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糜芳andあふた~  作者: いいいよかん
97/111

閑話・あの人はいま・・・

読んでくださっている方々へ


誤字脱字報告・感想を書いて頂き、誠にありがとうございます!


特に最近誤字脱字が多いみたいですみません。


気をつけている積もりですが、中々に・・・。


え~と漸く書き上がったので、早速投稿させて頂きます。



      幽州右北平(ゆうほくへい)郡公孫瓚軍屯所


袁紹を盟主とする反董卓連合軍が、専横著しい(袁紹達名家視点。自分達を蔑ろにしている時点で専横扱い)董卓率いる涼州兵を相手に、一進一退の激戦を繰り広げている・・・訳でもなく、一方的にコテンパンにやられている頃・・・


「あんのクソ大将!又仕事をサボりやがって!

何処で油を売ってやがんだ一体!?」

プリプリと怒りつつ荒い足取りで、クソ大将こと主君の劉備を探し回る簡雍。


一度壊滅状態に陥った劉備軍一党は、再起を図るのと同時に戦力強化も兼ねて、廬植門下の先輩である公孫瓚を頼り、公孫瓚から客将として受け入れられていた。


基本的に客将と言うのは、傭兵や用心棒的な意味合いが強いのだが、劉備の場合は正直言って、居候的な立ち位置で有った。


しかしだからと言って、当然タダ飯にありつける訳でもなく、劉備達はお手伝いという名目の、無料奉仕を見返りに行っている。


関羽・張飛は騎兵団では対処し難い、山間(やまあい)に巣くう盗賊連中を、新規募集した新兵の実戦訓練を兼ねて討伐に赴き、簡雍と劉備は読み書き・四則演算が出来る部下達と、事務処理の手伝いをしていた。


地方軍閥の共通の特徴として、武を尊ぶ武尊気質な為、幽州軍閥も涼州や并州と変わらず、事務に長けた文官系の者が少ないので、関・張コンビよりも簡雍の方が重宝され、流石に機密情報(武具・兵糧の在庫数の詳細等)に携わる事は無いが、細々(こまごま)とした雑務にかり出されている、のだが・・・


「毎度毎度いつもかっつも、隙あらば抜け出しやがってあの野郎~!

今度は2~3日も一体、何処をウロウロほっつき歩いてやがんだ?」

念仏の如く、何度も呟いて歩く簡雍。


読み書き・四則演算は出来るが、事務処理がキライな劉備は、簡雍が劉備の下に付けた部下に仕事を押し付け、しょっちゅう抜け出すのが、もはやルーチン化していた。


簡雍が彼方此方(あちこち)幕舎(テント)に顔を覗かせ、主君の所在を確認して回るのは、公孫瓚軍屯所の新たな風物詩と化し、簡雍は多分な同情を寄せられている。


公孫瓚軍将士からの目撃情報を収集しつつ、フラフラとうろついた先には、


「うん?何じゃありゃあ?」

公孫瓚軍の兵士達がちょくちょく出入りしている、一際大きい幕舎が姿を現した。


「は~い、いらっしゃいませ~旦那様~♡」

「どうか楽しんでいってくださいね~♡」

その幕舎の前では、軍施設内にしては似つかわしくない、妙齢の女性達が甘ったるい声で、呼び子の様な事をしていたので有った。


(・・・渡りの女衒(ぜげん)(女性専門の人買い及び、風俗業を生業とする者)でも来てんのか?

つう事は、十中八九此処に居んだろうな~、ウチの大将のこったから・・・ハァ)

目の上に手を当て、溜め息を零す簡雍。


絶対的な確信を持って、「真っ昼間から女の所にしけこむんじゃねーよ()け!」と、呪詛を吐きつつ幕舎に近付く。


「あら旦那様いらっしゃいませ~。

玄徳賭博場にようこそ♪」

「うん?・・・玄徳賭博場?玄徳賭博場だと!?」

遊女風の呼び子の口から紡がれた言葉に、思わずフリーズしてしまう。


「そうですよ~旦那様~。

(カード)双六(すごろく)(ぼん)(賽子(サイコロ)博打)と、色んな博打を楽しめる場所、玄徳賭博場ですよ~♪」

茫然自失とする簡雍に、不思議そうに首を傾げながらも、笑顔で告げる。


「お、お、おい(ねえ)さん?

