ギルドマスターの娘リーラ
「お待たせ。」
昨日と同じように魔道具を見ていた奥さんと娘に声をかける。
「待ってないよー。」
「大丈夫だった?顔に悩んでますって出てるし、取り敢えず、お昼食べに行きましょ。」
マリスには隠し事は出来ないようだ。
ポーション瓶を10本ほど買うと、信用が出来て、個室がある飲食店を教えてもらった。
ノックをされ、ご飯が個室に一気に運ばれてくると
「終わりましたらお呼び下さい。」
と声をかけられた。
ご飯もある程度食べ終わると、先ほど見聞きしたポーションの価値や、ギルドマスターの娘の話などを、2人に話した。
「それで俺は、もしリリスやマリスが同じ目にあっていたら、何を擲ってでも、助ける方法を考える。」
「私もそう思うわ。リョータはフルポーションを出そうか、悩んでるんでしょ。
ここで出さなきゃ、私の知ってる旦那様じゃないわ。」
「だけどね。フルポーションが切っ掛けで、2人の身が危なくなるなら、俺は救えない。
だから悩んでるんだ。」
「わかったわ。私とリリスも、会わせて貰いましょう。
それで2人とも、助けたいと思ったら出す。それなら後悔もないわ。」
うんうんとリリスも頷く。
俺のイメージの9歳児とは違うのだろう。リリスはとても大人のようだ。
こんな事を話せば、優しい2人はそういうと思っていた。
それでも相談をして、話を聞いて欲しかった。
緑色と黄色の薬草を握り、フルポーションを2つ作って、マリスとリリスに持たせる。
念のため、残り8本をハイポーションで埋めると、店を出て商業ギルドに戻った。
カウンターにギルドマスターは居ないので、受付に声をかけると、暫くして部屋に案内された。
「リョータ。断りに来たとしても、恨みはしないぞ。少しでも、娘の声が聞けたのだからな。」
俺が家族連れできたのを見て、反対されたと思ったのだろう。
「いえ、リーラさんを、私の家族と合わせて欲しいんです。」
「そうか・・・。それならこれを聞いても、会う気があるなら。
これは極秘な事だが、娘はお化けサボテンに刺されてしまったんだ。
お化けサボテンは、人を刺すと腐って死ぬ。そして刺した人間を徐々に、腐らせていく。
サボテンが腐りきる前に殺さないと、治らない死病なんだ。俺がその時、近くに居れば・・・」
フルポーションでも、治らないかもしれない病気だったら、と家族を見るとなるほど、決意がないのは俺のほうだった。
部屋の前に着くとギルドマスターが
「俺だ入るぞ。」
一緒に部屋に入ると、ぬいぐるみや、お花など女の子らしい部屋だった。
マリスは、ギルドマスターがリーラを愛している事を、部屋の様子を見て確信したようだ。
「包帯のおねーちゃん辛そうだね。私、助けれるなら助けたい。」
包帯に巻かれ、つらそうな顔など見えない筈なのに、リリスはテクテクと、リーラに近づきポーションを渡そうとした。
「な・・・なんだそれは。」
黄緑色をしたそれは、ギルドマスターの目には、明らかに異質だった。
鑑定眼を急いで部屋から持ってきた、ギルドマスターをリョータは止めた。
「鑑定する前に約束してください。この秘密は誰にも洩らさないと。」
「モノによるだろう。
だが悪いものでなければ、口外はしないくらいの、了見は持っているつもりだ。」
リョータはギルドマスターのまっすぐな目を見て通した。
どこまでも俺は自分本位だな・・・。
ギルドマスターは目を疑っていた。
鑑定眼で、リョータが連れてきた娘の持っているものを、受け取って見ると
フルポーション
と出ているのだ。
存在するのなら、なんとしてでも、たとえ王族相手でも、どこでも手に入れてやると、躍起になって探した伝説のフルポーションを、小さな女の子が、リーラに差し出していたのだ。
夢かと頬っぺたをつねっても痛いのかどうかわからない。これは夢なのだろう。
それでもリーラに飲ませれるのならば・・・。
「おじさん早くー。」
ギルドマスターはリリスの急かす声に、ハッとしたのか我に返り、ゆっくりとリーラにフルポーションを、飲ませていった。
「とっても甘い。」
リーラが声を出すのと同時だろう。彼女はまばゆい光に包まれた。
しばらくすると今まで動いていなかった、包帯にくるまれた手を動かし、包帯を解いていった。
頭からしゅるしゅると。
ギルドマスターには似ても似つかない、17、8くらいの黒髪の大和撫子がそこに居た。
その彼女が胴から足まで外し終え、自分の体を確認すると、すっぽんぽんで喜んでいるのだ。
当事者は仕方ないとして、マリスとリリスまで、裸のリーラを見て喜びの声をあげている。
「ねぇねぇマリス。服着させたほうがいいんじゃないの。」
小さな声で伝えると、ハッとなったマリスに、俺とギルドマスターは追い出されたのであった。




