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糜芳andあふた~  作者: いいいよかん
96/111

その10

読んでくださっている方々へ


ご自身の労力と時間を惜しまず、誤字脱字報告や、感想を書いてくださっている方々、誠にありがとうございます!


何とか書き上がったので、早速投稿します。


大変申し訳ありませんが、暫く遠距離通勤が続くので、書く時間が中々取れず、更新が遅れ気味になるかもしれません。


ご理解とご協力の程、宜しくお願いします。


今時電波の届かない所で仕事なんて・・・(泣)


      虎牢関前曹操軍陣所


「おい、操!

何か虎牢関の様子がおかしいぞ!?」

本陣に駆け込んで来る曹仁。


5月、兵糧の遣り繰りに、陳宮と共に苦悩していた曹操だったが、曹仁の一言でその苦悩が雲散霧消する事となる。


「は?どうしたんだ仁?」

「いや、ここ最近虎牢関を観察していたんだが、2~3日前から守備兵の姿が見えん!」

「何!?」

慌てて本陣を飛び出す。


陣所の端=虎牢関から、矢が届かない位置に赴いて、直に確認を行う。


「・・・・・・確かに、人の気配がせん。」

目を眇めて、虎牢関から誰も顔を覗かせず、バタバタと風にたなびく旗を、じっくりと観察した後、ポツリと呟いた。


「仁!急いで長梯子を段取りして、素登りに長けた者を集めろ!」

「ああ、承知した!すぐに集める!」

曹操の意図を汲んだ曹仁は快諾し、慌てて陣所に戻っていく。


そうして30名程の部隊を編成し、諸侯の軍の兵士達が訝しげに観ている中、虎牢関の城壁の登頂を部隊に命じる。


「おい操!諸侯に先んじて抜け駆けするのは、流石に不味くないか!?」

「何を言っているのだ淵。

諸侯は指を咥えて傍観しているのに、抜け駆けもクソも無かろう?

寧ろそんな中で先陣を切っている我らが、勇気を讃えられる事は有っても、悪し様に責められる謂われはない。」

キッパリと言い切る。


「殿!虎牢関はもぬけの殻です!!」

「やはりか!?急ぎ裏に兵を回して、一刻も早く門を開けさせよ!」

「はは!」

「仁!洪と純に騎馬隊のみで、何時でも出動出来る様、急ぎ伝えてくれ!

門が開き次第、直ぐに動くとな!」

矢継ぎ早に指示を出していく。


「幾ら何でも独断専行に過ぎるだろ!?」

「解っているさ淵、其処まで無茶はせんよ。

急ぎ袁紹に知らせて来てくれ。

我ら曹操軍が洛陽までの道程(みちのり)を、露払い(斥候)を兼ねて先導するとな。」

「!なる程。それなら角が立たんな!」

納得して頷く。


そうして曹操は、歩兵の指揮を夏侯惇らに任せて、開門と同時に曹洪・曹純と共に騎馬のみの編成部隊、約2百騎で出発。


2~3里間隔で、前と左右に放った斥候と併走しつつ、一路洛陽を目指したので有った。


馬が潰れない様気を付けつつ、洛陽を目指していると、


「申し上げます!前方の洛陽方面より、幾筋もの黒煙が上がっているとの事です!」

「・・・もしや董卓軍が近くで、(たむろ)っておるやもしれんな・・・伝令!」

不穏な報せが届き、思考を巡らせる。


「ははっ!」

「後方に居る公孫瓚の軍にも、さっきの話しを知らせて、「警戒されたし」と伝えよ!

我らも足を落として警戒態勢に入る!」

曹操の通報にいち早く反応し、数百メートル後方を追走している、公孫瓚に伝令を飛ばして、自身も少し速度を落とした。


流石は代々異民族と戦い続けている、歴戦の幽州軍閥と、「白馬義従」で名を馳せた公孫瓚だけはあり、隊列に乱れもなくピッタリと、つかず離れずの距離を保っている。


(本当に惜しい、アレだけの精鋭を遊ばせておくとはな・・・俺だったら、遊軍として使って董卓軍を翻弄するのに)

脳内で公孫瓚率いる幽州軍閥を惜しむ。


実質的に董卓率いる涼州軍閥と、伍する実力を持つ公孫瓚の軍は、ちょくちょく友軍の危機を救う事は有ったが、対董卓軍に投入される事は無く、完全に遊んでいる状態だった。


友軍を救う事で公孫瓚の軍は、助けた孔伷(こうちゅう)等に盾代わりに纏わりつかれる事となり、結果的に自身が張純の乱の際に破った、烏丸族の大人(たいじん)(部将クラス)・丘力居(きゅうりききょ)と同じく、騎兵隊の持ち味を殺されて、死に体と化していたのである。


(まぁ、曲がりなりにも友軍を、足手纏いと突き放す訳もいかず、難儀していたのだろうが。

有る意味俺が動いた事で、奴等と離れる事が出来たから、勿怪(もっけ)の幸いではあったか)