此処の盆守(ぼんも)り(賭場の開催者や後見人)って、背が高いノッポでやたら耳がデカくて、腑抜けたアホ面な奴じゃねーよな?な!?」

違うと言ってくれ!と縋る様に尋ねる。


「え~と・・・アホ面かどうかは私の口からは言えないけど~。

此処の開帳主(かいちょうぬし)さんは、確かにノッポで耳もデカい、属尽様ですよ~?」

若干困惑気味に眉を八の字にしつつ、愛想良く笑顔で答えた。


「・・・ッの野郎!!」

「あ、旦那様~!?」

猛ダッシュで幕舎に入る簡雍。


そして血走った(まなこ)で幕舎内を素早くサーチ(索敵)し、幕舎の奥で遊女風の女性に酌をされつつ、一枚服を肩に羽織って親分気取りをしている主君(バカ)を発見。


ダダダッッ!!


「ん?お、憲和(けんわ)(簡雍)じゃねーブベェッ!?」

「お前は何をしとんじゃいコラ!?」

怒りのミサイルキックを色々とやっちゃってる、劉備にかますので有った。


~~~只今、99.9%の怒りと欠片程の忠義に依る鉄拳制裁を行っております、大変申し訳ありませんが、暫くお待ちください~~~


「おお~・・・痛つつ。

ナニしやがんだ憲和テメェ!?」

所々顔を腫らした劉備がキレる。


(やかま)しいわボケ!!ソレはコッチの台詞だわい!!

己の胸に手を当ててから、モノを言えや!!」

敢然とキレ返す簡雍。


「テメェこそ仕事ほっぽって、何を遊んでいやがるんだよ!?仕事しろ仕事をよ!

それにこんな所で賭場を開帳してんのを、留守居の関靖(かんせい)さんにバレたら叩き出されんぞ大将!?」

悲鳴じみた声音で怒鳴る。


どうしよう!?と頭を抱えて、融通の利かない堅物で公孫瓚軍のNo.2である、関靖に対する弁解をグルグルと脳内で考えていると、


「コレも歴とした仕事ですぅ。

それに関靖どんには、ちゃんと許可貰ってるつーか、関靖どんの要請でやってんだよ~ん。」

勝ち誇った様な表情で、ベロベロバァーをする、良い歳を扱いた一軍の将。


「嘘付けこの野郎!

あの堅物の関靖さんが、そんな事を認めねーだろうし、そもそも賭場を開帳する発想すら、思い浮かばないだろーが!?」

全く信用しない簡雍。


「嘘じゃねーよ・・・え~とコレ・・・じゃなくてコレ・・・でもねーな・・・あれ?」

乱雑に積まれた竹簡を、ピンチになるとポイポイと不要な道具をポケットから放り出す、某タヌキ型自動人形の如く放り投げ、


「ん~と・・・あ、コレだコレ!ホレよっと。」

1つの竹簡をポイッと簡雍に投げ渡した。


「・・・ウッソ、本当だ・・・信じらんねー。

あの堅物が、こんな賭場開帳を思い付いた上で、軍施設内に設立するなんてよ。」

訝しげな表情で受け取った簡雍は、ザッと竹簡を流し読みし、1番有り得ない組み合わせに驚く。


「まぁ、提言したのはオイラだけどな。」

「ああビックリした!!それなら納得出来るわ!」

劉備が一枚噛んでいた事に、安堵の息を洩らす。


公孫瓚軍No.2である関靖は、自他共に厳格な性格の持ち主で、「酷吏」と軍内では陰口を叩かれるぐらいの人物なので、そんな人物が博打を開帳したと思い込み、「天変地異の前触れか!?」と、真剣に焦った簡雍で有った。


「しかし何で又、そんな話になったんだ?」

「あ~ど~もなぁ、最近軍内部で鬱憤(うっぷん)や不満が、大分溜まってるみたいでよ。

憂さ晴らしに何かねーかって、関靖どんに尋ねられたから、「いっそのこと賭事でもしたら、良いんじゃないか?」ったら、許可が下りたんだわ。」

後ろ手で頭をボリボリと掻きながら、苦笑いして経緯(いきさつ)を説明する。


「鬱憤ねぇ・・・そこはかとなくは感じてはいるけどよ、何かあったんか?」

