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ココロぞんび  作者: キタビ
第十二話 あたたかい血
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 サニーがトラックを家につけて停車すると、マリオが心配そうな面持ちで迎え、助手席にココロの姿を探した。サニーは無言でトラックを降り、荷台からコートで包んだココロを引き上げた。

 その様子が、まるでココロが荷物扱いされているように見えたのか、マリオの表情が曇った。

 サニーに抱きかかえられたココロに、マリオが手を伸ばした。


「……ココロ」

「マリオさん」


 サニーはそれを制した。

 マリオの表情が「なんで意地悪をするんだ」とでも言うようで、サニーの胸も痛んだ。


「マリオさん、すみません、今は手を触れないでください。怪我をしています」

「……酷いのか?」

「はい」

「なら、まず病院へ行って治療を受けさせてあげてくれ、サニーさん、あんたも一緒に」

「ダメなんです。感染者となった人を、コロニーの病院へは連れていけません」

「……もう、人じゃないからか?」

「放っておいても、傷が治るからです」


 その返答の意味は同じだった。

 マリオはその場で右往左往すると、忙しなく頭を撫でながら険しい面持ちで虚空を見つめ、頷いた。感染したことはクリアから聞いていても、それが現実になるには時間が掛かるのだ。


「聞いてください。通常、感染者はコロニーへ入れることができません。私達アンティコパの監視下にあるということが、それを許しているんです。それに幸い、ここは居住区から離れているので、一時隔離として使えると、私達が判断しました」


 こうして家に迎え入れることすら特例だと説明されたマリオは、その言葉を噛み砕いて飲み込むまでに時間がかかった。本来であれば、面会はコロニーの外だ。それも細心の注意が払われ、家へ連れ帰ることすら出来ない。感染したら最後、人としてではなく、人の形をした危険物として扱われる。

 たった一人の家族なのに、触れることすら許されない。


「……他の、子達は」

「皆無事です」


 それを聞くと、マリオは目を見開いた。

 その目には、安心よりも悲しさが色濃く映った。


「うちの子だけ、か」歯を食いしばるようにマリオは言った。

「マリオさん、今はココロちゃんを寝かせてあげたいんです。個室はありますか?」

「……こっちだ」


 マリオは言うと、サニーを家に招き入れた。

 玄関口で杖を突いて立っていたリチャードが深刻そうな面持ちで道を開けた。

 サニーはリビングに通されると、マリオの行動に驚いた。

 マリオは、まだ食器や夕食が残ったテーブルをひっくり返した。床に落ちたコップや皿が甲高い音で割れた。錯乱したのかと心配になったが、マリオは冷静で、ひっくり返したテーブルを隅へ移動させ、絨毯の端を掴んで脇に避けた。

 見るとそこには、地下室への扉があった。

 マリオは床板に偽装した扉の取っ手を返して掴むと、引っ張り上げた。床板の裏には分厚い底板がはめ込んであり、軽々と持ち上がったり、隠し扉の存在に気づかれないよう細工がしてあった。扉を開くと、地下へと階段が伸びていた。


「地下?」

「ココロが帰ってきたら教えてあげるはずだった場所だ。ここなら、隔離にはうってつけだろ」

「……運びこむ前に、彼女の衣類を処分させてもらえますか?」

「処分?」

「体を洗って、衣服は燃やします。新しい着替えとタオル、それと包帯を持ってきてださい?」

「……わかった。シャワーはそっちだ。服は今、持ってくる」

「マリオさん、私もなにか手伝いましょう」

「いや、リチャードさんはここに居てください」


 リチャードは言われると、何かしようと倒れた椅子を起こしながら、ココロを浴室へ連れて行くサニーと、その胸でぐったりとしたココロの横顔に目を眇めた。

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