苦笑して同情する。


そうこうしている内に、徐々に黒煙が大きくなっていくのを警戒しつつ、洛陽を目指していた曹操が観たモノは・・・


「な、何だコレは?・・・コレがあの洛陽の都なのか!?・・・嘘だろ?」

唖然呆然と立ち尽くす。


城壁が徹底的に破壊され、彼方此方(あちこち)で火災の燠火(おきび)が燻り、あらゆる家屋が倒壊して広大な瓦礫(がれき)の山と化した、僅か半年前までは漢帝国を象徴する、煌びやかさと陰影を持つ都()()()洛陽の、無残にも変わり果てた姿で有った。


「何たる事・・・董卓め!都を焼くなどという暴挙に出るとは!!」

「・・・信じられない・・・こんな事をすれば、後世にまで悪名を残すのに・・・。」

曹洪と曹純も曹操同様、唖然呆然とした表情で呟いたので有った。


「申し上げます!」

「何だ?」

「はっ、前方に「董」の旗を掲げた、約千人程の騎兵団を発見!」

「ナニィ!?「徐」や「牛」でなく、「董」の旗に間違い無いのか!?」

思ってもみない驚愕の報告に、報せて来た斥候に聞き返す曹操。


「はい!間違い無く、「董」の旗を掲げている一団にございます!

緩やかに長安方面に移動中です!」

間違い無いと言い切る斥候。


(まさかのまさかだが、もしも董卓が居れば、千載一遇の好機。

・・・この半年近い戦いも、董卓さえ討てば一瞬で終わらせる事が出来る!

幸いにも公孫瓚の軍がすぐ側に居る!)

脳内で素早く計算をして、


「・・・良し!今より我らは、急ぎ董卓軍を追うぞ!続けぇ!!」

長安方面に指差し、追撃を指示する。


「おい待て操!?我らだけでは幾ら何でも、多勢に無勢に過ぎるだろうが!?」

「だから単独で追撃するんじゃなく、公孫瓚の軍が応援に来るまでの間、我らで足止めをするんだよ!急げ!!」

曹洪の懸念を一蹴して駆け出した。


「しかしだな操!?あの涼州兵の馬術に、我々ではとても!?」 

「正面切ってでは歯が立たんかも知れんが、後背を突けば勝機は十二分に有る!

騎兵は左側面や後背が弱点なのは、如何な涼州兵と(いえど)も変わらんからな!」

「!?・・・確かにそうだね。」

曹操の言に納得して頷く曹純。


古来より騎兵は世界共通の弱点として、左側面と後背には弱かった。


理由として左側面の場合は原則、騎兵は左手で手綱を持ち、右手に武器を持って戦闘を行っていたからであり、左側から攻撃を受けると死角が多くて反撃し辛く、かと言って手綱を離して応対すると、バランスを崩して落馬する危険性が高かった。


後漢から三国時代には、鞍に足をかけて固定する「(あぶみ)」が無く、両足で馬の腹を挟んで固定化していたので、尚のことで有った。


そして後背を突かれる方は、左側面以上に死角多いのでかなり脆く、故に相手に正対するべく方向転換をして、対応するのがセオリーで有った。


しかしながら止まっている状態なら、その場で馬首を翻して方向転換するのは、比較的容易では有っても走行中は不可能であり、スピードを上げて距離を開けた後に、方向転換をするか、左右どちらかに一旦逸れて、大きく円を描く様に回って正対になる様、上手く調整するかの2択だった。


まぁ、どちらにせよ相手の追撃を振り切る必要性が有り、それなりの損失を被る事には、違いは無いので有るが。


それはさておき、


そうして董卓軍を討つべく、(ばく)進する曹操軍と同時に、


「オヤッさん!後方の斥候から、「曹」の旗を掲げた一団が接近中との事!

数は凡そ約2百騎程だそうです!!」

「あん?曹操の洟垂れが追って来とんのか?」

斥候から曹操軍接近の報を、片眉上げて訝しげに聞く董卓。


董卓直卒(ちょくそつ)(旗本)である精鋭2千騎は、洛陽の民衆が退避するまでの間、命懸けで虎牢関を守り通した勇士達を、長安までキッチリ護送する為、白波賊等の襲撃を警戒して、露払いをする役目を担う牛輔率いる前軍と、後方の殿軍として、董卓率いる後軍に別れて行軍していた。


「詳細は不明ですが恐らく。」

「ふん、単純に後背を取ったけんて高々2百騎ぐらいで、儂の旗本に勝てると思とんのかいや曹操は。

大層舐められたモンやな・・・張済(ちょうさい)!」

「はは!」

「ちぃと曹操とつばえたれ(遊んでやれ)や。

そやな、コッチも2百おればええやろ?」

「充分にございまする!」

主君の意図を汲んだ張済が、拱手して頷く。


「ほなら後は頼んだぞ?

伝令!守備兵と牛輔に敵襲を伝えよ!」

後続の約2百騎程を隊列から切り離しつつ、速度を若干下げて、ギリギリ追いつけそうな速度を保ち、曹操を()()()()段取りを付ける。


「!?居たぞ!この距離なら、止まって方向転換も出来まい!・・・吶喊(とっかん)!!」

「「「「「おおっっ!!」」」」」

「董」の旗を観た曹操は、迷い無く命令一下に突撃を命じる。


(今まで観た涼州兵とは、装備品の良さが段違いに違う!コレは・・・居る!董卓が間違いなく居るぞ!)