「アレだよアレ。

劉虞の爺さんの、「異民族宥和政策」の影響が、公孫瓚の兄ぃ達にモロに出ているんだよ。」

「ああ、腐れ儒者(じじい)のアレか。

そりゃ鬱憤や不平不満も溜まるわ。」

嫌悪感丸出しで劉虞を評し、納得する簡雍。


現在の公孫瓚や軍閥は、トップで有る州牧の劉虞が提唱する、異民族(匈奴・烏丸族)に対する宥和政策の煽りを受け、劉虞に因って不当な扱いをされており、軍内部では怨嗟の声に満ち溢れていた。


なにせ何を思ったのか劉虞は、「過度の軍事力を持てば、異民族達が過敏に反応するし、有事の際は州軍が居るのだから問題ないだろう」と言い出し、突如として幽州軍閥の解散を命じたので有った。


当然公孫瓚達軍閥は猛抗議したし、州軍のトップや文官でさえ反対したのだが、結局張純討伐で活躍して世間に名を轟かした、公孫瓚以外の軍閥は解散させられてしまい、そして唯一残った公孫瓚軍も、手勢は1万までと厳しい制限を設けられたのである。


挙げ句の果てに軍事行動まで制限され、侵入して来た異民族達は追い払うのみ、略奪行為等の民衆に被害を及ぼした場合に、漸く攻撃して良しという、被害者や被害出てから対処する、泥縄的な行動をさせられるといった、オマケ付きで有った。


領土侵犯を犯した異民族を撃退出来ず、同郷の人々が被害に遭うか犠牲になるまで、指を咥えて見過ごすという状態で有り、此処まで蔑ろにされて鬱憤が溜まらない筈もなく、劉虞に対して怒り処か、殺意まで湧いている始末だった。


それはさておき、


「ま、そういう事で、ちゃあんと関靖どんから認可受けてっから、安心しろや憲和。」

「どっこも安心出来ねーよボケ!

本来の仕事はどうすんだ仕事は!?」

「え、オメエの部下に任せているけど?」

キョトンとした表情で首を傾げる。


「そのウチの部下が大将から、「押し付けられた」って泣きついて来たから、テメェを捜しにウロウロしたんだがな!?」

認識の違いをキッチリ告げる。


「んなこと言われてもよぉ・・・この仕事は関靖どんから受けてっから、ポイポイ放り投げる訳にゃいかねーだろが?

それこそマズい事になるぞ?」

「・・・うう~ん、それはそうだけどよ。」

一理あると納得してしまう簡雍。


「じゃあ何時までやるんだ?」

「関靖どんが「もういい」と言うまで。」

「オイ、大将?

オメエ遊びの延長上でやってんだろコラ?

もう一回逝っとくかテメェ?」

ボキボキと世紀末的救世主の如く、指を鳴らす。


「バカ、ちげーよ!」

そう言って簡雍の首に手を回し、


(この賭場の()がり(利益)を、ウチの軍資金に充てるんだよ憲和。

それに関靖どんに、賭場開帳資金を借りてるから、返さねーといけねーしな)

コソコソと耳打ちする。


(おまっ!?皮算用かよ!?

上がりって大将、まさか賭け金を青天井(無制限)にしてんじゃねーだろうな?オイ?)

怒りつつ耳打ちする簡雍。


(するわけねーだろ、そんなヤバい事。

確かに青天井にすれば、勝てば実入りは太いけど、その反面負けりゃとんでもない支払いに、なりかねねーモンだぜ?

客層的に飛ぶ(逃げる)事が出来ねーのに、そんな危ない橋なんざ渡れるかい)

コソコソと言い切る。


「逆に掛け金を低く設定しても、客が多いから塵も積もればってヤツでよ。

上がりもわりかし良いし酒場も併設してっから、バンバン銭を落としてくれるしよ。

結構デカいシノギ(商売)になるぜこりゃあ。」

賭場から少し離れた場所にある、簡素なテーブルと椅子が有る所を指差し、


「ついでにショバ(場所)代やカスリ(上納金)もねーから、開帳資金さえ返済しちまえば、後は続ければ続ける程、ガッポガッポ懐に入って、丸儲けってヤツだぜ?」

