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サニーはココロの衣服を、靴も含めて一つの袋にまとめて脱衣所に置き、浴室でココロの体をシャワーで流した。通常、感染者から流れ出た血液には感染力はあるが、体外へ流れ出て数分もするとその感染力は失われる。そうでなければ浴室で血を洗い流すなんて真似はできない。ただ、サニーは裸にしたココロの体を清めている間に、この子は他の感染者と違うと感じた。
「……傷の治りが早い」
裂傷の類は殆ど塞がりかけていて、骨折していた箇所も含め、治りかけていた。
なによりも、傷の回復の仕方がとても綺麗だった。
その理由はいくつか考えられるが、答えを出すのはまだ早い。
「お嬢さん、この袋に詰められた衣服は、私が燃やしておくよ」
リチャードの声に、サニーは顔を上げた。
「あ、いえそれも私が」
「気を遣わないでいい。私は、その子にもここの主人にも随分と世話になっている。それに、この老体で、今更恐れるものは、なにもないよ。その子の面倒は任せるから」
だとしても、その処分は危険だ。
しかしリチャードの行動は早く、サニーに追うことを諦めさせた。
リチャードは家の勝手口から外に出て、焼却炉にココロの衣類の一切を放り込み、着火したライターの火を暫く眺めると、放り込んだ。焼却炉の蓋を閉じ、昇っていく煙と、晴れていく空に現れた月を見て、リチャードはただ、疲れたように溜息を吐いた。
「……おかえり。ココロちゃん」