身に付けている装備品の良さで、董卓直属の部隊と確信し、手綱を持つ手に力が籠もる。


(ふ・・・我々を弱卒として甘く見ている様だが、後背からなら伍す!?)

先頭を切って突撃し、後百メートル付近にまで接近した時、驚愕を目にする。


殿軍と思しき董卓軍約2百騎が、突如としてクルリと上半身を左半身(はんみ)(よじ)り、矢をつがえて引き絞り出したのである。


(な!?歩射(ぶしゃ)(徒歩での射撃)で背射(はいしゃ)(背面射撃)をするなら兎も角、走行中の騎射で背射だと!?)

中原(ちゅうげん)の弓馬術ではほぼいない射手が、ゴロゴロ居る涼州兵の弓馬術の凄さに、驚いたと同時に、


「しまっ!?全軍停止ぃ!!止まれぇぇ!!」

罠に掛かった事を瞬時に悟り、慌てて部下達に緊急停止を叫ぶ曹操。


咄嗟に身を屈め、両手を顔の部分で交差させて、少しでも致命傷を避ける動作を取った曹操の意識は、馬の(いなな)きと空気を裂く矢の音と浮遊感と共に、ブラックアウトしたので有った。


「・・・・・・はっ!痛!?・・・此処は?」

飛び起きて周囲を確認した後、ベタベタと自分の体を触って、身体の異常を確かめる曹操。


(所々擦り傷や打撲傷が有るが、大きな怪我は無いな・・・幕舎の中の様だから、どうやら味方に救護されたか・・・)

自身の首をさすり、安堵の息を洩らす。


そうこうしている内に、曹操の意識が戻ったのを見て取った部下が、慌てて幕舎から走り出て行き、主だったメンバー=夏侯惇達が、曹操の下に参集したので有った。


「脅かしやがって・・・大事ないか?」

「ああ、擦り傷と打ち身程度で済んだ様だ。

お前こそ大丈夫なのか?ゲッソリしているが?」

気遣わしげに尋ねる夏侯惇の、やつれた(よう)に驚いた曹操の方が、気を使って心配する。


「お前が3日程意識が戻らない間、俺が陣代を務めたのだが、他軍との折衝だの軍議の代理出席だの、気骨の折れる仕事をした結果だ。

・・・やはり俺は一軍の頭領は向かん。」

溜め息混じりに呟く。


「3日!?3日も経っているのか!?

おい、戦況は?戦況はどうなっている!?」

夏侯惇の話に、切迫した声音で尋ねる。


「分かった分かったから落ち着け!

とりあえず順を追って話すと我々は今、焼け落ちた洛陽の跡地に滞陣している。」

「ふむふむ。」

「そして要約すれば、大きく3つの事柄が、お前が寝ている間に発生している。」

指を3本立てる。


「先ず1つ目、お前も薄々察していると思うが、董卓軍の追撃に失敗、逃げられた。」

「・・・まぁ、そうだろうな。

寧ろオレが生きている事の方が驚きだし。」

コクリと頷く。


「それで2つ目、諸侯の1人で東郡太守だった、橋瑁(きょうぼう)殿が暗殺された。」

「は?誰にだ?董卓に殺られたのか?」

「いや、放逐された劉岱に。」

「劉岱に!?」

意外な人物の名が出て、素っ頓狂な声を上げる。


「どうやら劉岱は放逐された後、主上に赦しを乞いに行こうとしたのか、北か南かどちらから入京したかは判らんが、洛陽に我々よりも先に到着していたらしくてな。

それで橋瑁殿の関係者を装って近づいた所を、隠し持っていた短剣で一突きだったらしい。」

「しかしなんで橋瑁を狙ったんだ?」

劉岱の行動原理が腑に落ちず、首を傾げる。


「その場で橋瑁殿の側近に、斬り殺されているんだが、最期に言った言葉は、「橋瑁の偽勅に乗らなければ!」だったらしい。」

「何だそりゃ?只の逆恨みかよ。

偽勅と判ってて、乗るか乗らぬかを決めたのは、他ならぬ当の劉岱本人だろうに。」

みっともないと呆れる曹操。


指名手配されて、選択の余地が無かった曹操と違い、劉岱には自身で参加するか否かの、選択肢がきちんと有り、利害得失を考慮する余裕も有った。


それなのに損をしたと言って怨むのは、自身の無能な判断力を棚に上げ、他責思考以外の何物でもなく、みっともない話で有る。


「大方、焼け野原の瓦礫と化した洛陽を観て絶望した後、のうのうと入京して来た連合軍を観て、怨恨の感情でも湧いたんだろうがな。」

「まぁ、そんな所だろうな恐らく。」

曹操の想像に頷く夏侯惇。


「話を戻して最後の3つ目。

橋瑁殿のゴタゴタの後、諸侯が集まって長安に進むか、一旦退くかで今現在紛糾中だ。

俺が代理として出席していたが、お前が意識を取り戻したと聞いて、抜け出して来ている。」

疲れた表情で溜め息を吐く。


「何?諸侯が集まって軍議の最中なのか?