美味しくてたまんねぇわと、にやつく劉備。


「いや待て大将、シノギにすんだったら地元(ところ)の親分が黙っちゃいねーだろ?

大丈夫なんかその辺はよ?」

後々のトラブルを危惧する。


「大丈夫、大丈夫。

その辺の事も、遊廓に姉ちゃん達を借りに行った際に、遊廓の楼主(ろうしゅ)(オーナー)を通じて、ちゃーんとナシを入れってからよ。」

ポンと自信あり気に胸を叩く。


「あのよぅ大将・・・俺さぁ、がきんちょの頃から思ってんだがよ。

そういうやる気や情熱を、欠片でも普段から発揮してくんねーか?マジで・・・。」

げんなりと呟く、苦労人気質の簡雍。


「うるせえよ!ほっとけや!?」

ぷいとそっぽを向く。


劉備自身は決して頭が悪い訳でも無く、運動神経も良い方で、わりかしトータルバランスに優れた人物である。


そして興味関心が有る事柄に関しては、寝食を忘れて精力的に活動するのに、反面無い事柄に関しては、鼻をホジって寝っ転がりつつ尻を掻くぐらいに、全くやる気がゼロであり、他人任せにして逃げるタイプで有った。


分かり易い例で云えば、結構不義理をしているのに不思議と怨みを買わず、ダーティーな所も有るが男気も混在し、能力の高さと人間性の不一致で失敗を繰り返す、何処ぞの一本眉の某ポリスメンに、非常に近いタイプである。


「う~ん、軍資金調達かぁ・・・それを言われると否とは言えねーなぁ。

しゃーない、押し付けられたアイツにゃあ悪いが、泣いて貰うか・・・。」

劉備軍の軍政担当であり、金庫番でもある簡雍は、自軍の台所事情と部下の哀願を天秤に掛け、劉備軍の利益を取るのだった。


現状の劉備軍は居候状態であり、食い扶持こそ困ってはいないがその分、武具・兵糧の備蓄や軍資金調達がままならかった。


その為賊討伐で支給された武具は、コッソリちょろまかして残したり、貰った食糧は出来るだけ残し、野山の動物を討伐ついでに狩って賄ったり、張飛が生家(肉屋)のスキルで干し肉を作り、市場で売り捌いてコツコツ資金調達をしたりと、中々に苦労をしていたのである。


(そんな中で降って湧いた様な好機、か。

旗揚げ当初からそうだが、いざ窮地や困り事が発生すると、不思議と天佑みたいなモンに、助けられやがるんだよな。

持ってるモンを持ってるってこったかねぇ?)

「ほんじゃま、後は宜しく~」と能天気に酒を飲む、幼馴染み兼主君を観る。


「へ~へ~・・・殿の仰せのままに。」

形ばかりの拱手をした後、


「あ、おい、それオイラの酒・・・。」

「こちとら大将をウロウロ捜したせいで、カラッカラに喉が渇いていんだよ。

自分だけ飲んでねーで、俺にも飲ませろや。」

ドカッとテーブルを挟んだ、劉備の向かいの椅子に座り、横から酒をかっさらう。


そうして代わる代わる酒を飲み、お互いに無言で賭場の様子を眺めていると、


「ああ、そうだ憲和。

あっ、姉ちゃんは大分忙しそうな、酒場の手伝いをしてやってくんな。」

さり気なく酌女をしていた遊女を場から外し、簡雍に声を掛けた。


「・・・何だよ大将?」

「まぁ、今日明日の話しじゃね一とは思うが、何時でも幽州から離れる心構えでいてくれや。」

さらっと公孫瓚の下を離れる宣言をする。


「は?どういうこった大将?

まさかオメエ、隠れて何かやらかしたんか!?」

「オイラじゃねーよ!オイラじゃな。」

「じゃあ何なんだよ一体?」

理由が思い浮かばず、首を傾げる。


周囲をキョロキョロと見回した後、


「・・・実はよ、ど~も公孫瓚の兄ぃ達と劉虞の爺さんの間で、本格的な抗争(ドンパチ)が起こりそうな雰囲気なんだわコレが。」

「はぁ!?マジかそれ!?」

