してる感じ。てか何でいきなり瑠偉の話?』
「お前、俺がこのゲームするってあいつに話しただろ?」
だってそう瑠偉が言っていた。頼から聞いたって。
『は?言ってねーよ』
「あ?んなわけないだろ!だって現にお前が誘ってきたゲームにINしたら…」
『あ?なに?アイツまだあのゲームやってんの?それこそ初耳なんだけど』
「いや、でもアイツ開発者だろ?」
『まぁ開発者だけど、アイツ自分が作ったゲームはサンプルしかやらねーとか前に言ってたし。それに俺がやってる事もアイツには言ってねーよ。弟が作ったゲームを兄貴が楽しくやってるとか恥ずかしいだろ?兄としての威厳がだな…』
「お前の威厳とかマジでどうでもいいんですけど」
『え?酷くない?』
確かに言われてみれば、こんなゲームを開発出来る弟なんて持ってしまったら、そりゃ兄としてはちょっと気まずいだろうけれど…。
じゃあなんだ?
瑠偉はどうしてあんな事を言った?なんで頼の名前を出した?嘘を付く必要がどこにあった?
「頼」
『なによ?』
「お前俺をゲームに誘った時どこに居た?」
『どこって、家だけど?』
「…お前、盗聴とかされてね?」
『は?愁何言ってんの?んなわけな…ブッ!ガガガガ…!プッ…プープー』
「頼?おい!頼!?」
ダメだ、通話が切れてる…。リダイヤルしても繋がらなくなった。なんだこれは?妨害電波とかそんなやつか?それともハッキング?
てかそんな難しい事分からないからどうしようもないけれど…。
でも唯一分かるのはこれが電波障害ではないと言う事。現に俺のスマホからは頼への電話以外、他の機能は使えている。他の奴にも電話したら繋がった。
要は頼のスマホに何らかの障害が起きている可能性が一番高い。
でもいきなりなんで頼だけ?そんなの、もう答えは分かっていた。
瑠偉だ。
彼しかこんな芸当が出来る奴は思い浮かばないあんなゲームを製作出来ちまう頭の持ち主だ。頼のスマホをハックする事なんざ容易だろう。
てことはつまり、頼のスマホを介してした通話は全部瑠偉に聞かれていると言う事だ。そう思うと全てに合点がいく。実の兄に対してこんな事するなんて頭がイカれてると思うけれど。
さっきのあの態度も大方頼に対しての嫌がらせの為に俺を使ったのだろう。
でも、どうして瑠偉がそこまで頼に執着してんのか…。兄弟間で何かあったのか?そんな事俺は知らないけれど。とにかく俺を巻き込まないでほしいとんだホラーを見た気分だ。心臓に悪いわ。
ふぅと一息ついた俺は先ほどやっていたゲーム機を一瞥した。
(もう二度とやらないぞあのゲームは)
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