進撃派と撤退派の内訳は、どんな塩梅なのだ?」

「あ~・・・袁紹、袁術、袁遺、公孫瓚殿等は進撃派で、鮑信、張邈、孫堅殿等が中立、孔伷、張超(ちょうちょう)(張邈の弟)等が撤退派といった感じだな。」

目を(つぶ)って眉間に指を当てつつ、軍議内での各自の発言を基に、内訳を述べる夏侯惇。


「そうか・・・軍議中なら丁度良い、惇。」

「何だ?」

「何時でも此処から出発出来る様、準備を整えておいてくれ。

オレは袁紹達の進撃論を止めて来る。」

袁紹達が居る本陣の場所を聞き、怪我の影響も無さげに、テクテクと歩き出す。


「おい待て操!?

折角此処まで来たのに退くなどと、本気で言っているのかお前!?」

「無論、本気に決まっているだろうが。

最早これまでだ惇・・・恐らく連合軍は解散になるだろう。

解散後に拠って立ち、再起を図るぞ。」

軽く手を振って、歩き去っていく。


「急にとんでもない事を言うなよおい!?

・・・ったく、毎度毎度俺らを振り回しやがって。

ハア・・・御大将の指示を聴いたな?皆の者!

急いで出立の準備だ!ボーッとするな!」

一息吐いた後、手を打ち鳴らして部下達に、アレコレと指示を出していく夏侯惇で有った。


       連合軍盟主袁紹本陣


「失礼する。」

「お、おお曹操ではないか!

落馬して意識不明と聞いていたが、大丈夫か?」

本陣の最奥に座っている袁紹が、ひょっこり現れた曹操に、気遣わしげな言葉を投げ掛ける。


「ああ、何とかな。」

「ふん、功を焦って独断するから、その様な無様を晒すのよ。」

対照的に、袁紹の従兄弟である袁術が、曹操に侮蔑的な物言いを投げ掛けた。


「止めんか公路(こうろ)(袁術)!」

「何でだ本初(ほんしょ)(袁紹)?

私は何も悪い事は言っておらんぞ?

諸侯の足並みを乱し、勝手な行動を取った者に、当たり前の事を言っているだけだ。」

「物には言い方が有るだろう!言い方が!」

2人で言い争いを始める。


(相変わらずの仲の悪さだな此奴等。

一歩誤れば揃って首が飛ぶのに、喧嘩するとは悠長と言うか暢気な奴らだ)

内心呆れつつ、


「身内の喧嘩は余所でやってくれ袁紹。

オレは諸侯の中で、無謀な進撃論を推している方々を、止めに参った。」

「「なに!?どういう事だ曹操!?」」

異口同音に怒鳴る、進撃論の袁家2痴。


「どうもこうもない。

単純に我らは涼州兵に連戦連敗、調練不足でマトモな軍事行動がとれん上に、慢性的な食糧難で、維持もままならんではないか。

そんな状態で進軍など、無謀極まる話しだ。」

諸侯に視線を巡らし、連合軍の窮状を説明する。


「うぬぬ・・・それは・・・。」

痛い所を突かれ口ごもる。


「それに董卓追討の千載一遇の好機・・・いや、我々に取って()()()()()()()()を逃した時点で、勝敗が決している。」

ハッキリと言い切る。


「我らが負けるとでも言うのか曹操!?」

「逆に聴くが袁紹、現状に於いてお主には、勝ち筋が見えているのか?」

激昂する袁紹に、冷静に尋ねる。


「無論だ!

こうして董卓が洛陽を放棄した以上、後方か内部で何らかの事変・事案が、発生したのは疑い様のない状況だ!

このまま長安に向かって、奴を追い詰めれば間違いなく、内部の同志から内応をされて自壊するか、後方の異民族の侵入を受けて、我らと挟み撃ちに遭って降伏するだろう!!」

腕を振って熱弁する。


(オイオイ・・・正気で言っているのか、このおバカは?幾ら何でもお気楽極楽な、お花畑思考にも程が有るだろうに)

虫の良すぎる御都合思考に、頭が痛くなるのを覚え、額に手を当てて(こら)える曹操。


周囲の諸侯を観ても、大半が曹操と同じ表情をしていた。


「あのな袁紹、事変や事案が有って洛陽を放棄するのに、城壁や家屋を破壊する余裕が有ると思うか?

明らかに我々を長安に誘い込まんとする、堅壁清野(けんぺきせいや)(焦土)策の一環だろうが、どう観ても。」

袁紹に危険性を諭す。


「馬鹿を言え曹操。

堅壁清野策と言うのは、近隣周辺の作物を焼いて、敵に補給させない様にしてから、城壁の有る城に閉じ籠もる策だぞ?