続く爆弾発言に素っ頓狂な声を上げ、立ち上がって劉備に詰め寄る簡雍。


「声がデケェよ憲和!!」

「・・・すまねー大将、本当かよそれ?

遂に堪忍袋の緒が切れた公孫瓚の兄さんや、解散させられて怨み骨髄の元軍閥連中が、とうとう爺を殺る為に蜂起するってか!?」

興奮状態になり、尻上がりに語気が強くなる。


「だからデケェって憲和!

・・・それがよ、逆なんだわ逆。

堪忍袋の緒が切れてんのは、爺さんの方。

寧ろ兄ぃ達の方が穏健なんだよコレが。」

肩を竦めて簡雍の予測を否定する。


「はい?何で爺の方がキレんだよ?」

「爺さんの言い分だと、「再三再四に渡って自分の政策の要である、異民族達の援助を妨害し、話し合いにも応じずに勝手ばかりしているから、反逆者として討伐する」らしいぞ?」

馬鹿馬鹿しいと呆れ顔の劉備。


「・・・それってナンも実状を知らねー連中から観れば、爺の方に大義が有って、兄さん達が一方的に悪く聞こえっけどよ・・・?」

信じられねーといった表情の簡雍。


「ああ、オイラ達幽州民からすりゃあ、再三再四に渡って()()()()()異民族達に、援助しようとする爺の()()()()を掣肘して兄ぃは、本来渡るべき民衆に分配しているだけにしか見えねー話だ。」

「そりゃそうだ。

幽州人から観たらそうだわな。」

コクリと頷く。


「それに話し合いに兄ぃが応じねーのも、爺が会談に託けて、兄ぃを暗殺するつもりなのが判ってるからだしな。」

「本当かよそれ!?・・・ゲス野郎が。

それが「有徳」の有る奴がする事かよ!」

胸糞悪いとばかりに吐き捨てる。


「本当に碌でもね一爺だわな。

兄ぃが幽州民の不平不満を代弁しているから、兄ぃだけに集約してんのに、そんな兄ぃを暗殺しちまったら、解散させられた軍閥を始め、幽州全土に反乱が広まるつーのを、全く理解してねーんだからよ。」

バカとしか言えねーと愚痴る劉備。


「しかし、良く暗殺される事を察知したな、公孫瓚の兄さんも。」

「どうやら爺に近い文官からの、機密漏洩(タレコミ)が有ったらしいぜ?」

「オイオイ・・・ゲス爺は自分に近い高官にも人望がねーのかよ?」

呆れ半分侮蔑半分の簡雍。


「有る訳ねーだろ、んなもんはよ。

高官つっても幽州人には違いはねーんだから、表面上従っているだけだろうよ。

爺が居なくなっても困る、幽州の高官連中は居ない処か万歳三唱だろうが、兄ぃ達が居なくなりゃあ1番困るのは、間違いナシに高官連中なんだからよ。」

「まぁな、兄さん達が居なくなれば、「(くちびる)滅びて歯寒し」になって幽州全体が、異民族達に蹂躙されるのがオチだろうからな。」

そりゃ密告もするわと納得する。


「そう言うこった。

兄ぃが居なくなりゃあ、異民族達の襲撃に因って、明日は我が身だからな高官連中も。

大概の高官連中は、地元の名士だから家土地を持ってる訳だし、まさか蝸牛(かたつむり)の如く、家を担いで逃げる事は出来ねーしよ。

・・・余所モンの劉虞の爺と違って。」

ハァと嘆息する。


「・・・碌でもねー事をやりたい放題しといて、当の本人だけはケツ捲って逃げれるって、納得いかねーわマジでや。」

簡雍は憤慨してボヤき、


「領民が異民族達に、タタキ(強盗)や殺害されても平然と赦す癖に、自分のやっている愚行を掣肘されるのは、我慢がならねえってか?

何処が「仁徳の人」なんだよ、劉虞の何処が?

只の自己中で我が(まま)な老害爺じゃねーかよ。」

ケッと唾を吐く。


幾ら地元の徐州や周辺で「有徳の仁」と敬われようと、幽州人から観れば何処までも、「自分達から徴収した税を、父祖代々の仇敵である異民族達に貢ぎ、国境守護の要で有る軍閥を解体し、侵略や略奪を誘発している、最低の売国奴爺」で有り、幽州人の劉虞に対する感情は、最早嫌悪を越えて憎悪になっていた。


