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コロニーの中央には、管理人の暮らす屋敷が建っている。
石塀と広い庭に囲まれた立派な石造りの洋風建築物で、塔の天辺には大きな鐘と、庭師の如雨露と鋏を模ったレリーフがある。内装には金や銀もあしらわれ、発掘品の絵画や壷などの工芸品が飾られ、ロビーにはシャンデリアと見た目はとても豪勢だ。
おいそれと立ち入れない神聖な雰囲気はあるものの、門は常に開かれていて、人の出入りも自由である。
コロニーの安全な運用と管理を目的とし、発生したトラブルの一切を解決する中枢であるが、ここ第0056コロニーにおいては長いこと平和な為、滅多なことで忙しくなることはない。
そしてそこに座する管理人は、コロニーにおいて最高権力者であると同時に、日夜住民が安心して安全に、幸せに暮らせるよう考える聖人だった。
今日この日、いつも通り平穏な屋敷の玄関先を箒で掃いていた使用人のもとに、連続して二人の珍客が姿を見せた。一人は巨大なバイクで乗りつけた女性、もう一人は少し遅れてから、ピックアップトラックに乗ってやってきた。
出迎えた使用人が抱いた二人の印象は、『異物』だった。
決して彼等を嫌悪していたり、侮蔑の意味を込めた訳でもなかった。
しかし、形容するとすればその言葉しか見当たらなかった。少なくとも、決して明るい印象や前向きな言葉は出てこない。このコロニーで、彼等の放つ異様な存在感と気配は、まるでよくないことが起きる前兆そのもので、悪いものを運んで来たのではないかと不安になってしまった。
使用人はすぐ、出迎えた二人の客人を管理人の元へと案内したが、気が弱くて優しい管理人のことを想うと、心配で仕方がなかった。
「どうぞ、こちらでお待ちです」
着いてしまっては仕方がなく、使用人は執務室の扉をノックした。