それなのに、肝心の洛陽の都を破却したら、何の意味も無いで有ろうが?」

ハンっと鼻を鳴らして反論する袁術。


「洛陽単体で観ればそうかも知れんが、軍事的観点で観れば、洛陽よりも長安に籠もる方が、理に叶っているのに気付かんのかお前は?」

「何!?」

「公路!・・・どういう意味だ曹操?」

曹操の半ば小馬鹿にした発言に、気色ばむ袁術を(たしな)め、険のある表情で聞き返した。


「単純に言えば、長安と言うよりも函谷関(かんこくかん)に引きずり込めば、策源地の涼州に近い董卓側の方が、補給・補充が容易になって益々有利になるし、追撃する時は()()()()退()()()()()()()から、追い詰めるのも容易になるからだ。」

理路整然と述べる。


「貴様ぁ!我らが負ける前提で物事を言うとは、どういう了見だ!?」

「あのな?例え負けずとも勝つのも難しいのは、判っているだろうが?」

(いきどお)る袁術に対して溜め息をこぼすと、


「函谷関付近で野戦になれば、あの精強な涼州兵と正対せねばならんし、敵地のド真ん中故に、我らは兵の補充もままならんのに、向こうは涼州から容易に補充が可能だ。

しかも籠城戦にしても、数年は持つ程の食糧を擁しているオマケ付きだぞ?

そんな長滞陣に付き合える程、豊富に食糧を持っているのかお前は?」

袁術に長安方面に進軍した場合、どういったリスクを負うのかを解説する。


「うぐぐ・・・。」

「待て曹操!お前は何故董卓の食糧事情を知っているのだ?何処から聴いた!?」

悔しげに唸る袁術に変わり、袁紹が責める口調で曹操に問い掛けた。


「はい?何処から聴いたも何も・・・。

お前こそ何を言っているんだ袁紹?

何進大将軍が存命の折りから、軍部に10万の兵が5年は賄えると謂われた、大量の食糧が備蓄されていただろうが?

当時の軍部で、只の1校尉に過ぎなかったオレでも知っているのに、何進大将軍の側近を務めていたお前が、何故知らんのだ?」

首を傾げて聞き返す。


「・・・・・・え?」

「いや、え?じゃなくてな。

黄巾賊以降、有事に備えて何進大将軍が、商人出身の人脈を利用して、食糧をコツコツ備蓄していたのは、軍部に所属していた士官階級の者なら、誰でも知っていた話だぞ?

立場上董卓は、亡き何進大将軍の遺鉢を継いだ形になっているから、食糧の備蓄もそっくりそのまま引き継いでいる筈だし。」

淡々と袁紹に話す。


「なんだと!?」「そんな・・・」と言った声が諸侯から洩れ、「どういう事だ袁紹殿!?」「根本的な、戦略前提が違うではないか!?」と言う非難に変わっていく。


「曹操!何故ソレを最初に言わん!」

「そんなもん、お前か袁術が諸侯に告知済みで、情報共有していると思っていたからだよ。

オレは支軍で鮑信殿以外とは、虎牢関に合流するまで接点が無かったしな。

無論、鮑信殿には伝えているぞ?」

知らんわそんな事とばかりに、呆れ気味に反論する曹操。


チラリと鮑信を視線を送ると、「確かに聴いている」と、コクリと頷く鮑信。


今までの軍議とは、違った意味でヒートアップしていく袁紹達を尻目に、とっとと撤退するべく、辞去しようとすると、


「待たれよ曹操殿!

未だお尋ねしたき議があり申す!」

諸侯の1人・張邈(ちょうばく)に呼び止められた。


「聴きたい議とは何ですかな?張邈殿。」

「食糧事情はとりあえず脇に置いといて、貴殿がその前に言われた、「董卓側は函谷関で追撃する方が、我々を追い詰めるのが容易になる」とは、如何なる事由で有ろうか?」

万一の敗北した場合の、リスクを問い質す。


「ではあくまでも、「戦は常に利害を厭う(戦争をする時は、勝った場合と負けた場合の、利点・問題点の双方を考慮しなければならない)」の観点で、万一敗れて追撃を受けたと想定して、虎牢関と函谷関周辺の地理を、頭に思い浮かべて貰いたい。」

「ふむ、虎牢関と函谷関のな。」

思い浮かべているのか、瞑目する張邈。


「先ず虎牢関で追撃を受けたと想定した場合、我らが撤退する経路は、大きく兗州と豫州の2つの経路になり申す。」

「ふむ、左様ですな。」

コクリと頷く。


周囲を観れば喧騒が止み、2人のやり取りに聞き入っていた。


「兗州からは東に青州・徐州へ向かうか、北に黄河を渡って、河北の冀州にと有り又、豫州からも東に徐州へ、南に長江を渡って荊州・揚州と、幾らでも撤退経路が有るので、如何に董卓が騎馬隊を擁していると云えど、我らを捕捉するのは、容易では有りますまい。」

「うむ、確かにそうだが・・・それなら函谷関でも、条件は同じではなかろうか?」

首を傾げて疑問を呈す。


「いや全く条件が異なりますぞ?