「ホントになぁ・・・。」

「んで大将?そんなクソったれ爺と兄さんが、抗争になる前にガラを躱す(避ける)つーのは、一体どういう了見なんだよ?

まさかと思うが、兄さんに勝ち目が薄いってんで、尻を捲る算段じゃねーだろな?

流石にそれは、曲がりなりにも俺も幽州人の端くれとして、承服しかねるぜ?」

据わった目で睨み付ける。


「あのなぁ憲和、オメエはアホか?

どう転んだら爺に、()()()()()()()()()んだよ。

例え目を瞑ってても、兄ぃの勝ちは揺るがねーよ。」

ハッキリと言い切る。


「へ?え?そうなんか?

兄さんの軍勢は約1万居るけど、大半は各地域の守備に派遣されていて、手許の直卒は2千騎ぐらいなのに対し、爺の立場だったら簡単に州軍を2~3万は集めれんだろ?

張純の雑魚軍団と違って、結構な練度を持ってる奴らだから、流石にキツくね一か大将?」

目を点にして聞き返す。


「まぁ、数だけ観ればそうだけどよ。

州軍の奴らだって幽州民だぜ?同じ幽州民のオイラやオメエが、爺をクソミソに言っている様に、州軍連中も気持ちは一緒だろうよ。

そんなクソ爺の為に、命懸けで戦うアホなんぞいやしねーベ?」

苦笑混じりに感情論を述べ、


「ましてや相手は代々幽州民を、異民族達から守り続けてくれてる兄ぃ達軍閥ときた。

そんな恩も義理も有る同郷人達に、刃を向ける奴なんざぁ幽州民じゃねーよ。」

同郷人の仁義=同郷心を語る。


「なる程ねー・・・確かにそうだな。

張純の野郎は、手前勝手な理由で反乱を起こした挙げ句に、敵の烏丸と手ぇ組んだから、同郷からも愛想尽かされたが、兄さん達は幽州や幽州人の為に動いてる。

そんな人達相手に、刃は向けれねーわな。」

コクコクと頷く。


「そう言うこったな。

例え本格的に抗争になっても州軍連中は、良くて戦う振りして傍観、兄ぃ達を爺の許まで素通りさせるか、悪けりゃ爺の寝首をコッソリと掻いて、チョンパした首を兄ぃ達に渡すのがオチだろうよ。」

劉虞の末路を予測する。


「まぁ、売国奴に相応しい最期だな。

けどよぉ大将、其処まで結末を読んでんだったら、フツーに兄さんに組みすりゃいいじゃねーか。

ガラ躱す必要性がねーだろうが?」

「ソレが出来ねーから躱すんだよボケ!」

「?何でだよ?」

劉備の罵声をスルーして、首を傾げて尋ねる。


「オイラの出自が災いして、どっちに組してもえらい事になるんだっつーの!!」

「出自って・・・属尽だとマズいんか?」

ますます首を傾げる簡雍。


「あのなぁ・・・憲和はピンと来ねーかも知んねーけどよ、不本意ながらオイラも劉虞のクソ爺も、大きく一括りすりゃあ一門になる訳よ。」

「まぁそうだな。」

「んでだ、クソ爺は都に居わす主上の直系や近親者に次ぐピンの皇族で、オイラは末の末であるキリの属尽なんだわ。」

此処までは解るか?と、目線で問い掛ける。


「まぁそれぐらいは流石に・・・。」

「そんでな、年功序列の理屈で言やあよ、クソ爺は本家筋でオイラは分家筋になる。

つまり本来は本家筋の劉虞に、筋的には組みしなきゃいけねー立場の、分家のオイラが兄ぃに組したら、一門の上位者に反目(敵対)したと見なされる訳だ。

そう観られると、オイラはどうなると思う?」

再度簡雍に問い掛ける。


「え~と・・・あ、劉一門から総スカンを喰うか、裏切り者扱いになる・・・?」

なんとなく察した簡雍。


「その通りだよコンチクショウ!!