函谷関から撤退する場合、先ず北は匈奴族が跋扈する危険地帯故に論外。

そして東の虎牢関まで辿り着くには、司隷を横断して凡そ10日掛かり、南の荊州経路も縦断するので、同じ位は日数を要しましょう。」

そう言って言葉を切り、


「つまりは、虎牢関と同じ前提条件になるには、10日間に渡って()()()()()()()()()になる訳です。

と言う事で董卓側は、虎牢関か荊州経路を()()()()()()()ほぼ必ず我らを、捕捉出来る事になり申す。

故に函谷関に我らを引きずり込む方が、董卓にとっては大きな利点になるのです。」

生き地獄を味わう事になるぞと警告する。


「・・・袋の鼠、か。」

精強な涼州兵に追われるのを想像したのか、顔面蒼白になって呟く張邈。


「ほぼ確実にそうなるかと。

我らの軍の騎兵は、公孫瓚殿の騎兵団1万を除けば、かき集めても1万いくかどうか。

それに対して董卓軍は()()()()5万騎、涼州に近い分もっと増える可能性は否めませぬ。」

「あ、余りにも危険過ぎる・・・。」

諸侯の1人が、怖気を覚えたのか震える。


実際には、政治的意図で洛陽を破却したのだが、現状に於いて政治的見識・経験がまだまだ乏しく、軍事的見識・経験の方が勝る曹操達は、軍事的見識で考えて、董卓が清野策を実行したと、穿った見方で観てしまうので有った。


「いやしかし!長安に居る名家閥の同志が内応すれば、一発逆転の芽はあるだろう!?」

袁術が食い下がるも、


「その一発逆転の芽は袁術よ、他ならぬお前自身が、縁戚の楊彪の一族一門を()()()事で、完全に(つい)えているだろうに。」

ピシャリと切って捨てる。


虎牢関に集結した直後に、100人程の歩兵が城門から出て来て、「貴様等如き鼠賊、これぐらいの兵力で充分だ」と、城門上から嘲笑されて挑発され、アッサリと挑発に乗った袁家2痴が逆上。


おっかなびっくりで突っ込んで来る歩兵を、怒りに任せて討ち取ったのである。


高が100人程の敵兵でも、勝ちは勝ちと勝利を喧伝し、堂々と討ち取った敵兵の、首実検を行った所ビックリ仰天。


どれもこれも見た事の有る、楊家の一族一門で有り、知らずとは言え身内殺しという、非道な行いをしてしまったので有った。


「あ、あれは董卓の汚い策略で!?

知らなかったのだからしょうがあるまい!?」

「どう言おうと、縁戚を討った事実は変わらん。

結果的に身内にすら血も涙も無い、非道な行いをする者に対して、保身と利害に聡い名家閥連中が内応するなど、間違っても有り得ん。」

首を左右に振って、無理だと諭す。


「くく・・・。」

「うぬぬ・・・それならば、我らで別の皇帝を擁立するのはどうだ!?

洛陽を焼くなどと、天下に(あまね)く悪逆悪行を行った董卓が担ぐ皇帝など、その悪逆非道を正せずを以て皇帝の器に非ず!

大義を知る我々が擁立する方こそ、皇帝に相応しい御仁ではないか!?」

途中で己の言に酔ったのか、大仰に身振り手振りを加えて、役者の如く持論を展開する袁紹、が・・・


「寝言は寝て言えよ袁紹?

本気で言っているんだったら、正気の沙汰じゃないぞお前・・・?」

バッサリと一刀両断する曹操。


「寝言・・・正気・・・。」

「我らの大義名分は、あくまでも董卓の悪逆非道を糾弾し、専横に泣かされている主上陛下を、董卓よりお救いする事だぞ?

それなのに主上陛下を蔑ろにして、新しく皇帝を擁立するだと?

そんな事してみろ、「董卓にも勝る大逆無道」の誹りを受けて、天下の信を失うぞ!?」

辛辣な返答に呆然と硬直する袁紹に、容赦なく言葉の追撃弾を放つ。


「そもそも誰が、そんな戯言に乗るのだ?

候補者でも居るのか袁紹?」

「・・・一応、長老格の劉虞公とか・・・。」

「打診したのか、お前・・・?」

「一応・・・断られたが。」

「当たり前だろうが!!」

袁紹の先走りに憤慨する曹操。


江戸時代風に例えれば、現役の将軍が居るのに一部の旗本達が、勝手な都合で直系筋の御三家処か、親族筋の松平よりも遠縁の奥平系から、将軍を擁立する様なモノである。


幕閣の重鎮(三公・九卿)や各諸大名(地方刺史・州牧)、御三家・親藩(皇族・王族)からの支持など、得れる筈も無かった。


袁紹の言っている事は、一般的に云う叛逆or謀反と同じで有る。


それはさておき、


(ハァ・・・短絡的に観れば、新帝を戴く事で()()()()()()()()を得ようと言う、浅はかな目論見なんだろうが・・・後先を考え無さ過ぎる)

怪我の痛み以上に、頭痛を覚える。


周囲の諸侯も同類の袁術以外は、親族の袁遺ですら、「幾ら何でもないわ~それはないわ~」と、呆れ顔になっていた。


「よしんば万一にも皇族・王族に、そんな戯れ言に乗る大たわけが居たとしても、劉岱の如く主上陛下より、皇室一門から除名されれば、選帝基準の資格を失ってしまうから、劉岱の二の舞になるのは、火を見るより明らかだしな。」