地元の伯父貴や幽州の属尽連中は、クソ爺が最低の売国奴だと理解してっから、何も文句言わねーだろうが、余所の皇族・王族・属尽連中は、クソ爺を「有徳の仁」と認識してっから、尚の事反目したオイラを敵視するようになるんだよ!

つまりは大概の州に居て、わりと影響力を持ってる一門を、自動的に敵に回す事になるってこった!」

ダンッ!と卓を叩いて憤る。


「ヤバいなソレ・・・。」

深刻な悪影響を聞いて、冷や汗を流す。


「ヤバい処か、文字通り死活問題だよ!

かと言ってクソ爺に組してみろ。

今度はオイラは幽州人から、裏切り者扱いされて居場所を失うわ、伯父貴や他の属尽連中も同類と見なされて、石を持って逐われる羽目に成っちまう。

そうなったら、間違いなく伯父貴達が怒り狂って、オイラの(タマ)()りに来るんだぞ!?」

悲鳴じみた声を上げる。


「ま、マジでシャレになんねー・・・。」

「ホントにシャレじゃ済まねーんだよボケ!

ガラを躱す理由が判ったかよこの野郎!?」

血走った目で、襲って来る伯父を想像したのか、若干涙目で怒鳴る劉備。


「判った、判ったから、そう興奮すんな大将。

何時でもガラ躱せる様に、段取りしとくから。

因みにどれくらい猶予が有んだ?」

宥めつつ、準備期間を確認する。


「う~ん・・・結構流動的なんだけどよ。

早くて兄ぃがど、銅鐸(どうたく)?だっけか?を、討伐する集まりから帰って来てすぐか?」

「董卓な董卓、銅鐸討伐してどうすんだオメエ。」

「うっせぇ、茶化すなや憲和。

ほんで遅くても、魏攸(ぎゆう)の爺さんの天寿までって感じだな。」

言い間違いを指摘されて、機嫌を損ねつつ憮然とした表情で、大凡の期限を述べた。


「魏攸?・・・州の最長老文官だっけか?」

「そうそう幽州の筆頭文官で、クソ爺から別駕従事に任命されてる(おう)だよ。」

「何で魏攸の爺さんの、寿命が関係あんだ?」

意味が解らず首を傾げる簡雍。


「魏攸翁はクソ爺の補佐役として、爺の掲げる宥和政策に賛同して、協力している人物でな。」

「裏切り者の筆頭格じゃねーか!?」

「まぁ、表向きは、な。」

肩を竦めつつ、


「実態は裏で兄ぃ達に、異民族に贈る援助物資の日程や、道程を密告(チンコロ)して奪わせたり、解散させられた元軍閥連中を陰から援助して、何時でも復活出来る様に、州の予算を遣り繰りしてコッソリ捻出したりと、幽州の為に奔走している爺さんだけどな。」

魏攸の実情を告げる。


「う~ん・・・幽州の為につうのは立派ちゃあ立派だけども、やっている事は面従腹背つーか、二股膏薬(ふたまたこうやく)つーべきモンじゃねーか?」

渋面で魏攸を評する。


「バカ、翁のは老獪つーモンだよ憲和。

クソ爺に賛同した振りして懐に飛び込んだからこそ、クソ爺は翁を深く信頼して助言に耳を傾けるし、翁が反対する事は無下に出来ねえって、状況を作ってんだろうが。」

したり顔で魏攸を褒める。


「実際の話、1番兄ぃ達を擁護してんのは他ならぬ翁だし、翁が反対して抑えているからこそ、クソ爺は兄ぃ討伐に踏み切れずに留まっているからな。

云わば翁は、クソ爺暴走の歯止め石の役割を果たしている訳だ。」

「ふ~む、それぞれ立場が違えば、やり方も変わるってこったかね?」

劉備の話しを聞いて、なんとなしに理解を示す。


「そんなモンだろ。

兄ぃが剛なら翁は柔の対応で、それぞれ幽州民の為に動いてる感じだな。」

コクリと頷く。


「だから兄ぃも翁の助言に従って、董卓討伐軍に参加する事で幽州を離れ、カッカと血が上って討伐を叫んでいる、クソ爺との距離を置いて、ほとぼりを冷ましている訳だ。

不本意な抗争はクソ爺以外、兄ぃも翁も誰も望んじゃいねーからな。」

溜め息を吐く。


「じゃあ異民族の援助物資を強奪すんのは、有る意味悪手じゃねーのか?」

「あのなぁ憲和、そのまま放っとけば、クソ爺の利敵行為に怒り心頭の幽州民が、暴動を起こしかねねーから、兄ぃ達がわざと強奪する事で、幽州民の溜飲を下げてんだよ。」

「あ、なる程。強奪する方がマシって訳か。」

ポンと手を打って納得する。


「そう言う事。

ついでに討伐に自軍を引き連れずに、元軍閥連中でも特に血の気が多い奴らを、率先して引き連れてんのは、幽州から引き離す事で、元軍閥連中の暴発も抑える目論見らしいし。

その見返りに兄ぃ達の物資補給は、翁が劉虞を上手く言いくるめて、州から出てるしな。」

「はーん・・・色々と面倒くさいな。」

呆れ口調で感想を述べる。


「ああ、そんな気骨の折れる事を、翁は東奔西走してやっている訳だ。

歳も歳の上、心労の絶えねー事をやってるから、此処最近は病がちらしい。」

「マジか・・・じゃあ翁がぽっくり逝ったら?」

「もうクソ爺を止めれる奴が、居なくなる訳だ。

行くとこまで行っちまうだろうな。」

天を仰いで呟く。


「・・・あんまり時間がねーのは解った。

急ぎとなると先立つモンが不可欠だ。

つー事で大将、シノギをしっかりと頼むぜ?

オレも全面的に協力すっからよ。」

「おう、任せとけや!

ちゃーんと銭を稼いでみせるからよ!」

ドンと胸を叩いて、自信を覗かせる劉備。


そして暫くの後、


「ありゃ・・・もう夜か。」

話を終えて幕舎から出て初めて、とっくに日が落ちているのに気付いた簡雍。


色々と劉備と話している内に、時間を忘れていたのだった。


「はぁ~あ・・・「禍福は(あざな)える縄の如し」つうけどよ、何もわざわざ一挙に来る事はねーだろうが、ホントによぉ・・・。」

満天の星空に向かってボヤく。


何せ思わぬ資金調達の目途が立った!と思った瞬間、ソレを全てペイにしかねない厄介事が湧いて出たのである。


簡雍が嘆きたくなるのも至極当然であった。


「あ~あ、さらば束の間の安息の日々、今日(こんにち)はクソったれの不測の日々ってか。」

深く深~く溜め息を零す。


「何時になったら根拠地を得て、腰を落ち着かせられるのやら・・・ハァ。」

再び溜め息を零す苦労人。


(嘆いても始まらねー、か。

やる事・やれる事を精一杯やって、天命を待つのみってヤツか・・・)

気を取り直して歩き出す。


「うん?アレ?銭箱はどこ?オイラの銭っ子は何処!?オイラの銭~!?」と騒ぐ、主君の悲痛な叫び声を背に、どっこいしょと銭箱を肩に担いで、劉備軍の()()()の職務を全うする簡雍は、「ピッタリと大将に張り付いて、しっかりと締めねーとなぁ」と思いつつ、()()()()()()を惜しまない決意をするのであった。


                  終


とりあえず、作中の劉備の現状を書き終えたので、再び本編に戻ります。


年度末に差し掛かり始め、私と同じく多忙になられている方も居られるでしょうが、どうかお身体を大事に為さってくださいませ。


楽しんで読んで頂けたら嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
なんぞ何処かで聞いたような世迷い言を抜かしてますな~ 現実でも北海道で都会からきた阿呆が害獣対策の仕組みをぶち壊して大騒動のようです 現実見えない奴を中央で使えないからって地方に押しつけないでほしいも…
劉備を出さなきゃ面白いんだけどなー
周りの人物話ばかりで、つまらない。主人公の活躍がみたいです
2024/11/15 23:44 主人公の話がないよー
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