そんなバカが居たら観てみたいと、至って本気で思う曹操。


若干約1名程、二つ返事でそんなバカに応じると思われる、とある属尽なら居るのだが、現時点では全くの無名の存在なので、諸侯の口の端に上る事は無かった。


「だからと言って、例えばお前が至尊の位に昇ったりしたら、希代の悪党・王莽の再来になり、董卓なんぞ霞む程の悪名を得るだけだしな。」

フリじゃないぞ?これ以上アホな妄言を吐くなよ?と、ぶっとい釘を袁家の恥将に差す。


「うぐぐ・・・しかしだ!退いたら退いたで、今以上の展望が開けるとでも言うのか曹操!」

「かといって無謀極まる進撃をすれば、立ち往生して袋の鼠になって全滅か、食糧が無くなって兵に寝首を掻かれるのかの二択だぞ袁紹。」

感情論をぶちまける袁紹に対し、冷静な判断に基づいた反論を述べて、


「このままではジリ貧で、軍が維持出来ず自然消滅になる、我々が取るべき打開策は1つ。

早く連合軍を解散して、各自が何処ぞで拠って立ち、各々で再起を図る事だ。」

明確な打開策を提示する。


「バカな!?解散してバラバラになれば、個別にやられ易くなるだけだろう?」

それこそ無謀だろうがと、訝しむ袁術。


「安易に考えたらそう見えるかも知れんが、董卓の採った清野策は、防衛では有効な手段だが、攻勢には全く向かん。」

董卓の策の欠点を挙げ、


「洛陽という一大拠点を焼失した以上、例えば我らが司隷よりも東南方面に居た場合、我らを討伐する軍を出動させようとすると、関西(かんせい)の長安から長駆(ちょうく)、司隷を横断・縦断して進撃せねばならない。

涼州兵は確かに機動力に優れ、長駆も苦ではなかろうが、補給を担う輜重部隊はそうもいかん。」

現時点では侵攻するための補給路と、補給物資の安全確保が困難と説く。


「確かに・・・某も幽州からの補給物資の確保に、四苦八苦している故に、良く理解出来申す。」

同じ騎兵団で有る、公孫瓚が深く理解を示した。


「つまりは長安から東南に攻める場合、一大中継点で有る洛陽を復旧するか、幾つもの補給中継拠点を構築せねば、満足に攻め入るのは難しい事となり、そしてそれらは一朝一夕で造れる物ではない。」

「「「「「確かに・・・。」」」」」

曹操の言に納得する諸侯。


「曹操殿の見立てで董卓が攻勢に転じるのは、どれくらい掛かるとお思いか?」

「・・・う~む・・・。

あくまでも私的な推測ですが、軍事的には補給路の再構築・新構築で2~3年単位、政治的には洛陽の民を強引に、長安に移転させた事に因るゴタゴタで、恐らく同じぐらいは掛かると観まする。」

鮑信の質問にそう答えた上で、


「但し、軍事政治を同時進行で行うのは、かなりの難事と予測出来るので、政治的な問題が解決した後に、軍事的な行動に取り掛かると思いまする。

依って平均して約5年は掛かるのでは?と、私的には推測致す」

推論を述べた。


「ふ~む・・・それぐらい猶予が有れば、再起を図る事も難しくない、か・・・?」

「いや、あくまでも推測・推論に過ぎぬ。

もっと早まる可能性も有るぞ?」

懐疑的・否定的な意見から、


「それでも現状のジリ貧状態で、自然消滅するよりは、遥かにマシだろう。

乾坤一擲の勝負が出来る事を考えれば。」

「左様、左様。

もしも董卓が攻め寄せて来ても、各々が拠って立った地で、蓄えた力を再度結集すれば、撃破するのも難しくは有るまいよ。」

好意的・肯定的な意見が飛び交う。


議論を重ねる諸侯の思考は、無謀な進撃よりも徐々に撤退して、解散・再起を図る方向に流れていく。


そうした雰囲気の中、


「あ~・・・曹操殿、お尋ねしてもええやろか?」

江東の虎こと孫堅が手を挙げる。


「何ですかな孫堅殿?」

「え~とな・・・董卓からこんな手紙ちゅうか、密書?みたいなん貰てんねんけど・・・。」

竹簡ではない、折り畳まれた紙を懐から取り出し、曹操に渡す。


「「「ナニィィィィ!?」」」

思っても見ない劇物に、素っ頓狂な叫び声を上げる、袁家2痴と曹操。


他の諸侯も、赤くなったり青くなったりと、様々な反応を見せていた。


「早速読ませて貰う・・・から!邪魔だ退けお前ら!?読み難いんだよ!!」

両脇から覗き込もうとする袁家2痴を、ショルダーア夕ックで押し退ける。


「ふむふむ・・・連合軍に参加していても、傍観に徹すれば赦し、現状安堵。

もし内応するのなら、荊南の統治を委任するとな。」

「「・・・え?違・・・。」」

密書の内容を聴いた孔伷と張超が、驚いた表情でポツリと呟く。


「どないやろ曹操殿?

連合軍に参加しとるのに、様子見だけで赦してくれるモンやろかな?」

「フッ・・・ハハハハ!孫堅殿も人が悪い!

()()()()()()()()()ならば、私にわざわざ見せる事は有りますまいに。」

笑いながら密書を返す。


「いやぁ政治には疎いもんで。」

「まぁ、そういう事にしておきましょうか。

孫堅殿のお尋ねの答えは、その密書は何の()()()()()、只の紙切れですな。

精々付け木(発火材)に使えるぐらいですね。」

苦笑気味に答える。


「え、何でだ曹操?」

「董卓の立場からすれば我々は、「主上陛下に刃を向ける反逆者」だ。 

つまり赦す・赦さないは、主上陛下のお気持ち次第だから、例え董卓が「赦し」ても、主上陛下が我々を「赦さない」なら、何の意味の無い密書になる。

そもそも「密書」自体どうとでも、しらばっくれたりする事も出来る代物だしな。」

「・・・あ、確かに。」

曹操の説明に頷く袁紹。


「本当に赦してくれるつもりなら、主上陛下からの「()()()()()」が、渡されて然るべき話になる。

まぁ、紙切れ1つで連合軍の不和を生じさせ、あわよくば内部分裂や仲違いを狙った策謀だろうな。」

内心、「ん?あれ?なんか身に覚えがあるな?」と冷や汗を掻きつつ、外面的にはクールに決める姦雄。


「へ~ほ~、そないなモンかいな。

いや、けども密書貰とんて俺だけなんか?」

グルッと見回して諸侯に視線を向ける。


孫堅が視線を向けると、諸侯の大半が居心地悪そうにしている。


「・・・そ、そんな・・・馬鹿な。」

「う、ウソだ・・・。」

(・・・?何を呟いているんだ孔伷と張超は?

さては・・・此奴等も董卓から密書を貰って、真に受けていたのか。

撤退論を展開していたのも、その影響か。

この後に及んでも黙って保身に走る2人は、土壇場で裏切りかねんな・・・信用出来ん)

唖然呆然と呟く2人の裏事情を察し、嫌悪感と警戒感を抱く曹操。


(ま、こんなモンやろ。

下手くそに団結されて、仲良しこよしになっても、()()()()()()()さかいになぁ。

敢えて暴露する事で、少なくとも俺は疑いの目では観られへんやろうし。

荒れれば荒れる程、成り上がりモンの俺は、もっと成り上がれるちゅうモンやしな)

不和の種を蒔いた事に、内心ほくそ笑む。


こうして色々と波乱含みでは有ったが、曹操の提言を取り入れて、洛陽跡地から曹操と鮑信が駐屯していた、酸棗(さんそう)まで撤退。


そのまま酸棗で解散となり諸侯達は、元の任地に戻ったり新天地に向かったりと、三々五々に散っていったので有った。


「おい、操。コレからどうするんだ?

一旦豫州の故郷に戻るのか?」

「故郷に戻ったとて、ウチの曹家の看板では評判が悪くて、人材も兵士も集まらん。」

「じゃあ一体、何処に行くつもりだお前?」

首を傾げて尋ねる夏侯惇。


「幸いにして太守が暗殺されて、空白になっている所が有るだろう?」

「と言うことは東郡に拠るのか?」

「ああ、対董卓戦の最前線に当たる所だからな。

オレが拠っても諸侯の誰も文句は言うまいよ。」

「違いない。

自分達の盾になってくれるのだから、手を叩いて喜んでくれるぞ。」

肩を竦めて、皮肉げに同意する。


「しかし東郡に拠って立つのは良いが、周辺の郡や(こく)から敵視されんか?」

「それについては大丈夫だ。

少なくとも南の最前線を担う、陳留郡の張邈や後方の済北国の鮑信は、支持してくれるのは確実だからな。

連合軍に所属した以上、最早連携して助け合わないと、どうにもならん間柄だしな。」

苦笑して皮肉げに返す。


「成る程、周囲は味方が居るから安泰か。」

「そういう事だ。

それにもしも他の郡や国と戦争になっても、涼州兵相手に生き残った我が軍約3千は、その辺の郡国の兵相手には負けんよ。」

「確かに。

我ながら良くも生き延びたモノだ。」

しみじみと呟く。


こうして解散後に曹操は、空き家同然の東郡に拠って立ち、張邈や鮑信の後見を得て、実効支配していくので有った。


三国時代の一角である曹魏の序は、東郡にて始まるので有った。


                 続く

とりあえず後は閑話を書いて、この章は終わりにする予定です。


1人だけ全く書いて居らず、流石に閑話にだけでも書いておきたいので。


次章では糜芳に一旦スポットが戻り、ゴソゴソと各群雄の状況を書いていくつもりです。


楽しんで読んで頂ければ嬉しいです。


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>「うぬぬ・・・それならば、我らで別の皇帝を擁立するのはどうだ!?」 それを実際にやらかして最悪な状況を引き起こし数十年続くグダグダになって対立と怨恨を生み出しそれが室町幕府の躓きと不安定さという持…
いつも更新ありがとうございます! 超楽しくワクワクしながら読ませて貰ってます♪ 三国志8リマスターで糜芳選んでみようかと思ったけど、能力ががががorz こいつで始めたら埋もれに埋もれそう。 寒くなる…
密書に引っかかったと思われないよう日和見から積極攻勢に鞍替えする奴らが増えると思ったけど、上手く抑えられちゃいましたね
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